第三十九話 風雲急を告げる収穫祭
――獣人界王宮。獣人族の王ヴィッドレス・デッドは女執事アルフィンを呼び出していた。
会議室、そこには王妃もいた。
「フロイアはいい男を見つけたか?」
「いいえ、まだその様子はありません」
「男運びの相手も選べないか」
「申し訳ありません」
「ん~、もしもの場合は私が適当な男を誘惑して連れてきちゃう?」
「俺の妻なんだからやめてよね!?」
「冗談よ、アナタ」
ため息をつく王。顎髭を手で触りながら眉間にシワを寄せ何やら考え始める。ハッと何かを思いついたようで、軽く手をたたきうなずいた。
「今年の収穫祭の報酬にフロイアをつけよう」
「それはさすがに如何かと」
「なになに、良い手を思いついた」
ヴィッドレスはアルフィンに近づくように手で指示、小声で話す。
「それは面白うございますね」
「であろう? これならフロイアを焦らせるのに丁度いいかと思ってな」
王とアルフィンはお互いニヤリとしうなずく。ここに密かな企みが生まれた。
「魔王様相談があります」
「なんだ?」
アリスの家に顔を出すとルーナがいて急に相談話を持ちかけられる。
「実は、友達が困ったことになりまして」
「言ってみろ」
とはいえ、すでに予想はついていた。フロイアが獣人界で行われる収穫祭、その中のイベント、獣王戦の商品になってしまったことが魔界中で噂になっているからだ。
「王族の子なんですが獣王戦という勝ち抜き制のイベントの商品にされてしまい非常に困っているところです」
「魔王様にはその、お手数ですが優勝していただきフロイアを一旦手に入れ、その後やはりいらないと芝居を打っていただきたいのです」
細かく事情を聞くとルーナは女なため出場資格なし、ハリルは現在非常に忙しく出場できない、魔王メナトでは色々難しい、ということで俺にお願いすることにしたとの話だった。
「いいだろう、一芝居打ってやる」
「ありがとうございます」
話がついたことで一息つくルーナ、しかし怒りがすぐにこみ上げてきたようだった。
「それにしても横暴ですよ。いくら自分の娘だからって商品にするだなんて」
確かにやりすぎな気はするな。娘を早く嫁に出したいってのはわかるが無理やり出すのはいかがなものか。ただ知の麒麟族と呼ばれているし、俺はなにか裏があるのではと推測している。
「それにしてもフロイアが商品になったら参加者が5倍になるなんて」
「王族なうえに年頃だからな。そりゃ男は放って置かないだろう」
「魔王様はああいう子が好みですか?」
うおっとー!
「コホン」
一旦咳払いをして逃げる。
「その話はなしだ」
「失礼いたしました」
前にトラブったからな、色恋沙汰の話はやめておかないと。
「イベントは来週末です。締め切りが近いので早めに受付を済ませておいて下さい」
「了解した」
「それから」
台所へ歩いていくルーナ。
「これ、私が作ったんですよ」
「ほぉ」
一口食べる。うまい、アリスとほぼ変わらない味。
「うまいな」
「ルーナは元々お料理も出来たから教えるのは簡単でしたよ」
宿屋の女将にカレン、アリス、ルーナ。俺の胃袋がどんどん締め上げれれていっている気がする。そろそろ屈服しそうだ。
(フフフ、女の執念、怨念は簡単には切れませんよ? 魔王様)
料理を堪能していたが途中背筋に冷たいものを感じた。結局原因はわからなかった。
次の日獣人界へ。受付の前にそこそこ人が並んでいた。
「はい、これで参加となりました。とにかくすごい数の参加者なんで時間厳守となります。当日遅れないよう気をつけて下さい」
「5倍って聞いていたけどもっと増えたの?」
「現在10倍ですね」
「ふぇ~、人気あるんだな」
「姫様はモテますよ」
「おう、後ろがつかえてんだそろそろいいかい?」
「これは申し訳ない」
後ろを向くと行列、俺が並んだときより増えてるな。これは10倍じゃ済まなそうだ。
街中を歩く。前に来たときより建物が増えたかな。魔族式と獣人式両方の手法を取り入れたような建物がちらほらある。これも種族間交友の賜物だろうか、面白いものだな。
お昼、適当なお店に入って昼食。
「最近は込み込みだな、店長」
「ヘイ、これも魔族との交友のおかげでさぁ」
「今日はそれでも見ねえ面が多いな?」
「王女様の件でしょうね。俺も応募しやした」
ホント人気ね、フロイア。
ギルドの建屋が新しくなってるな。ちょっと入ってみるか。
中は広く、魔族のギルドより大きめかな。ああ、長身な獣人族もいるからか。
ん? フロイアがいるな。ばれないとは思うけど退散しておこう。
ちょっと驚いたけど大丈夫だったかな。あの子たまに異様なほど勘が良いときがあるんだよね。今回は流石にバレてないと思うけど。
呼吸を整え落ち着いたところで俺は魔界へと帰った。




