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黒角の魔聖女  作者: 未羊


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第81話 死霊使いの追撃

 夜の闇に紛れ、スォームビートルたちはクロナの元へと向かって走り続けている。

 外見的な要素から、外敵に見つかることは皆無。……のはずだった。


「どこーへ行こうとゆーのですかねぇ?」


『うわぁっ?!』


 強い魔力の嵐が、スォームビートルたちを襲う。

 体が小さいスォームビートルたちは、その魔力の嵐に軽々と吹き飛ばされてしまう。

 どうにか全員生き残ったスォームビートルたちの前に、道化の姿をした人物が立っていた。


『お前は、クラウン』


『死霊使いの魔族が、おいらたちに何の用だ』


 ふわりと舞い降りるように姿を見せたクラウンに、スォームビートルたちが睨みを利かせている。


「むーしけらごときのこーとばなどー、何も聞こえませんなー?」


 ところが、クラウンはまったく聞いていないような口ぶりをしている。

 しかし、スォームビートルたちの言葉の後に答えているので、本当はしっかりと聞こえているように思える。

 クラウンは魔王からも目をかけられている高位の魔族ゆえに、スォームビートルのような魔物の言葉など聞きたくもないのだろう。

 とはいえ、スォームビートルたちも体は小さいがかなり強い魔物だ。それを言葉のごとく虫けら扱いだ。それだけ、クラウンにとっては害虫ということなのだろう。


「夜にまーぎれればー、にーげられるとおーもいましたかねー?」


 スォームビートルたちを睨みつけながら、クラウンは余裕を持った態度で言い放っている。


「夜はー、ミーの力をもーっともはーっきでーきる時間なーのですよ!」


 大声で言い放つと、再びクラウンから魔力の波動がほとばしる。

 だが、スォームビートルたちも二度目は吹き飛ぶものかと、しっかりと身を寄せ合って地面へとはいつくばっている。


「さぁ、おーきるのでーす。我が下僕どーもよーっ!」


 クラウンが高笑いをしながら叫ぶと、地面のあちこちからボコボコという音がして、じわじわと土が盛り上がり始める。

 次の瞬間、地面の下から骨まみれだったり、あちこちが朽ち果てた状態だったりと、なんとも気味の悪い姿の何かがはい上がってくる。


『うわぁ、死体が動いている……』


『これが死霊使いの力か……』


 自分たちもなかなかに気持ち悪い姿をしているのだが、そんなスォームビートルからしても、死霊が動き回るのは不気味で気持ち悪いようだ。


「だーれに命令さーれたかしーりませんけれどねー」


 慌てる姿を見せるスォームビートルたちを見ながら、クラウンはほくそ笑みながら余裕の表情を見せている。


「ミーの秘密をしーったからにはー、死んでもらーいまーすよーっ!」


 眉間に指を当てて決めポーズを取って言い放つと、クラウンが操る骸たちがスォームビートルたちに襲い掛かっていく。

 スォームビートルたちは体を寄せ集めて、迫りくる骸たちへと抵抗を試みる。

 このスォームビートルたちは、確かに個々としては弱めな存在だ。その真価は、複数集まった時にこそ発揮される。がっちりと寄り集まり、小動物ほどの大きさになる。

 一部しか王都から脱出していなかったので、現在ではこの大きさが限界である。だが、これで甘く見てもらっては困るというものだ。


『おいらたちは、死なない!』


『必ず、役目を果たす!』


 小動物と化したスォームビートルたちは、クラウンが呼び起こした骸たちへと攻撃を仕掛けていく。

 本当ならクラウンを狙うべきだろう。それはスォームビートルたちも分かっている。

 だが、そのクラウンの前に立ちふさがるように骸たちが群がっているので、骸を排除しないことにはクラウンを攻撃できないのだ。


「なーかなかやーりますねー」


 次々と骸を殴り飛ばしていくスォームビートルたちを見て、さすがのクラウンも感心しているようである。

 ところが、クラウンの表情は焦るどころが余裕の表情を見せている。


「むーしけらのくせにー、思ったよーりもがんばーりますねー。ですが―……」


 クラウンはにやついた表情で左手を持ち上げると、手のひらを上に向けたまま、指をくいっと持ち上げている。


 ボコッ!


 その仕草と同時に、再び地面の中から骸が起き上がってきた。


「まーだまだ死体はあーるのですよー?」


 起き上がる骸に守られるようにして、クラウンは余裕の笑みを浮かべていた。

 倒しても倒してもきりがない。さすがの国境付近の森に住む魔物とはいえど、このキリのない状態が続いてはじり貧は避けられない。なにせ最後に待ち構えているのは、死霊使いのクラウンだ。このクラウン自身がまた強いのだから、時間はかけていられないというものである。

 どうすればここを抜けてけるのか。小さな図体ではあるものの、スォームビートルたちは必死に考えていた。

 しかし、考える時間など、そう与えてもらえるわけもなかった。クラウンが叩き起こした骸たちが、絶え間なく襲ってくるのだ。

 終わりの見えない戦いに、小さな虫とはいえど、スォームビートルには焦りというものが生まれていた。なぜなら、クラウンが企んでいることを、クロナたちに伝えなければならないのだから。


 その時だった。


 闇夜を切り裂く一閃。

 思わぬ斬撃が、クラウンがたたき起こした骸たちを一瞬で真っ二つにしていたのだ。

 一体何が起きたのか。それはスォームビートルどころか、クラウンにも分からないことだった。

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