第三十八話 もうじき学園祭
魔法特選科、三年生の教室――。
「クックック。今年もこの季節がやってきたな」
「ええ、学園祭の季節が来ましたね」
今日の授業が終わり夕日が差し込み始めた教室、そこには数人の男女が集って世間話を興じている。
まとめ役らしき男が頃合いを見計らい、手を叩き自分に注目させる。
「では、人が集まったところで始めようと思う。今年の一年が強力すぎるから皆で協力して倒そう計画! のために集まってくれてありがとう」
「ククッ」
「ウフフ」
参加者から拍手が上がる。
「まずは、二年生達よ。中等部はどうだ?」
「現状一年生達に全ての競技において勝てる生徒はいないかと。ですから声をかけていません」
「うむ、それは仕方ない。そうなるとニ年、三年連合軍ということになるな」
男は持っている資料をめくる。
「まずは高武練」
高武練とは勝ち抜き形式の戦闘を行う競技。
「去年は中等部でありながら強かった弾丸娘イリスに一位を持っていかれたが今年はどうだ?」
「弾丸娘イリスは腕を上げ、ほとんど魔王ルーナが魔力コントロールに成功、参加資格を得て、レイはイリスと五角ぐらい、おてんば王女フロイアもイリスと同じくらい、と状況は悪化しています」
「二年生たちで対抗できる者は?」
「いません。先輩方は?」
「いない」
「高武練は諦めよう、次」
その他の競技でも全て一年生に負ける予想がつく二、三年連合。
「よし、決まったな」
「今年は無理せず頑張ろう!」
拍手が巻き起こり解散。
「学園祭は一週間あるわ。競技から作品の展示、お店の出店まで色々やるのよね」
「今年は私も高武練に出られるから今から楽しみね」
「ふっふー、お手柔らかにお願いね」
イリスとルーナは見つめ合い火花を散らしている。
「学校にまで作品を持ってきて作っているやつもいたな」
「この学園祭は全国各地から芸術家をスカウトする人達も来るのよ。だからある意味将来がかかっている人もいるでしょうね」
「たかが学園祭ってわけじゃないんだな」
次の日の朝礼。
「今日ナアズ・ファリさんが竜炎病でお休みします」
「竜炎病ってなんですか、先生」
「喉の病気です。比較的軽い病気なんですが、治すには時間のかかる病気ですね」
「実生活には影響無し、なんですが歌唱コンテストへの参加は絶望的と見てショックでお休みしたようです」
「ですから、学校へ来たときは皆で暖かく迎えてやって下さい」
「はーい」
いつもなら病気で休んでも病名までは言わないから何事かと思ったがそういう配慮か。
今日の授業が終わり三人で帰宅。
「歌唱コンテストか、残念だけど諦めるしかないのかな」
「一応、即効性の薬はあるけど竜の素材を使うのよね。それがあれば一ヶ月後の学園祭に間に合うと思うけど」
「それは無理ね~。竜の素材はすぐに手に入らないし高いし。まあ実生活に影響が出ないなら絶対手に入れないとってわけでもなさそうね」
竜の素材か、心当たりがある。
「竜の素材の何が必要なんだろう」
(む、心当たりがありそうね)
「爪と角って話ね。一つならナントカってとこだけど2つはね」
「そいつはきついな」
「ちょっと友だちに聞いてみようかな」
友達ってのはアリスのことかな。ってことはアリスに渡しておけば流通は可能。明日は休日、タイミングはいい。あとはアリスからルーナに自然な流れで渡すにはどうすればってとこだな。
翌日、朝からドラゴンの元へと向かう、前に手土産の魔獣を狩っておこう。好みの魔獣を聞いておけばよかった。
「よお、久しぶり。この前の礼だ、受け取ってくれ」
『おお、これはありがたい』
「それでまたお願いで申し訳ないんだが、爪をもらえないだろうか」
『そのくらいならお安い御用だ』
「ありがとう」
スッ手を前に出すドラゴン。硬そうだな、ミスリルだときれいに切れないかも、魔力で斬るかたちになるしね。少々手間だが奈落戦器で爪をカット。
『それがアンタの武器かい。すさまじい寒気を覚えるな』
「はっはっは、叫びながら出現するからな。俺はなれたけど」
「それから人を紹介したいがいいか?」
『構わん』
「んで、一芝居うってもらいたい」
『内容次第だな』
ドラゴンを説得、ヴァーンの森まで戻り、秘密基地に置いてある角を持って今度はアリスの家へ。
「おう、アリス。今暇か?」
「ええ、時間はありますよ。なにか御用ですか」
「この近くに竜がいることがわかってな。悪いやつじゃなさそうだから顔合わせさせとこうと思ってな」
「わかりました行きます」
二人でドラゴンの巣へ。巣に到着後、先に俺がドラゴンに会って角を渡す。その後彼女を紹介。
『この子か。人間の子を見るのは始めてだ』
「お~、魔獣なのにしゃべるんですね」
「そうだ。害のなさそうな魔獣だから仲良くしておこうと思ってな」
「魔王様に従います。ドラゴンさん今後とも宜しくお願いします」
『よろしく頼む』
ここから芝居開始、彼女に気づかれないよう片目をつむり合図をドラゴンに送った。
「ああ、そうだ。ドラゴンの素材って高価なんだよね。良かったら貰いたいんだが」
『それならこの爪と角を渡そう』
「おお! 助かる。今度飼った魔獣でも持ってくるよ」
『たすかる』
「これはアリスの家に置いてもらえるか」
「わかりました。こちらでお預かりしますね」
「もしその素材が必要になっったら俺の了承無しで使って構わんからな」
自然に受け取らせることが出来た。ふふふ、計画通りじゃないか、自分の才能が怖い。満足した俺はアリスを送った後、帰宅。
後日ナアズの病気が治ったことを聞きホッと胸をなでおろした。




