第三十七話 古代兵器はもう一度
「こっちだ、ついて来い」
しばらく彼についていく。ひとけがなくなったところでこちらに話しかけてきた。
「お前、魔族だな? しかもそこそこの魔力を保持した」
む、種族がバレたか?
「おっと、警戒しなくていいぞ。俺も魔族だからな」
仮面を外すと浅黒い肌があらわれる。たしかに魔族だな。
「さっきは傑作だった。人間たちの驚きようは」
「なにがいけなかったんだ?」
「マジで言ってんのか? いやしかし、人間族を知らなければそんな反応になるか。まだ若いし」
「うん?」
「まあ、その話はどうでもいい」
会話が噛み合っていないが話を進める男。
「魔力が必要だったんだ。魔界まで行って仲間を探す予定だったがお前のおかげでその必要がなくなった。ほんとこれ以上ないタイミングで来てくれたよ」
「魔族の兵士は俺達くらいか?」
「多分そうだろうな。ただ、居ても俺やお前のように変装している可能性は高いからわからんだろうが」
「それもそうだな」
森を抜けると平野が広がっていた。その平野に見覚えがある巨大な物体があった。
「驚いたか? でかいだろう。どこかの研究所から技術をパクって作ったものらしい」
俺が破壊したものと見た目は同じだな。
「パクっただけじゃないらしく、主な動力は精霊の力なんだとよ。主なってのがポイントだ。コイツはそれだけじゃ動かない。精霊石に魔力を与えると動くんだ」
「精霊石?」
「精霊の力を抽出した結晶と言っていたな。抽出元の精霊は死んじまうらしい」
ゴルド家は精霊の扱いに長けていたと聞く。もしやその技術なのか? となるとハリルの父か。
それにしても精霊を殺して作る動力とは。たしかにあまりいい人物ではなさそうだな。
「ちなみに使い捨てで稼働時間は約一日」
「こんな凄い兵器を任されるなんて、アンタは余程名の知れた魔族の人か?」
「いや、よくいる無法者よ。確かになんで俺みたいなやつが任されたのかよくわからんな」
ん~? なんだかおかしな話になってきたぞ。
「まあ、魔力で動くんで俺が選ばれたんじゃないかな?」
周りを見ても研究者らしき姿はない。それどころか俺と彼以外居ないんじゃないかな。
「ところが俺じゃ動かせなかったのよ。ここでようやく本題だ、俺じゃ魔力が足りないから坊主に魔力を注入してもらいたい」
「わかった、やってみよう」
兵器の内部に入る。ハシゴを登り広い部屋に出る。そこには大きな球状の金属ケース、その隣に操作盤のようなものがあった。
「このケースに精霊石が入っているって話だ。で、操作盤の中にあるこの球に魔力を注げばこの巨大な人形が動くって話だ」
「なるほどな」
「コイツが動いたら帝国に進行するって話だ」
「おっ始めるってわけか」
「それじゃ任せたぜ。俺は外に出るからよ」
部屋から退出する男。
(ふぃ~、こんな胡散臭い兵器を任されたって困るんだよな~。だから魔力注入なんてそもそもやってないぜ。坊主には悪いが、失敗しても俺は無事。うまくいったら俺と坊主の手柄になる。クックック、冴えてるぜ~)
「額面通りに受け取れない話ばかりだったな。そもそもこのケース」
金属のケースを外から叩く。
「カンカン」
「やはりな」
ミスリルの剣で金属ケースを両断。中身は空っぽだった。
「それでも配線は通っているか? 魔力は通せるのか」
操作盤の球に魔力を少し送る。人形全体に魔力が伝わる感じがした。
「コイツをどうするか。動いたら戦争を始めるって話だからな。となると取る行動は一つ」
数分後、上半身と下半身が真っ二つになった人形が地面に転がっていた。
これですぐには戦争が起こらないかな。一旦、研究所に戻る。半日ほど経って、ハリルが戻ってきた。
「魔王様、申し訳ありません。やられました」
「何が起きた?」
「彼らの会議に潜入しようと周りから伺っていたのですがどうもひとけがない。中に入ってみると首のない遺体が数十体」
「フレイムウォーク、主要人物が全て殺されました」
「やはりそんなようなことになったか」
「やはりと申しますと?」
ハリルに俺が体験したことをを伝えた。
「そんなことが。後で捜査します」
「主要人物暗殺で戦争は起こらなかったが、万事解決とはいかなかったな」
ハリルの顔色が悪い。実の父が悪さをおこなっているのだ、気分の良い者などいないだろう。
人間界、某所。
「仇敵の首がこれだけあれば皇帝に取り入るのは容易かろう」
「ハイ、その通りかと」
「ククク、甘い、甘いなぁハリルよ。やはり失敗作のお前ではゴルド家はつとまらんか。俺を追い出し恥をかかせたことを後悔させてやる。ハーハッハッハ!」
高齢の魔族が数人の部下の前で高らかに笑った。




