第二十四話 それぞれの事情
「はーい、授業を始めます」
「現在獣人族達と交流が始まったところですが大きな問題があります」
魔族領と獣人族領は山に阻まれており、最短で移動ができる山道が100年前、地震の落石により通行が不可能となる。これ以外だと山を迂回するコース、相当日数がかかる道のりしかないため交友の妨げともなっている。
(オルテガ山の山道が使えればかなり便利になるんだけどね)
(そーよねー、と言っても簡単な問題じゃないんじゃない?)
「国は現在エレメンタルマスターことハリル・ゴルド氏に依頼したようですがかなりの困難が予想されています」
(まともにやったら年単位かな。ウーン、後でブックと見に行ってみるか)
オルテガ山、魔族領側。
『でっけー岩山が数個道に挟まってるって感じだな』
「ああ、コレなら簡単に排除できるだろう。一応エレメンタルマスターに連絡をとってから作業しようかな」
『どうやって?』
「そりゃ手紙で」
一週間後、同じくオルテガ山ふもと。
「お待たせしました、恐怖の魔王様」
「呼びつけるようなかたちですまなかったな、エレメンタルマスター」
「いえ、気にしておりません。それより私のことはハリルと呼んで頂けますか?」
「わかったハリル」
「ありがとうございます。ところでこの岩山を簡単に退かせるとは本当でしょうか?」
「可能だ。普通は粉砕しながら除去しなければならないだろうが」
「そうです。さらに岩にはアダマンが含まれていて削岩が容易ではないです」
「ハッハッハ、そのおかげで運びやすいんだがな」
「?」
「少し離れていてくれ」
魔力をゆっくり第四圏まで開放する。
「いでよ『奈落戦器』No.1『巨人の王冠』」
『ああアレね、それならいけるか』
魔力が俺の周りに集まり続け、遂には頭が雲に届きそうなほど巨大な人形が出来上がる。その巨体で早速1つ目の岩山を運ぶ。順調に山の外まで運べた、予定通りだ。
(コレは四年前に見た巨人。なるほど、そのまま運ぶのか。それなら硬いアダマンの岩石なら崩れにくく運びやすい。いや、そんな事普通考えないけど。ホント規格外の人だ)
数個目、手を滑らせ入口付近で岩を落としてしまった。
『だー! 気をつけてくれよ大将!』
『スマンスマン、操作が難しいんだよね、この戦器』
その後、巨大な岩山の除去は終わった。
「ありがとうございました」
『おう? 兄ちゃんはあんま驚かねえんだな』
「前回デタラメな強さをこの目で見ていますからね」
「それからお願いがございます」
「なんだ?」
「もしもの時のために連絡を可能にしていただきたいのですがよろしいでしょうか」
出来れば関わり合わないほうが良いんだけれど、自分だけ呼び出しができるってのもフェアじゃないか。とはいえ彼を過信するのは危険だ。人は見かけによらないからな。一応何を考えているのか聞いてみるか。
「一つ聞きたい。君はすでに現魔王を超える力を持っているのはわかる。なぜ、魔王にならない?」
「それは目標に向かって動いているからです」
「目標とは?」
「貴方を倒すことです」
「そうか」
思わず口元が緩む。仮面をつけているから誰にもわからないが。
「俺についてきてくれ。連絡場所にいこう」
ヴァーンの森奥深く、小岩が扉代わりの部屋に案内する。
「何かあったら手紙、情報を。週一回ほどの割合で見に来る」
「ありがとうございます」
まあ、うまくやれば彼から情報をもらえるから面倒なことばかりでもないな。
「では、さらばだ」
(四年前に見た巨人は恐怖の魔王が作ったものだったんですねぇ)
リーマは木の陰に隠れ岩を片付ける作業を一部始終見ていた。
(なるほど、今回の作業自体おかしなレベルですが前回大狩猟祭より魔力は使ってないと)
彼は狩猟祭のときも恐怖の魔王を見ていた。
(エレメンタルマスターは仲間になったか? いや、そこは特に関係ないか)
紙を取り出しそれに文字を書き始めた。
(今までの戦闘を見て導き出された答えは、ふーむむ、これは出来ればやりたくなかった手ですねぇ。しかし仕方がありません)
書き終わり、その場を離れる。
翌日、学園長の部屋。受付担当の女性が学長室に入る。
「失礼します。髪型がモサモサで風変わりな方がこれを学長先生にと」
「ウム、知り合いじゃな。ありがとう、受け取ろう」
手紙を渡し女性は部屋から退出した。
「ククク、リーマめ、いよいよ動く気になったか」
学長は胸踊らせ手紙の封を切った。
『無理です、探さないで下さい』
「ああそう……」
フラフラと窓に近づく学園長。今日の風景はなんだか涙色だった。




