第四十七話 悪党の末路
人間界某所。
ハリルはビジョイが人間界の王に取り入ろうとしたが失敗し、逆に追い詰められていることを知る。潜伏先を調べだしその場へ向かった。
しかし、どうも様子がおかしい。
そこでビジョイの部下と思われる男と接触し話をすると彼はすでに死んでおり、今は兄弟たちでこれからどうするか考えているとのことだった。
とりあえずハリルは彼らの代表者と話をすることに。
「君が父さんを?」
「ええ、兄さん。彼は私が殺しました」
「私を兄と呼ぶということは、そうか君達も」
「はい、実験体です」
ビジョイは身寄りのない子供達を集め、その子達を使い実験をしていた。ハリルもまた身寄りのない子供であった。
今回の一連の騒動も、もとを辿れば魔王が人さらいを一網打尽にしたときからであることはハリルがよくわかっていることであった。
「皆兄弟か?」
「はい」
「君達はどんな力を所持している?」
「皆、ハリル兄さんのデータがベースとなっているようです」
彼は手のひらを見せる。右手左手、それぞれの手のひらに眼がありハリルを見つめる。
「ただ、我々は兄さんのように複数の精霊を同時に操ることは出来ません」
手の眼、顔の目を見ると同色であることがわかった。
「私は生まれつきオッドアイだった。多分それがうまくいった要因なんだと思う」
「ですからよく失敗作と罵られました」
「そうか、さぞ辛かったろう」
「いえ、それよりも父が人を殺し続けるほうが我々は辛かったんです」
「調べてみたところ殺害した人数はゆうに100を超えていた。多分もっと殺しているだろう」
ハリルの言葉に男はうなずく。
「我々も死にたくないですから、殺されないよう常に気をつけてきました。それでも理不尽に殺されていく兄弟たちを見て遂に」
「私も同じだった。本来なら私が彼を葬ってしまえばよかったんだがな。そうしておけば今回の件は起きなかったはずだ」
「まだやり直してくれると期待するところがあってな、追放するだけにとどめてしまったんだ」
「父が言っていましたよ、ハリルとはまたわかり会える日が来るハズと」
「その日は永久に来なかっただろうな。もはや殺すしかなかったから」
ハリルはうつむき大きなため息を吐く。もう一度軽くため息をつき顔を上げ男に話しかける。
「さて、これからのことだが君達を私の監視下に置かせてもらう」
「当然そうなりますよね」
「徐々に緩めていき、最終的にどうするかはまた相談だな」
「はい」
「では今回はこれにて」
彼らのアジトから出て、見張りの部下に話をした後、宿泊している施設へ帰るハリル。
馬車に揺られながら物思いにふけっていた。
(あっけない、実にあっけない。そうだな、狂う前の父は悪党の最後なんてあっけないものさとよく言っていたな)
(死者蘇生、人を生き返らせる実験がまさかこんな方向にいってしまうなんてね)
服の隙間から着けているペンダントの装飾部を引っ張り出す。二つ折りの構造になっていて、その中にはハリルが子供の頃に描いた家族3人の絵が入っていた。
(これで終わり、か)
ペンダントをしまい目をつむって見上げるハリル。その時、とっくに枯れたと思っていた涙が彼の目から流れ出した。
ハリルからの定期連絡を確認するため、俺はヴァーンの森へと来ていた。
色々あって忙しいから何も無いかと思っていたが、中には手紙が入っておりこう書かれていた。
「魔王様との戦いを所望致します」
(大丈夫なのか? ハリル)
手紙を見ながら難しい顔をしていると、ブックがひょっこりと姿を現し俺に声をかける。
『どうしたどうした?』
「いよいよハリルとの決戦なんだがちょっと心配しちゃってね」
『心配なんざ戦った後にすりゃいいだろ!』
「ハッハ、ブックらしい」
そうだな、彼が戦う気になったんだ、今はそのことだけを考えるべきだな。
『仕掛けてくるってことは勝算があるってことか? アイツはどれだけ強くなったんだろう』
「聞いた話では6属性の力を手に入れたらしい」
『へぇ、前まで4属性持ちだっけ? ああ、アイツらと契約したのか』
「そうだ、精霊夫妻。子供を助けてからは彼らとの関係は良好、今では怪我も治ったと聞く。万全な態勢だろう」
『そいつはヤル日が楽しみだな。俺が変わってもらいたいくらいだ』
その後はハリル邸へ乗り込み、話し合って戦う日と場所を決める。
一週間後に不毛の地、人さらい達が居た場所から更に奥にある平地で戦うことになった。
「魔王様、当日はよろしくおねがいします」
「ああ、こちらこそ」
ボーマン家へ帰り夕食。
「レイ、なんだか上機嫌ね」
「そうかな? いつもどおりだと思うけど」
「確かに表情は変わらないけどね」
たまに鋭いんだよね、イリスは。流石に話せない内容なので適当にしらを切った。




