高知市での出来事②
息を整え、私は何事もないように冷静を装う。
とりあえず、目的地の“はりまや橋”を見に行く。
はりまや橋の第一印象は
私『何これ、メッチャ小さい橋やん!』
でした。
酔いも覚め始めた頃、アーケード街を1人ブラブラと探索する事に。
時間も早いからか、周りを見れば人通りは結構多い。
その中には楽しそうに歩くカップルの姿も多く、彼女が何年もいない私にとって、そこはまさにダメージゾーン。
腕組みをしているカップルと遭遇するたび、少しずつ心にダメージが蓄積されていく。
観光に来ているのに、全く楽しくない。
私はここに、一体何をしに来たんだろう?
屋台を荒らし、道路に下呂を撒き散らし、私は1人、ここで何をしてるんだ?
そう思いながらアーケード街を歩いて行くと、ゲームセンターを発見した。
そのきらびやかな店内の光が、今の私にはまるで都会のオアシス、削られた心を回復する回復ゾーンに見えた。
助かった…
体力も心のライフ量も残りわずか、まさにレッドゾーン状態の私。
回復を求めて、早速ゲームセンターに入った。
店内を探索すると、予想通り彼女のいない野郎達の巣窟だ。
私と同類がウジャウジャいやがる。
なんて心地よいのだろう…
私はここで高知の猛者どもと勝負し、たまった憂さを晴らしてやろうと思った。
私の世代は対戦ゲーム全盛期。
ストリートファイターやバーチャファイター、鉄拳など、群雄割拠、並みいる猛者どもの戦国時代。
私はゲームセンターで腕を上げた経験があり、対戦ゲームには少々腕に自信があるのだ。
だが、色々とゲーム機を見て回るも…
そんな対戦ゲームは一台もなかった。
私の知らない間に戦国時代は終わり、時代は変わっていたのだ。
しかし、このままでは終われない。
なんとしてでも、高知の猛者と勝負したい。
そう思いながら対戦相手を探していると、赤い上下のジャージ姿の若い男がふと目に入った。
年齢は20代前半ぐらい。
その男はUFOキャッチーの前に張り付き、景品の位置を確認していた。
私は少し離れた場所から、彼を仮想の敵としてロックオンする。
赤いジャージの男が景品を取れば彼の勝ち。
景品を取れなければ私の勝ち。
そう自分ルールを設定した時、赤いジャージの男は投入口にお金を入れた。
それは対戦の合図。
私と赤いジャージの男との、戦いの始まりである。
最初の1回目。
アームが景品をつかみ、上まで持ち上げるも、その瞬間に景品は下に落ちた。
UFOキャッチーのあるあるだが、赤いジャージの男はすかさず次のお金を投入口に入れる。
しかし2回目、3回目とも同じ落ち方で失敗していた。
それでも闘志は衰えてない様子で、投入口にお金を入れる赤いジャージの男。
しかし、それでこそ我がライバル。
対戦相手だ。
相手にとって不足なしである。
一体、どんな景品を必死に狙っているのかと思い、近づいて確認してみる。
どうやら“赤い制服姿の女の人形”を狙っているようだった。
私『こいつ…
私と同じ、オタク?
しかも、服装も狙う景品も全てが赤い…
シャアか!!?』
そう思った時、赤いジャージの男と目が合う。
その瞬間、私は赤いジャージの男とアイコンタクトで会話した。
私『お前、ただ者ではないな?』
赤いジャージの男『ほう、貴様もな!』
………
なるほど…
この勝負、徳島のオタクVS高知のオタクなわけだ…
これは絶対に負けるわけにはいかなくなった!
そう思いながら、少し後ろで観戦する事に。
赤いジャージの男は4回目、5回目とチャレンジするも、やはり失敗する。
顔はうつむき、悔しがる姿に…
貴様はその程度か?
高知のオタク代表として、もっと頑張れっ!
そう…
知らない間に、私は赤いジャージの男を心の中で応援していた。
6回目、7回目とチャレンジする赤いジャージの男。
私『そこっ!
もっと景品を出口に近づけろ!
諦めるなっ!!』
そう思った時…
8回目のプレイを失敗した瞬間、赤いジャージの男は天を見つめ、深いため息をついた。
………
終わったか…
しかし…
貴様は高知のオタク代表として、よく頑張った!
恥じるな、胸を張れ!
私は心の中で、彼に盛大なスタンディングオベーションを送っていた。
実に熱い戦いだった…
私はこの勝負を永遠に忘れない…
そう感動していると…
UFOキャッチーの後ろに設置されているスロットをしていた、赤い上下のジャージ姿の
“若くて可愛い女”
が、こちらに近づいて来た。
その可愛い女は、赤いジャージの男に腕組みし…
女「勝男君、行こ♪」
と言って、店内出口に向かった。
………
私は状況が読み取れず、目が点になり、呆然と立ち尽くしていた。
勝男は振り向き様に私を見る。
勝男はアイコンタクトで私に語りかけてきた。
勝男『そう…
貴様は詰んでいたのだ…
最初からな…』
………
まさかの会心の一撃!
私の心のライフは0になり、無惨に地面に崩れ去っていた…
完全敗北…
………
いや、違う!
勝男は景品を取れなかった。
つまり私の完全勝利なのだ!
私『貴様が勝ったのは、その女の性能の差だけだという事を忘れるな!』
私はそう心で吐き捨て、泣きながらホテルに帰った…
終わり…




