第三十五話 魔王、やらかす
「反抗組織フレイムウォークが危険な組織であることがわかりました」
「ほぉ、断言できるほどか」
「組織の後ろでビジョイ・ゴールドマン、私の父が暗躍している事がわかり、そのため詳しく調べていくとその組織の長は、魔獣王ブッカート討伐の際に魔族側に喧嘩を売り戦争のきっかけを作ろうとしていたことがわかりました」
「それだけではなく、様々な事件に関与しているようで、もはや野放しにしておくのは危険と思われます」
「それはフレイムウォークに敵対する側の偽情報とかではなくてか?」
「はい、しっかりと裏はとってあります」
「そうか」
「更に強力な兵器を手に入れ、帝国側へ宣戦布告の準備を勧めているようです」
「もう一刻の猶予もなしか」
「一つ聞きたい。調べるきっかけとなった君の父上はそこまで危険な人物か?」
「はい、非常に」
「宣戦布告される前に叩き潰そうと考えております。すでに人間界側の協力者を得ました」
「そこで、魔王様にお願いがあるのですが、少々その協力者の力になっていただきたいのです」
「俺がか?」
「はい。兵器の原案者で、フレイムウォーク側にある兵器はその技術を盗んだものと言われています。今回の兵器の起動実験に魔族の力を借りたいとのことです」
「それと誠に申し上げにくいことなのですが他魔族では危険すぎてやらせられないのが実情です。魔王様なら全く問題ないとは思います」
「そういうことか。わかった手伝おう」
「ありがとうございます」
「ああ、ただ恐怖の魔王ってのは伏せておいてくれ。あまり表立って動きたくないのでな」
「わかりました、そのように手配致します」
ハリル邸で一泊し、次の日には人間族領へ入る。しばらく馬車に揺られながら外を眺めていると人型の大きな建造物を見かける。変わった物体だ。
その付近にある建物へ入り、協力者という人物に会った。
「お待ちしておりました。私はこの研究所の責任者、サンド・スルです」
白髪で恰幅のいい男性が俺に挨拶をする。
「後ろにいるのはここの研究員たちです」
研究員達がこちらに向かって一礼。
「今回は魔族の力を借りたいとの話だが一体どんなことをやるのだ?」
「はい、やっていただくことは簡単、魔力を注ぎ込んでいただくだけで結構です」
「ほう、魔力をな」
「あの兵器は古代から伝わる文献に記載されていたものを元につくられています。ところが肝心の力の源となるものわからなかったのです」
「動かそうと日夜研究していました。元々は御力で実験していたんですがいろいろと調べた結果魔力のほうが相性が良いことがわかりました。そして今回魔族さんに力を借りようと」
「話はわかった」
サンドに連れられ、巨大な人型人工物の中に入っていく。これを作るってだけでもかなりの技術力だな。建物だと5階建てくらいの高さはある。
「ここが操縦室になります」
大きな部屋にとおされる。そこには王座のような椅子があった。王座の前方、後方はガラス張りで司令室から見えるようになっている。
「面白い作りだね」
「実験用の特別仕様です。問題がなくなればガラスを本来の素材に戻します」
「ふむ」
「この椅子に座ってこのボタンを押すと、前の床が割れて魔力注入玉が上がってきます。その玉へ魔力を流して下さい」
「細かい指示は、後ろにある筒から、問題があったときはこちらの筒の中へ大きな声で話しかけて下さい」
「後これは危険が伴う可能性がありまして……」
「それなら大丈夫だ、心配するな」
「では我々は司令室へ。合図がありましたら魔力注入を始めて下さい」
「わかった」
サンドと研究員達はこの部屋を出て司令室へとはいる。ガラス張りだからこちらから動きがわかる。なかなか面白い。
「それでは始めて下さい」
合図が来たので椅子に座る。すると椅子の前方の床が割れて下から先端が球状になった棒が出現。ある程度の高さまで上がると折れ曲がり俺の手前、手で触りやすい位置に球がくる。
玉を両手で触りゆっくりと魔力を流す。顔を左側に向き筒の中へ言葉を放つ。
「こんなもんでどうだ?」
「まだまだ足りませんね」
ゆっくり第二圏を開放。
「どうだ?」
「まだまだ全然ですね」
結構魔力を必要とするんだな。第三圏を開放。
「これならどうだ?」
「まだまだ! この際だからホンキでおねがいします!」
「いや、それだと……」
「大丈夫です! 問題があれば止めます! さあさあ!」
よほど自信があるのだろう。それなら大丈夫かな? さすがに最大の第九圏はやらないが五くらいなら余裕なのではないだろうか。
四、五と開放。魔力の注入を始めた。
「ん? んんん!?」
注入を初めてほどなく、少々熱気がこもってくる。まだまだいけそうか。どんどん魔力を注ぐ。
「止めて下さい! ストップ! ストープ!」
まだまだ注入。俺の魔力をここまで受けつけるなんて凄い技術だ。
「シャッターを閉めて逃げろ!」
「しかし魔族の方が!」
「あの方ならどんな事が起きても大丈夫だと聞いている。とにかく逃げるぞ!」
「く! はい!」
あれ? ガラスが溶けてきてないか?
「さすがにまずくないか?」
筒の方に向かって声を出したが、筒が溶けて跡形もなくなっていた事に気づいた。
「ありゃー」
これぞ後の祭り。魔力注入を止めたがすでに暴走しているようであちこちから爆発音。
遂には俺のいる部屋で大爆発。ガラスは弾け飛び、他部分もちぎれ人形の上半身が打ち上げられる。人形の上半身は落ちながら逆さになり、凄まじい地響きとともに下半身の手前に落下。
もちろん俺は無事。
「……」
研究員達は驚きの表情で俺を見ていた。謝っておくか。
「ごめんなさい」
「い、いえ」
謝罪して俺が居たほうを見る。そこにはシューシューと煙を上げ、まっぷたつになった巨大な人形が体を晒していた。




