EP6 諦めないよ?
「動物園ってなにするんだ?」
結局、連れてこられた動物園。あくびが出る。
「動物を見ないでなにするのさ」
二湖はそう言うが、俺は二湖と三葉の後ろ姿しか見てねぇぞ。
「もうすぐお弁当よ」
「俺はそれを食いに来たんだ」
「たしかにお腹空いたね」
並んでベンチに腰掛けた。三人で並ぶ時はいつも決まった順番。俺、三葉、二湖だ。
「お弁当のおかずは何かなー」
「一海がいっぱい食べるから、色々入れてきたのよ」
からあげにハンバーグにエビフライ。
「四番バッターしかいないな」
「野菜も食べなさいよ?」
「見えてなかったよ」
「ほらブロッコリーも人参も入ってる」
「おい、いらないって」
「くすくす」
俺と三葉が喧嘩して、二湖が笑ってる。いつもと同じだった。
「ふー、ごちそうさま」
「美味しかったよ三葉」
「いえいえ」
「昼からはどうする?」
「僕はスケッチしてくるから、二人で回っておいでよ」
「俺は二湖の隣で寝てるから、一人で回っといでよ」
「二湖の邪魔しないの。ほら行くよ」
くそ。二湖と三葉を二人きりにするはずだったのに。二湖も二湖だ。笑顔でこっちに手を振ってやがる。
「なぁ、お前がモデルになってやれよ」
「私を描くなら動物園に来る意味ないでしょ?」
うさぎと触れ合いコーナーにきた。三葉はしゃがんでうさぎを撫でている。
あまり見れない優しい笑顔だった。
三葉のこんな顔を俺だけが見てどうするんだよ。
「一海?」
「え、なんだ?」
「どうしたの? ボーッとして」
「……なんでもない」
三葉に見とれてましたなんて言えない。
「次はペンギンの餌やり」
「あ、あぁ」
三葉に散々連れ回されたところで、二湖を見つけた。
「二湖」
「兄さん、三葉は?」
「飲み物買ってくるって」
「そう」
「疲れたぜ」
「なにを見てきたの?」
「…………人間かな」
「え?」
「お前こそ、なに描いてるんだ?」
「カバだよ」
「ケツしか見えねぇぞ」
「だから待ってるんだよ」
「気の長い話だ」
「ねぇ、兄さん」
「なんだよ」
「三葉のこと、好きなの?」
俺は二湖を見た。そんな真剣な目で見るな。
「なに言ってんだよ。そんなわけないだろ」
なんだか気まずくなって目線を外した。
「本当に?」
「あぁ」
「じゃあ僕も諦めないよ?」
だから、そんな真剣な目で俺を見るな。
「恋敵がいるぐらいで諦められるならそんなのやめちまえ」
「……兄さんらしいや」
胸がざわついている。焦ってる? わからない。
「はい、一海はコーラね」
ちょうど三葉がジュースを抱えて帰ってきた。
「これは二湖の」
「ありがと三葉」
「一海くんはありがとうも言えないのかな?」
「アリガト」
「気持ちが込もってないわね」
「このコーラにも気持ちが込もってないぞ。いつもの味だ」
「一海!」
「ははっ」
大丈夫。俺はこれでいい。
「一海?」
「ん?」
「変な顔して、どうしたの?」
「なんでもない」
二人が笑っていてくれたらそれでいい。




