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黒角の魔聖女  作者: 未羊


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第86話 狭い通路での駆け引き

 バタフィー王子は隠し通路を進んでいく。

 降りていった先には、怪しげな扉がひとつ見つかる。


(気持ち悪いな……)


 扉の前に立ったバタフィー王子は、思わず口と鼻を手で覆ってしまう。扉の向こう側から不穏な魔力を感じ、その魔力に拒絶反応を示したのだ。

 この拒絶反応の正体は何なのか。それを探るべく、バタフィー王子は扉に手をかけようとする。


「おやおや、こんなところまで来て、どうなさったのですか」


 背後から突然、声が聞こえてくる。

 ばっと振り返ると、そこには宝石商の店主が立っているではないか。一体いつやって来たのだと、バタフィー王子は警戒感を露わにしている。


「すまないな。待っている間にちょっと用を足したくなってな……。どうやら迷ってしまったようだ」


 振り返ったバタフィー王子は、背後の扉の中を気にしつつも店主の質問に答えている。


「そうですか。しかし、ここは関係者以外立ち入り禁止でございますよ。いくら王族とはいえ、自由に入れる場所では、ないのですよ」


「ああ、そうだったのか。それなら仕方ないな。元の場所に戻って、宝石を見せてもらおう」


 店主の言葉にひとまず従うバタフィー王子。

 そのままおとなしく従う……わけがなかった。

 くるりと振り返り、バタフィー王子は扉を思い切った体当たりでぶち破る。

 バタフィー王子の思わぬ行動に、店主もまったく対応できなかった。

 体当たり一発で扉は簡単に開いてしまい、扉の奥はバタフィー王子の目にさらされてしまう。


「こ、これは……」


 扉の中でバタフィー王子が見たものは、恐るべきものだった。

 そこには骸となった者たちが、カタカタとぎこちない動きを見せながら何かを作っているではないか。

 その手元は暗くてよく見えないものの、なにやらきらりと光るものが見える。


「この店の宝石は、この骸たちが作っていたのか。ということは、お前は!」


 バタフィー王子が振り向くと同時に、なにやら鋭いものが振り下ろされる。


『危ないっ!』


 ぶうんと音が響き渡り、バタフィー王子の前に何かが飛び出してくる。


「ぐっ?!」


 ガキンという音が響き渡ると同時に、なにやら声が聞こえてきた。


「おーのれー。虫の分際でー……」


 虫の突撃によって攻撃が弾かれたことに怒るその人物。それは、バタフィー王子が先日見かけたあの道化師の男だったのだ。


「お前はあの時の道化師。くそっ、このことに気付けなかったとは、実に悔しい限りだな」


 バタフィー王子は悔しそうな表情を見せている。まさかこの宝石商の店主が、先日王都の外で戦った魔族の道化師だと気付けなかったのだから。

 だが、同時に、王都のど真ん中に、再び魔族を侵入させてしまったことに歯を食いしばっている。


「ミーの計画を邪魔するやーつはー、こーこで死んでもらいまーすっ!」


 狭い通路ながらも、クラウンは鎌を振り上げている。まるでそこに当たり判定がないと言わんばかりの大振りだ。

 応戦しようとするバタフィー王子だが、今の自分がうっかり武器を持っていないことに気が付いた。このままでは攻撃が躱せない。どうしたものかと少し考え込む。


『王子を守れ』


『聖女様のご命令だーっ!』


 そこへ、大量の虫がなだれ込んでくる。クロナが送り込んだ、スォームビートルたちである。

 バタフィー王子の危機に、自らの危険を顧みずに飛び出してきたのだ。

 がっちり固まると、バタフィー王子を守る盾へと変化する。


「ちっ、羽虫の分際でーっ!?」


『王子、ボクたちを使うんだ!』


 攻撃を防がれて怯んだクラウンの隙を突き、スォームビートルが寄せ集まって何かの形へと変化する。それは何かというと、ひと振りの剣だった。

 小さな虫たちの塊とはいえど、クラウンの鎌を弾けるほどの強度があるのだ。見た目こそおぞましいものの、その姿を見たバタフィー王子は、言葉も分からない虫たちの気持ちを汲み取っていた。


「ふっ。魔物ごときに助けられるとはな。いいだろう、お前たちの力を借りてやる」


 バタフィー王子は、スォームビートルが寄せ集まってできた剣をつかむ。

 全部が虫の体だというのに、不思議なことに普段使っている剣と握りの感覚がまったく変わらなかった。

 スォームビートルたちが、瞬時にバタフィー王子の手に合わせたのだ。

 武器を手に入れたバタフィー王子は、狭い通路であえてクラウンと対峙する。クラウンの鎌は壁などを無視するものの、バタフィー王子に対して当たり判定が絞られるので、軌道を読みやすいというわけだ。

 だが、それは自分の方にも大きな制約を課す。いくらスォームビートルの寄せ集めの剣とはいえど、当たり判定は普通の剣と変わらない。つまり、バタフィー王子は剣が振りづらい状況にあるわけだ。

 バタフィー王子は一体何を考えているというのだろうか。


「あーえて、自分を不利にしまーすかー。この自信、後悔させてやーりまーす!」


 自分の方はやりやすいがために、クラウンはおかしく笑いながらバタフィー王子を睨みつけている。

 宝石商の地下で行われているバタフィー王子とクラウンの戦い。

 時の運を味方につけてこの戦いを勝利するのは、はたしてどちらなのだろうか。

 人知れず、運命の戦いがここに始まった。

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