EP3 本気
今日は体力テストの日だ。幸太郎は張り切ってるだろうな。
「一海! 見てるぞー」
大きな声が聞こえた。そちらを見ると、笑顔で手を振っている三葉が見えた。
「おい、一海」
サッカー部の西田。何かと俺をライバル視してくるめんどくさい奴だ。
「次の百メートル走。勝負だ」
「お前ら運動部と違って、俺たちは適当にやってるんだよ」
「負けた時の言い訳か?」
少し頭にきた。負ける気はしない。
「そんなマジになるなよ」
「ほら、俺たちの番だぜ」
俺と西田はスタートラインに立った。
スタートはスタンディング。靴はスニーカー。これで本気を出すなんて馬鹿らしい。
「一海!」
三葉が見ている。
……。
たまには良い所を見せてやるか。
「よーい。ドン!」
勝つ気で走った。本気で走るなんて久しぶりだ。
西田は前にも横にもいない。でも、自分が遅い。
本気で走って……。
いや、やめた。
西田に並ばれて、抜かされた。
「はぁ、はぁ、一海。俺の勝ちだな」
「あぁ……速かったよ」
俺はグラウンドから校舎に戻る途中の水道で、頭に水を被っていた。
「どうして本気で走らなかったの?」
この声は三葉だな。ほっといてくれよ。
「おい!」
「なんだよ」
振り返ると、三葉立っていた。俺は髪をかき上げて、体操服の裾で顔を拭いた。
「どうして力を抜いたの?」
「どうだっていいだろ」
「良くない! 途中までカッコよかったのに!」
「……無様だったか?」
「え?」
「ゴールした時の俺は、カッコ悪かったのか?」
「そんなこと……言ってない」
俺は三葉を見る。
「お前、双子の兄が真面目にやったら最強だった。みたいな話だと思ってるだろ?」
「……」
「残念だったな」
「……じゃあ、双子の兄が幼なじみと結ばれる話。でもない?」
「……」
「……」
「……ばーか」
三葉のヤツ、なに言ってやがる。
本当に陸上はやらないからな。
俺は三葉を残して、みんなの所に戻った。




