第四十八話 さらなる高みへ
「来たか」
「お待たせしました」
『大将なんか2モゴモゴ』
「全然待ってないよ」
「?」
慌ててブックの口をふさぐ。朝起きてから少し気持ちが高揚していて、二時間くらい早く着いてしまった。カレンに「誰かとデート?」と聞かれてそれはないと冷静に答えた。
「早速始めますか」
ハリルが徐々に魔力を開放。狩猟祭の頃とは比べ物にならないほど、魔力の総量が増えている。
更に多種の属性の発色・発光。色が複雑に絡み合い幻想的な魔力を放っている。
『おっほ、すげえな』
「ほぉ、それが6属性同時開放か」
「はい」
今までの顔の両眼、両手の眼に加えて額に二つ眼が追加。合計6個の眼がそれぞれ6色の色を発光、色は属性を現しているのだろう。
「今、精霊達はハリルの魔力に溶け込んでいる状態か?」
「その通りです。もちろん精霊を出すことも可能です」
ハリルの魔力から精霊たちが形成される。
「現在は魔力化されていますから厳密には精霊ではないんですがね」
精霊達を元に戻し、ハリルは戦闘の姿勢を取る。
「さあ、始めますか」
「待った」
心苦しいが一旦戦闘を止め、俺が思いついたことを提案する。
「7属性同時発動は可能か?」
「……一応可能ですがそもそも無属性の精霊がなかなか」
ちらっとブックの方を見るハリル。やはり気づいていたか。
「契約した精霊ってのはその後もとに戻ることは可能か?」
「可能です。契約を破棄するだけです」
「と言う訳で、どうだブック?」
『おれー!?』
観戦モードだったブックが驚きながら立ち上がった。
「出会った頃は炎のタテガミを見て火属性の精霊だと思っていたが、鱗や尻尾等、ブックの体から他5属性を確認できた。多分ブックは無属性だな」
頷くハリル。
「全属性持ちは無属性、いつ聞いてもややこしい話ですよね」
「確かに」
『そうだな、面白そうだ。乗ったぜ、その話!』
「では早速」
ハリルと契約を交わすブック。契約が終わると、ブックの体は徐々に透明化しハリルの魔力と混ざっていった。
彼の体に変化が起きる。額にもう一つ眼が追加された。
「こ、これは。今までよりも魔力増幅量が多いようです。基本は精霊の力をある程度借りられるだけなんですが、今回はこの精霊の力全てを扱えるようです」
「よーし、俺も準備するか」
じっくりと第五圏まで開放。
(この力ならもしや魔王様に! あの余裕ぶりから狩猟祭の時より更に上の力を持っているのはわかる)
続いて第6圏まで開放。
(やはり、あの上があったか。しかしそれでも今の私なら!)
第七圏を開放。
(な、ばかな! まだそんな力を)
(力の解放はこのくらいかな)
立ち昇る魔力は雲を貫いている。
お次は武具だな。
「いでよ『奈落戦器』No.666『支配者の証』
俺の魔力の端々から阿鼻叫喚が聞こえてくる。
前方の空間にぽっかりと穴が空き、魔力と先程から耳をつんざく阿鼻叫喚が吸い込まれていく。空間に割れ目が生じ、次第にヒビが広がる。
小規模の爆発とともに空間がガラスが弾け飛ぶような感じで弾けた。爆発の中心部には黒色に輝くネックレスが浮いていた。
そのネックレスを取り、身に着ける。
「コイツは特殊な武具でな、本来二つまでしか同時に出せない奈落戦器を全て同時に出せるというものだ」
「いでよ『奈落戦器』No.11、No.12、No.13」
11は武器、今回は非常に長身で両手持ちの鎌。12は防具一式、比較的軽装の鎧、兜、下半身、篭手を身に着ける。13はアイテム一式。魔力が劇的に上がる薬、瀕死からでも即元気になる回復薬、様々なアイテム群だ。
「ワーッハッハ、まだまだ! No.45、No.108」
装着することで空を飛ぶことができる魔法羽。もう一つは雲発生装置、魔力が回復する雨を降らせる。とりあえずこんなところか。
(これが恐怖の魔王!)
『わかっちゃいたが大将ってデタラメな強さを持ってたんだな』
どこからともなくブックの声が聞こえた。
「ここまで力を出したのは久しぶりかな。魔王時代にはうちょっと魔力を出した時があったけど」
あの時は降ってきた隕石を片付けるために第八圏まで開放したっけな。今思えばあれが恐れられた一番の要因だったのかもしれないな。
「ま、まさか。魔王様、まだその上のお力を?」
「ああ、持っているよ」
『マジかよ、まあ大将だし納得だけど』
「ソレでこそ恐怖の魔王様、と申しますか。ある意味こちらは吹っ切れました。胸をお貸しください」
「いいだろう、それでは始めようか」




