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EP11 一生のお願い

挿絵(By みてみん)

雪代二湖と小日向三葉


「今日はおひとり様ですか?」

「三葉、あのなぁ」

「こちらにどうぞ」


 いつもの席。ではなく、遥と座った席に案内された。

 俺は三葉を無視して、いつもの一番奥の席に座った。


「兄さんが悪いんだよ。あんな美人連れてくるから」


 二湖は洗った食器を拭きながら笑っていた。


「連れてきたんじゃない。連れてこられたんだ」

「どっちでも一緒よ。女の子とくるなんて」

「何、怒ってんだよ。友達だって言ってるだろ」

「知らない」


 三葉は乱暴にコーラを置いて、キッチンに戻って行った。

 そもそも、なんで俺は言い訳してるんだ。こんなにイライラして……寝よ。


「あっ」


 ピンときた。この間の映画を二人で見させよう。それでチャラだ。


 チケットも用意した。おじさんたちの許可も得た。完璧すぎる。放課後、三葉を捕まえて声を掛けた。


「三葉。悪かった。これ、一緒に見に行かないか?」

「どういう風の吹き回し?」

「ダメか?」

「いいけど……」

「じゃあ、先に映画館で待っててくれよ。ちょっとやることがあるから」

「え? でも仕事が」

「おじさんたちには休みの許可取っといたから」

「……わかった。あんまり待たせないでよ?」

「すぐ行くよ」


 よし。次は二湖だ。

 俺はひまわりに向かった。


「二湖。三葉と映画を見る約束をしたんだけど、用事ができて行けそうにないんだ」

「それで?」

「代わりに行ってきてくれないか」

「兄さん。嘘はいけないよ」


 二湖には嘘が通じなかった。こうなったら押し切るしかない。


「頼む。一生のお願い」

「じゃあさ、僕のお願いも一つ聞いてくれる?」

「あぁ、なんでも聞くから」


 映画に行ってくれるなら、それくらい安いものだ。


「わかったよ。おじさん、ほんとにいいんですか?」


 キッチンのおじさんは、俺を見ると笑顔で頷いていた。


「あぁ、今日は一海くんが手伝ってくれるらしい」

「しっかりしてるよ兄さんは」

「ありがとう二湖」


 こうして俺は二人で映画に行かせることに成功した。

 今日は一日バイト。後日、二湖のお願いをなんでも聞く。なんか俺の負担デカくないか?


「おじさん、俺は何したらいい?」

「お客さんが来たら、注文を聞いて、できた料理を運ぶ。できるかい?」

「まぁ、毎日見てるから」

「頼んだよ?」

「あぁ」

「一海くん」


 俺がキッチンから出ようとするとおじさんが呼び止めた。


「ありがとうね」

「え?」

「三葉と二湖くんに、こんな休みを用意してくれて」

「やめてよ。そんな立派なもんじゃない」

「立派だよ」

「……ほら、お客さんだ。いらっしゃいませー」



 ようやく仕事が一段落して、いつもの席で寝ていた。今、何時だ……?


「一海!」

「んー」

「おい! 一海!」

「あー、おかえり」

「おかえりじゃないわよ」

「二湖は?」

「いるよ」

「どうだった映画」

「よかったよ。三葉なんてボロボロ泣いて」

「何よ、二湖も泣いてたじゃない」

「……」


 俺だけか……泣けないのは。


「そんなことより騙したわね」

「あー、腹が痛かったんだよ」

「もう……」

「ありがとね。兄さん。楽しかったよ」


 二湖って、そんな顔で笑うんだ。二人で行かせて良かったかな。


「三葉! ご飯は食べてきたの?」


 おばさんがキッチンから声をかけた。


「まだー」

「なんでもいい?」

「うん」

「一海もまだ食べてないの?」

「まだ」

「一海……あなた今日、何してたの?」

「さぁね」


 俺はまた机に突っ伏した。


「できたら起こして」

「わ、わかった……ねぇ、おかーさん! やっぱり私が作る!」


 今日もオムライスか……。


「兄さん」

「んー?」

「今度は三人で行こうね」

「んー」

「兄さん」

「……」

「ありがとう」


 

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