第三十六話 魔王は死なない
「壊してしまってな」
「そうですか、まあ、魔王様らしいといいますか」
遅れてやってきたハリルはある意味納得していた。
「どのみち実験段階でしたからね。戦争に間に合うとは思ってませんでしたし」
「こちらの力を貸す、いわば交友が一番の目的でしたからお気になさらず」
「コホン」
咳払いをすると、ハリルは厳しい表情を作った。
「私はこれからフレイムウォークの組織深くに潜り込み、主要メンバーを暗殺する予定です」
それが一番手っ取り早く被害が少ないだろう。暗殺というと残虐なイメージもあるが戦争になり泥沼の殺し合いになるよりはるかにマシではある。
「魔王様は自由に行動して下さい」
「了解した」
つまりいつもどおりか。ふむ、ハリルが組織奥深くということなら、俺は前線を見張るかな。
ハリルとの話が終わり研究員達が俺を宿泊所に案内する。かなり豪華な施設だな。
「色々ありましたが、ご協力感謝します」
一泊し前線へ向かう。
「では行ってくる」
「行ってらっしゃいませ」
フレイムウォーク側最前線基地に到着。すでに戦闘準備も整っており、いつ戦いが始まってもおかしくない状態だな。
それにしてもガラの悪い奴らが多いこと多いこと。フードを深くかぶっていたり、大きなマスクでほとんど顔を覆っていたり。
あ、これならむしろ潜入しやすいのでは。試しにそのままの格好、仮面をつけたままうろついてみる。特に問題ない、潜入成功。仲間だと思われているかもしれないのは少々癪だが。
「ならず者共が各地から集っているが、もう少し兵力が欲しいところだな」
「それなんだが、どうも追い出しをかけているバカが居るって話だぞ」
衛兵が歩きながら会話をしていた。兵士募集中か、ちょっと見に行ってみるかな。
「絶賛募集中だ。希望者か?」
兵士になっておいたほうが情報を入手しやすいな。俺はフレイムウォークに入隊することにした。
「あそこが兵士の待機場だ。指示があるまでゆっくりしていてくれ」
「そうそう、まだまだ兵力が必要でな。お仲間がいるなら連れてきてくれ」
人手不足か。充実されても困るがな。
「わかった」
生返事をし、待機場へ向かう。
(ここか。それにしても酒臭いな)
多少酒が入るのはわかるが皆酔っ払っているようにも見える。飲みすぎじゃないか?
「おう、坊主。新入りか」
「ウッヘッヘ」
ガタイのいい人間族の男数人に囲まれる。歓迎されてる雰囲気じゃないな。ムムム、こういうときは舐められたらいかんと本に書いてあったな。むしろ挑発するくらいが丁度いいと、これも本に。
「そうだ。やさぐれた皆さんはここの先輩ですね!?」
我ながらひどいことを言ったかな。
(おい、この坊主はおもしれえな。仲間に入れちまうか)
(だけどよー、これ以上人が増えたら儲けも減っちまうだろ? 現状で勝ち戦って言われてるんだし手取りが減るのはよ~)
(そうだな、予定通り追い出すか)
「坊主、ツラ貸しな」
後ろについて歩く。ほどなくして扉のない小屋が視界に入った。ごろつき共はそこへ入っていく。俺も入り中を見渡すとそこにはテーブルと椅子だけが置いてあった。席に座るよう指示され空いている席に座る。
「俺達はよええやつと運のないやつが嫌いでよ」
袋から何かを取り出しながら俺に話しかける男。
「新入りが来たらこいつを使って試してんのよ」
テーブルに取り出した物体を置き、それを滑らせるように俺方へ飛ばした。
「6弾倉、回転式の魔銃だ」
魔銃とは、魔力を用いて、弾丸と呼ばれる小型の飛翔体を高速で発射する道具。非常に精密で器用な人間族ならではの発明品と言えよう。
更にこの魔銃は撃つごとに弾倉が回転、連続で6発発射できる特殊なものだ。
「一旦返してくれ」
彼に魔銃を返す。
「コイツは簡単なゲームだ。弾倉に玉を一つだけ入れて魔銃の銃口を頭につけ引き金を引く。引き金を引けなかったり、死んじまったら負けさ」
「いいだろう、やろう」
ゲームのメンバーは六人。参加しない男が俺達から離れて弾倉に玉を入れる。俺達はコイントスで順番を決めた。俺は6番目。
「よし、はじめるぞ」
皆神妙な面持ちでゲームの行く末を見守る。
「ガチッ」
「ふぅ……」
一人目が引き金を引く。弾は発射されなかった。
「次、お前だな」
次々とゲームは進行、弾は未だ発射されず俺の番に。
「ハッ、運が無いようだな坊主。痛い目にあう前に帰っちまいな」
「え? 俺の番だよな」
「ちょっ! 待てって! 今引き金を引いたら――」
「ダーン」
「あ、ああーーーー!」
「ぼ、坊主済まねえ、そこまでするつもりは……」
「これで合格か?」
「へ?」
魔銃は非常に威力が低い。魔力で防御すればダメージは無し。こんなんで死ぬのは不可能だ。何かの儀式? みたいなものなんだろうな。さて、引き金を引いたし、死んでないしこれで仲間として認められたかな?
「……」
男たちに見つめられる。なんだか様子が変だ。
さっき変なこと言ってたし、もしかして何か失敗したか?
「あーっはっはっは! 面白いやつだ」
後ろでゲームを見ていた仮面の男が笑いながらこちらに近づいてくる。
「気に入ったぜ。コイツは俺がもらっていく。問題ないな?」
「ああ、どこへなりとも」
「坊主、俺について来い」
この場は居心地が悪かったので言われるがままその男についていくことにした。




