第三十四話 ライバル
「皆さんお久しぶりです。それでは気分を入れ替えて授業を始めましょう」
(あ~、終わっちゃったわ夏休み)
(俺としてはむしろ長すぎる気がするけど)
(えー、まだまだ足りないわよ)
「はいはい、私語は慎みましょう」
休み明けから早速先生に怒られながらの授業。長い休み明けのせいか皆ぐったりしている感じだった。
「今日の授業は終わり。皆もう少し気合い入れてきてね」
それから一週間、平和な学園生活が続いた。
「今日はイリスの家で晩ごはん。カレンの料理が楽しみね」
休み明けからルーナも一緒に帰るようになった。魔力コントロールが出来るようになったからガードも四六時中付く必要はなくなった。
ぶっちゃけ力ならメナトを超えているので正直ガードはいらないが、形式上そういったものはあったほうがいいのだろう。
「それでも王女様なんだから、自由時間は少なめなのね」
「前よりはかなり自由になったんだけどね。お泊りも出来るし」
そう言えばアリス宅に泊まっていたな。
「ガードのベランは商売上がったりって笑いながら言ってたわ」
「でも最近元気よね。やっぱ24きつかったんでしょ」
「全く出番がなくなったわけじゃないし、現在が丁度いいくらいなんじゃないかな」
「そうね、ベランがそんなようなこと言っていたわ」
いつもの宿屋でおやつ。今日も鶏のから揚げ。
「ここは本当に美味しい」
「でしょ? 街一番って言われるだけはあるわ」
ルーナが鶏のから揚げをつまみ上げ、上品に噛みつき食いちぎる。
「柑橘系の汁をかけてあってさっぱりとそれでいて酸味も効いていて美味しい」
「ん? そんなものついていないとおもうけど」
どうにも話が噛み合わない。そもそも唐揚げに柑橘の汁なんてかけたら戦争が起こる。いや、まさか。
「唐揚げセット2つね~」
若いカップルの客が店員に注文。すると厨房の女将さんが目を光らせその二人の客を見た。
(まさか、見ただけで柑橘判定を!?)
「どしたの、レイ? 汗びっしょりよ」
「い、いや、なんでもない」
危険なほどの達人の世界を垣間見た瞬間だった。
「そうそう、レイに相談があるんだけど」
「なんだい?」
「レッドオリハルコンを譲って欲しいのよ」
「ほうほう」
「愛用の剣、王家の剣が壊れちゃって、それに変わる武器を探してたんだけど生半可な素材の武器じゃすぐ潰しちゃって」
ああ、ルーナと稽古した時調子に乗って潰しちゃったっけ。
「ルーナまた強くなったもんね」
「それから人間族の難民が魔族領に来ているんだけど、その中に強力な武器を作ることが出来る鍛冶屋さんが居てね。素材があれば魔族では作れないような高度な武器が作れるみたい」
難民か、ハリルから聞いたとおり人間界はひどい状態なんだな。
「後はレッドオリハルコンだけなんだけど見つからなくてね。レイ、お願い」
「いいとも、あげるよ」
「ホントウ! 良かった」
いつも冷静沈着で落ち着いているルーナが破顔して喜んでいる。こうして見ると15歳の女の子だということを思い出す。いつも大人びた雰囲気を出しているからな。
オヤツを食べ終え、訓練場で汗を流す。
「ルーナ強くなったわ。剣術もそろそろ追い抜かれそう」
「そう言ってしばらくたつじゃない」
見たところ剣術だけならイリスに分があるが、実戦では魔力を込めた戦いとなる。その場合はルーナが勝つだろう。
それにしても二人共出会ったときよりも目に見えて成長している。まだまだ強くなるな。
訓練を終え夕食。
「ん~、美味しい。前より腕を上げたわね」
「フフフ、ありがとうございます、ルーナさん」
ガツガツと料理をたいらげていくパワー系女子二人。俺も負けていられない。
食後一服つき、ルーナに話しかける。
「レッドオリハルコン、持ってく?」
「お言葉に甘えてもらっていこうかな。もうじきガードさん達も迎えに来るし」
「時間をかけてレイを落とそうと思っていたから、ちょっと肩透かしかしら」
「ははは、帰り道で話は決まったからね」
ガードが家に到着。ルーナは帰った。
「俺も離れにいくね」
「はいー」
「はぁー、一人増えちゃったか」
「なにが?」
「お姉ちゃんホンキで言ってる?」
「?」
「ハァー……」
3日後、ルーナが言っていた難民の人たちと、彼女の剣が気になったので、ハリルから彼らが暮らしている場所を教えてもらいそこへ向かう。
「おや、ルーナ」
ルーナが難民の鍛冶屋らしき人物と話をしていた。
「この前は済まなかったな。剣を破壊してしまって」
「いえ、そろそろ限界でしたから、ちょうどいい機会でしたよ」
レッドオリハルコンの他に珍しい素材がテーブルに出ていた。
「ほぉ、これは武器の素材か」
「ヒヒイロカネに竜の髭その他希少な素材たちです」
「ハッハ、完成が楽しみだな」
「はい」
彼女たちと話をした後アリスのところに少し顔を出し、お昼前には家へと帰った。




