第二十五話 暑い日
「お久しぶりです、ベラニアさん」
「あら久しぶりね、ルーナ」
「私の所へ直接来るなんて珍しいわね。何かあったの?」
「ええ、お察しのとおり相談がありまして」
「へぇ? どんな話かな」
「一人の男性を好きになったんですが、その、友達が好きな男性だったりとか色々複雑で」
「ふんふん。それくらいなら大丈夫でしょ? 法律的にも一夫多妻は認められてるし」
「フフフ、ベラニアさんにかかったら恋愛は一刀両断ですね」
「ハハハ、私なんて多夫一妻だからね。これも法律で認められてる」
稀に女性の中から、女傑、女帝とも評される強い女性の魔族があらわれる。そんな女性たちのために多夫一妻を法律で認めていた。
「若い頃は多夫多妻でもいい? って国に聞いたら流石に怒られたよ」
「そこまでいくとややこしくなりそうですね」
「でも以外だな、ルーナはこちら側だと思っていたけど。ハッハッハ、人生わからないものだね」
「私もよもやこうなるとは考えていませんでした」
「ベラにアさん、ありがとうございました。心が晴れました」
「また何かあったら来ると良い。相談にのるよ」
「はい、それでは失礼します」
まだ心のしこりは取り切れないが、話してだいぶ楽になったと感じたルーナだった。
「はい、明日から夏休みですけど羽目を外しすぎないようにしましょう」
「はーい!」
夏季の暑熱の回避が目的のこのお休みは約二ヶ月と非常に長い。
「明日から早速海だけどね!」
元気なイリス。
「テンション高いわねイリス。まあ、皆楽しみにしてるけど」
「えーっと、メンバーはっと。私に、ラムファ、フロイア、レイ、イリス――」
ルーナ、ルーナのガード、他このクラスの数名。
「カレンちゃんも来るんだったわね?」
「うむ」
賑やかな海水浴になりそうだ。
次の日、朝早く皆で馬車に乗り込み海を目指す。馬車で一時間ほど揺られれば着く距離だ。
「おー! キタキタ、海に来たー!」
陽の光にさらされ熱を帯びた砂浜、打ち寄せる波。熱気とともに押し寄せる潮の香りが俺の鼻をくすぐった。
珍しい植物が点々と砂浜に生えている。熱帯性の植物だろうか。
「人がいっぱいねぇー、とりあえずこの辺を基地にしましょうか」
荷物を一箇所にまとめ、それぞれ更衣室で着替えを済ませる。
「よーし早速泳ぐぞー!」
「イリス! 勝負だ!」
「望むところよ!」
イリスとフロイアが海に向かって走っていった。
「元気すぎるわね、あの二人は。ね、カレン」
「お姉ちゃんが二人できた気分ですよ」
「確かに、似てるかも」
ふと、木陰で休んでいるトマスをみつけた。さっきまで滅茶苦茶元気だったのに。調子を崩したのかな?
「どうした? 大丈夫か」
「良いんだレイ、気にしないで遊んできてくれ。むしろ元気すぎて立ち上がっているから立ち上がれないんだ」
「そ、そうか。わかった」
各自思い思いの過ごし方で海を満喫している。俺も泳ごうと思ったところでルーナに声をかけられた。
「一緒に泳ごう」
「いいとも」
「泳ぎは得意じゃなかったわね。ゆっくり泳ぎましょ」
すでにプールの授業で皆に地元では泳げる場所がなかったから泳ぎは下手と伝えてある。当然ルーナも知っている。
しばらく二人で泳ぎ、お昼となる。これも各々店で買ったり、お弁当だったり。
「はぁ~、こーいうところで食べるご飯てなんでこんなに美味しいのかな」
カレンのお弁当を貪り食べるイリス。
「お姉ちゃん、女の子なんだからもう少しお上品に」
見慣れた光景だが、周りの環境が変わるとたしかに違うものを感じるな。
午後もルーナと泳ぐ予定だ。先ほど洞窟を見つけ少々探検心に火がついてしまったためでもある。
「別になにもないと思うけどこういうところには入りたくなるよね」
「ふふ、私は別に、かな」
「男特有のものだろうか」
洞窟の中は暗いためイリスがライトブロックの魔法を使って明かりをともしてくれる。
「やっぱりなにもないね」
たいして奥深いということもなく、行き止まりがただあるだけだった。まあ、ライトブロックの魔法は消費が激しいから深いと困るけどね。
「さあ、帰ろう」
「ええ、そうしましょ……、キャッ!」
ルーナが前に出ようとしたところ足を滑らせ転びそうになった。すかさず俺が抱き止める。
「大丈夫? このあたりは滑りやすくなっているみたいだね」
俺の腕の中で固まったように動かないルーナ。
「どしたの?」
「いえ、大丈夫。ありがとう」
俺から離れライトブロックの魔法を使って、洞窟を照らす。
洞窟から出て、基地へと戻る。そろそろ帰宅の時間かな。
「おほー! 遊んだ遊んだ!」
「イリス、まるで魚人族みたいな泳ぎだったよ」
皆が集まったところで帰りの準備をし馬車へ乗る。
「まだまだ夏は続くよね。またいこうねー」
「お姉ちゃんは海が好きねぇ」
「僕も海は好きだな」
海水浴の感想を各々が話しながら俺達は街へと帰った。




