京都での出来事②
朝起きた時、誰1人、異臭を放つ巨大な花瓶に視線をむける事はなく、静かに荷物をまとめていた。
昨日の出来事は、何も見てなかったかのように、無言で帰る支度をする皆。
おはようの挨拶以外、初めて口を開いたのは旅館の食堂で朝食の時、出張メンバーの班長だった。
班長はT先輩に
班長「ちゃんと旅館の人に謝っとけよ?」
と、話をしていた。
T先輩「おう、言っとくわ。」
との言葉を最後に、朝食を終えた後はすぐ旅館を出発した。
その後、現場で午前中の仕事を終え、昼休みの時間に。
皆で昼飯の弁当を食べていたら、班長の元に会社から電話が鳴った。
班長「ええっ!
マジですか!?
ああ、それはですね…
はい…
わ、わかりました…」
休憩室に響く、班長の声。
電話を終え、深いため息をする班長に、皆がどしたんですか?
と、聞くと…
内容は旅館から物凄い鬼クレームが入ったらしく、社長と専務が今、こちらに向かって来ているとの事。
青ざめた顔で班長がT先輩に
班長「お前…
まさか、旅館に何も言ってなかったんか?」
と聞くと
T先輩「あ、やべ…
忘へとった。」
との事。
17時…
1日の仕事が終わり、現場の片付けをしていた時、砂煙を上げながら、物凄いスピードで社長の車が駐車場に入って来た。
砂煙の中、車から社長と専務が鬼の形相で車から飛び出す。
その景色は、まさに前門の虎、後門の狼である。
社長「オラァッ!
班長、T先輩、出てこいや~っ!!」
髙田延彦バリの叫びが、現場内にこだまする!
社長に呼び出された班長とT先輩は、状況の説明に事務所に向かった。
その後、事務所内から、社長と専務の怒号が漏れてくる。
しばらくして…
事務所から出てきた班長が、我々の所にやって来た。
どうやら今から社長、専務、班長、T先輩の4人が旅館に謝りに行くらしい。
我々3人は荷物を持って、先にビジネスホテルに向かう事となった。
その後、ビジネスホテルでくつろいでいると、22時に班長とT先輩がやつれた姿で帰って来た。
えらい遅い時間までかかったなと思い、話を聞くと、実はメチャクチャな修羅場になっていた事が判明。
旅館に謝りに行った時、旅館の女将さんからの説明はこうだった…
部屋の掃除に入った従業員が、驚いた様子で女将さんに
従業員「大変、女将さん!
花瓶の花一面に、実がなってはるわ!」
と言ってきたので…
女将「なにを朝から、寝ぼけてますのや?」
と、確認しに部屋に入り、花瓶の花を見ると、確かに花一面に白い実がなっていた。
女将「何ですのこれ?」
女将がその実を取ると、ヌメヌメしていたので、匂いを嗅ぐと…
女将「臭ッ!
この酸っぱい匂いは…」
花瓶を見ると、花の周りに大量に異物が浮き上がっているのに気づく。
花をのけて花瓶の中を見ると…
女将「魔界や…
魔界の入り口が広がってはる…」
従業員が見ると
従業員「女将さん、これ…
下呂やおまへんか?」
この花瓶、明治時代から代々受け継がれた旅館の家宝であり、それを聞いた旅館の女将は気を失いかけたらしい。
女将はT先輩に
女将「家宝の歴史に傷がついたわ!」
と言ったら、全く悪びれた様子もなく、笑いながら
T先輩「傷やなくて、下呂やけどな。」
と言った時、女将はキレて、T先輩に向かって大量の塩をまく。
社長「すいません、女将さん!
どうか落ち着いて下さい!」
T先輩「うわっ!
ぺっ、ぺっ!
砂かけババアやんっ!」
その言葉に完全にぶちギレた女将は、全員に向かって塩をまき
女将「皆出ていきぃ!
二度とこの敷地をまたぐなっ!」
社長と専務の顔一面に、大量の塩が降り注ぐ!
社長「ど、どうもすいません!
失礼しましたぁ!」
社長ともども塩をかけられながら、全員旅館から塩まみれになって追い出された…
社長、専務「T~…
T、T~…
T、T、T、Tィィィィ~~~ッッッ!!!!」
その後、阿修羅と化した社長と専務から、どのような目に合ったのかは想像に難しくない。
だからこんなに遅くなったのかと納得。
正直、よく生きて帰ってこれたと思った。
その後、何年かは旅館に泊まらせてもらえなくなった…
終わり…




