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犬と不良と異世界で  作者: 奏 舞音


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7.救世主とは犬好きの変態のことで?

 救世主……なんだそれは。

 私は口をぽかんと開けたまま、思考が停止していた。

 どこぞのRPGや勇者が出てくる漫画や小説のような展開に、私はいやいやいや……と首を横に振る。


 しかし、『救世主』と言われた篠崎くんは、まんざらでもない顔で黒い犬を見下ろしていて、なんならにやにやと締まりのない顔をしている。

 私としてはもし救世主様とかがいるのなら、もっとかっこよくて、凛々しくて、頼りがいのある人がいいなぁと思う訳で、何故この犬好きの変態(しかも不良である)が、『救世主』なのかと黒い犬に問いたい。

 そんな私の視線に気づいてか、黒い犬は居ずまいを正して立ち上がり、この犬世界のことについて話始めた。


「私たち犬の世界は、徳川綱吉様のお力で創られた世界なのです。そして、この世界が悲劇に見舞われた時、再びその血を受け継ぐ者が現れる……という伝説がありまして、私たちはずっとその救世主様を待ち望んでいたのです!」


 なんと、この世界をつくりだしたのはかの有名な犬将軍であらせられましたか……私は心のなかで大きくリアクションをとる。事情を話してくれるのはありがたいのだが、そろそろ牢屋から出していただきたい……が、彼?はそのまま話続ける。


「しかし、この犬世界が人間界と繋がるためには100匹の犬の力が集まらなければなりません……時代が変わった人間界で、100匹もの犬が同時に揃い、なおかつ主人に愛されて力が満ちている状況などありはしない、と私たちは半ば諦めていたのです」


 そう言って、黒い犬はきらきらした瞳で篠崎くんを見つめた。


「それなのに!!! あなたはここへ来てくださった! 人間界で住まう我らが同胞たち100匹を愛し、この世界へと!」


 確かに、篠崎くんは犬たちを愛していた。

 それはもう、溺愛していた。

 拾ってきた子犬をきれいにしてやり、犬のための部屋をつくり、それぞれに名前をつけて、それはもう可愛がっていた。

 私は、その姿をついさっきまで彼の屋敷で見ていた。

 まさか篠崎くんの犬愛によって犬世界いせかいへ飛ばされることになろうとは思わなかったが。

 篠崎くんは黒い犬をじっと見つめ、真剣な顔で聞いた。


「俺がここに来ることを待っていた、ということはこの素晴らしい犬世界が何か危機に陥っているということか……?」


 篠崎くんは、犬好きのため、黒い犬の話を真剣に、真面目に聞いていたらしい。

 私の話には全く耳を貸さないくせに。犬相手だとこうも親身になるのか。


「はい。実は、この犬世界と、どういう訳か猫世界が繋がってしまいまして、我らが姫が誘拐されてしまったのです。そういう訳で、今この世界はピリピリしてまして、部下があなた方を姫をさらった者だと盛大な勘違いをしてしまったのです」


 悲し気に尻尾を下げた犬が言うには、誘拐犯は猫らしい。

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