8話「お着替えしました! パステルカラーのドレスはお好きですか?」
※ラインハート視点を6話目に追加しました。
本来の6話を7話と改めました。
ラインハート視点を読み逃した方は、戻って読み返していただけると助かります。
ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。
「うーーん、暗い色の服ばっかりね」
お風呂に入った後、自室に戻りクローゼットを開けた。
そこには、黒や紺などの暗い色の服が並んでいた。
リボンや宝石も服と同じ色の物が多い。
「レイアの服は趣味じゃないわ……」
あとで、新しい洋服とアクセサリーを買い揃えましょう。
こういう時お金持ちって便利!
お誕生日や記念日でなくても、服を買ってもらえるのだから!
お金持ちは三時間経験したら止められないわ!
「これいいかも!」
一番奥に桃色のドレスがあった。
リボンも一つだけ明るい色の物があったので、それを付けることにした。
侍女に髪をハーフアップにしてもらい、桃色のリボンを結んでもらった。
鏡の前に立ち、くるりと一回転する。
「明るい服に着替えたら、気分も明るいわ!」
じっくりと鏡に映った自分の姿を確認する。
原作ではモブ王女として描かれていたけど、こうして見るとレイアはかなりの美少女だ。
前世ではドレスを着る機会なんてなかったし、レイアをセルフ着せ替え人形にして楽しみたいわ。
「ラインハート兄様も、湯浴みを終えた頃かしら?」
ラインハートとルーディーの様子が気になるわ。
「兄様は今どこにいるの?
案内して」
侍女と共に、ラインハートの部屋へと向かった。
◆
侍女の話では、ラインハートとルーディーは客間にいるらしい。
お母様はラインハートに一晩だけここに泊まるように命じていたけど、私は一泊で彼を返す気はない。
彼に第三離宮の住心地の良さを心ゆくまで味わってもらい、ここから離れられない体にするつもりよ!
某孤島の刑務所では、海を泳いで脱獄する者が出ないように、シャワーの温度を高めに設定していた。
お湯になれた体で冷たい海には飛び込みたくないだろう、という管理者の作戦だ。
私もその作戦でいくわ!
略して「ぬるま湯につけてラインハートを骨抜きにしてやろう」作戦!
そんなことを考えている間に、客間についた。
「失礼します!
レイアです。
ラインハート兄様、入ります。
わぁ〜〜!」
部屋の中には、水色の服を着た美少年がいた。
埃と油っぽかった黒い髪は綺麗に整えられ、袖や肘の部分が痛み薄汚れていた布の服は、仕立ての良い絹の服に変えられていた。
凛々しさと可愛さが五割増してる!
今のラインハートはどこからどう見ても貴公子だわ!
ここが漫画の世界なら原稿用紙一枚使ってコマを縦にぶち抜いて全身が描かれ、背景にキラキラエフェクトが入ってるわ!
第三離宮に貴族の男の子の服はないので、おそらく彼が着ているのは見習い用の騎士の服だろう。
見習い騎士の服を着ただけでこんなにかっこいいなんて!
彼の体に合わせ、ジュストコールやフロックコートを仕立てたらどうなってしまうの!?
今のラインハートを見たら、「花の聖女」のヒロイン聖女ニーナもメロメロになっちゃうわ!
決めた!
原作でラインハートの恋を応援して、ニーナとくっつけましょう!
その為に、きっと私は前世の記憶を持って転生したのよ!
ライバルである隣国の王太子クロードを超えなくてはいけないわ!
クロードは正統派王子様で、超超ハイスペックキャラでメインヒーロー!
彼を超えるのは簡単じゃない!
でも、ラインハートの幸せの為なら頑張るわ!
ラインハートにマナーもダンスも剣術も魔法も完璧にマスターさせ、ニーナのハートをゲットしてもらうんだから!
「ラインハート兄様、素敵です!!
見違えました!
以前の兄様もなかなかでしたが、今の方が断然かっこいいです!!」
私はラインハートに駆け寄り、彼の手をぎゅっと握った。
「お前は簡単に手を握りすぎだ……!」
ラインハートは私の手を振り払い、視線を逸らした。
顔が赤いのはお風呂に入った後だからかしら?
「それに、こういう髪型は俺の趣味じゃない……」
ラインハートは櫛で綺麗に整えられた髪を、手でくしゃくしゃにしてしまった。
もったいない。
でも、今の髪型も好きだから許すわ。
「我も風呂に入ったぞ」
「ルーディー、あなたも見違えたわ!」
ルーディーは、ラインハートの足元でお行儀よくおすわりしていた。
尻尾をパタパタと振る姿がなんとも愛らしい。
ルーディーを最初に見た時は、白い毛が汚れ茶色くなっていたが、今は雪原のように真っ白だ。
「とっても綺麗よ。
こうして見ると神々しいわね」
私はしゃがみこんで、ルーディーの頭を撫でた。
「そうであろう。
これが我の本来の姿である。
遠慮なくもっと褒めるがよい」
顎を撫でると、ルーディーは満足そうに目を細めた。
「そうだ、私も着替えたんですよ!
どうですか、ラインハート兄様?」
私は立ち上がり、裾を摘んでくるりとその場で一回転した。
「……っ!
お……女の子の服はよくわからない……!」
私が微笑みかけると、彼は手で口元を覆い視線を逸らした。
冷たい反応。
褒めてもらえると思ったのに。
仕方ないわ。
男家族の反応なんてこんなものよね。
「我はその色の服の方が好きだぞ」
「本当!? ルーディーありがとう!!」
私はルーディーを抱き上げ、おでこにチューした。
「おい……!
お姫様が気軽に口づけをするな……!」
ラインハートが、眉間に皺を寄せる。
「口づけと言ってもおでこですし、相手も動物……神獣ですよ?」
ラインハートが私からルーディーを取り上げた。
「人語を話す相手は、人間と同じ扱いでいい!
動物の見た目をしていても、気を許すな!
必要以上にくっつくな!
口づけなんてもってのほかだ!」
「そんな……!」
なんて厳しいことを言うの!?
「わんこを飼ったら、ギューッとしたり、肉球ぷにぷにしたり、お腹に顔を押し付けて匂いを嗅いだり(犬吸い)、ふかふかの毛を枕にしたりしようと思ってたのに……!
それを禁止するなんてあんまりです!」
「匂いを嗅ぐなよ……」
「そこまでされると、我も若干引くぞ……」
二人から蔑むような、哀れむような目を向けられた。
えっ、犬を飼ったらみんなしてるんじゃないの!?
前世では、飼い主が愛犬を溺愛している動画を沢山見たわ……!
この世界の人たちは、愛犬が可愛くないのかしら?
「とにかく、ルーディーへの必要以上の接触は禁止だ!」
「我は神獣でわんこではないぞ!」
二人からお叱りをうけてしまった。
くっ、私のもふもふライフが!
読んで下さりありがとうございます。
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