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モブ王女に転生したら悪役王子の義兄に溺愛されました! 前世の推しを闇堕ちなんてさせない!  作者: まほりろ・コミカライズ配信中


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7話「ようこそ第三離宮へ! さっそくですがお兄様、一緒にお風呂にはいりましょう!」

※ラインハート視点を6話目に追加しました。

 昨日投稿した6話を7話と改めました。


 ラインハート視点を読み逃した方は、戻って読み返していただけると助かります。


 ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。



第一王妃とワグナーには一年間第一離宮での謹慎処分が下され、ワグナーの側近のゲロンとグスは側近の立場を失い、学園に入るまで自宅での謹慎が命じられた。


生ぬるいわ……。

厳罰に処すとか言っておきながら、あの国王は口だけね。


第一王妃と離婚し、ワグナーから王族の地位と王位継承を取り上げて、二人を国外追放処分にするくらいしてほしかったわ。


国内にはいくつもの派閥があり、派閥の力関係を保つことも重要だ。

第一王妃派が失脚すると、派閥の力関係が崩れる。

このくらいの罰が妥当なのかもしれない。


政治としてはそれでいいのかもしれないけど、個人としてはもやもやが残るわ。







私はラインハートとルーディーを連れ、第三離宮へ移動した。


「ラインハート兄様、ルーディー!

 ここが第三離宮です!」


第三離宮は近世ヨーロッパ風の作りの屋敷だ。


第一離宮程は大きくはないが、使用人がよく働いてくれるので、屋敷の外も中もきちんと手入れされている。


母の趣味で、外観も内装もパステルカラーが使われ、やや乙女チックな作りになっている。


芝生が敷き詰められた大きな庭もあるので、後でルーディーやラインハートと遊びたいわ。


「ふむ。

 色合いは我の趣味ではないが、大きさは十分だな」


ルーディーは満足げにヒゲを撫でている。


「ラインハート兄様は、どうですか?

 気に入りました?」


「別に……」


ラインハートは私と視線を合わさず、素っ気なく答えた。

彼は謁見のあと、ずっとこんな感じだ。

やはり、勝手に住まいを決めたことに怒っているのかしら?


「まずは、お風呂に入りましょう!

 ラインハート兄様もルーディーも泥だらけです!

 そのまま屋敷に入ったら、お母様に叱られてしまいます!」


母はとっても綺麗好きなのだ。

普段はおっとりしているが、身だしなみにはうるさいのだ。


「はっ? 風呂?

 いいよ、めんどくさい」


「我も水は好かんな」


二人は同時に顔をしかめた。


「そんなわがままは許しません!

 ルーディーなんて白い毛が茶色くなってるじゃない!

 ラインハート兄様も、汗や泥で髪や皮膚が汚れてますよ!」


「神獣に向かって失敬な。

 我は自分で毛づくろいできるので、風呂など不要だ」


「そうだ。

 風呂に入らなくても死なない」


この風呂嫌いども。


「風呂キャンは認めません!

 私が背中を流して上げますから、一緒に入りましょう!」


ラインハートの体を押すと、仰向けに倒れた。

意外だわ、もう少し抵抗されるかと思った。


「ばっ……!

 お前……一緒に入るつもりか……!?」


私は彼に馬乗りになる。

ラインハートが真っ赤な顔で見上げてくる。

……なんか、新たな扉を開きそうだわ。


「兄様が逃げようとするからです!

 大人しくしててください!

 今、脱がせますから!」


まったく、風呂嫌いな子供をお風呂に入れるだけで一苦労ね。


「やめろ……!

 女の子がはしたない……!」


ラインハートが自分の服を手で抑えた。

彼の顔は耳まで赤い。

そんなに、お風呂入るのが嫌なのかしら?


「レイア……!」


叱りつけるように名前を呼ばれ、私は振り返る。


そこには……厳しい表情をした母が立っていた。

母の後ろには数人の使用人が控えている。


美人は怒ると怖いって本当ね。

私の背中から冷たい汗が伝う。


「庭先で何をしているのですか?」


私はラインハートの服から手を離し、彼から離れ、立ち上がり姿勢を正した。


「ラインハート兄様と、ルーディーをお風呂に入れようと……。

 でも二人とも嫌がるので、無理やり服を脱がせてました」


母は思い切り顔をしかめた。

はしたない行動だったと認めます。


「ワグナー殿下と喧嘩をしたり、急に陛下にお願い事をしたり、今日のあなたの行動は目に余りますよ。

 淑やかだったあなたはどこに行ってしまったの?」


母は額に手を当て、ため息をついた。


前世の私に吸収されて消えました……とは口が裂けても言えない。


原作の母がおっとりしていたのは、レイアが手のかからないいい子だったからなのだろう。


「すみません、お母様」  


とりあえず、しおらしく頭を下げておこう。


「喧嘩の件はワグナー兄様に非があります」


ワグナーからの虐めの件は、親にすら黙っていたレイアにも問題がある。

だけど原作のレイアは、親にも報告できないくらい、ワグナーに精神支配され追い詰められていたのだ。


「お父様へのお願いも、ラインハート兄様を守る為で……」


ラインハートには頼れる人間がいないのだ。

私が守ってあげないと!


「そうね、虐めの件は私も気づいてあげられなくて悪かったわ。

 あなたは私に話して、第一王妃派と争いになるのを避けたかったのよね?

 頼りない母でごめんなさい」


母に悲しい顔をさせてしまった。

罪悪感が、沸々と湧いてくる。


「そんな……!

 お母様のせいではありません!

 昨日までの私に意気地がなかったのです!」


「レイア、自分を責めないで。

 私はあなたの味方ですよ」


母が膝を付き、私に目線を合わせ、優しく私の頭を撫でた。


「これからは困ったことがあったら、なんでも相談しなさい」


私を見つめる彼女は、慈愛と慈しみの籠もった瞳をしていた。

第三王妃はとっても良い人みたい。

この人は信じて良いと思う。


これからは心の中でも「お母様」の呼ぼう。


「ラインハート殿下、娘が失礼をいたしました。

 はしたない娘で驚いたでしょう。

 根は良い子なのです。

 どうか、寛容な心で受け止めたください」


ラインハートは、服の埃を払い立ち上がった。


「第三王妃殿下、俺などに敬語を使う必要は、ない……ありません。

 殿下という敬称もいらない……不要です」


「では、これからラインハートと呼びますね。

 私の事も『母』と呼んで良いのですよ」


王族の思惑とかあるからまだわからないけど、お母様はラインハートのことを気に入って、本心からそう言ってくれているといいなぁ。


「駄目だ……いや、有り難いけど、俺の母は生みの親だけだから……」


遠くを見つめるラインハートは、寂しそうな目をしていた。


ラインハートの実母は彼を生んですぐに亡くなった。

彼は、親の顔も知らずに、離宮で一人で生きてきた。

可哀想なラインハート。私が癒してあげたい。


「生みの親は誰にとっても尊いもの。

 あなたの気持ちを尊重します。

 母と呼べだなど言った、自分が恥ずかしいですわ」


「いえ、第三王妃殿下……そんなことは」


「ですが、一緒に暮らすのに『第三王妃』ではいささか窮屈。

 これからは『ブレンダ』と呼んでください」


「……ブレンダ様」


ラインハートは素直に従っていた。

私の時と態度が違う。

年上のお姉さんに弱いのかな?


私だって前世の年齢を足したら、十分お姉さんなのに……。

お母様と、どこが違うというのかしら?

そこはかとなくジェラシーが……!

この気持ちをどこにぶつけたらいいの?



「ですが、俺はここに住むつもりはありません。

 第二離宮に帰ります」


ラインハートは、一礼し踵を返そうとした。私は彼の腕にしがみついた。


「駄目です!

 ラインハート兄様のお住まいは、第三離宮です!

 これはお父様が決めたことです!

 拒否権はありません!」


第二離宮ではお風呂の世話もされず、ご飯も与えられず、服は粗末な布の服しか用意されず、洗濯もされず、まともに教育も施されていなかった。

あんな場所には戻せないよ!


「俺にはこんなキラキラした空間似合わない!」


なるほど、ラインハートは、自分は第三離宮に相応しくないと思っているのね。


「ルーディーも俺と一緒に来るだろう?」


「嫌じゃ。

 我はこの屋敷でレイアと共に暮らす。

 隙間風が吹く廃墟同然の屋敷で、空腹に耐えながら、そなたと体を寄せ合って、寒さを凌ぐ生活には戻りとうない。

 使用人に囲まれ、上げ膳据え膳の生活がしたい」


ルーディーが私の足にピッタリとくっついて、尻尾を上げ体を擦り寄せてきた。


「裏切り者!」


「ラインハート兄様が第二離宮に帰るなるら、私もついていきます!」


「何言ってんだ!

 あそこはお前みたいなお姫様が住める所じゃない!」


「ラインハート兄様だって、王子様です!」


「俺とお前は違うだろ……」


ラインハートは苦しそうに眉根を寄せ、そう呟いた。


「兄様……?」


胸がぎゅっと締め付けられるみたいに痛い。

彼の苦しみを私はきっと半分も理解できていない。

知りたい、彼のことを。

彼の苦しみを半分背負ってあげたい!


パン……!

 

乾いた音がした。

振り返ると、母が両の手を打ち合わせていた。


「二人ともそこまでです。

 レイア、ラインハートの手を離しなさい」


「でも、お母様……」


「レイア」


「……わかりました」


母に無言の圧力をかけられ、手を離すしかなかった。


「ラインハート、あなたの気持ちを尊重します。

 無理にここに留めません」


「でも、お母様……!」


このままラインハートを返すのは心配だよ。


「ですが、私も陛下から信頼されあなたを預かった身。

 当屋敷に一晩も泊めずに返すわけには参りません。

 なので、私の顔を立て、一晩だけこの屋敷に滞在してください」


「まぁ……それくらいなら」


ラインハートは渋々といった表情で頷いた。


「では、決まりですね。

 ラインハートと神獣様の湯浴みの準備を。

 ラインハートの着替えも整えるように」


「承知いたしました」


母の傍に控えていた使用人が二人、お辞儀をして踵を返した。


「ちょっと待て……待ってください!

 風呂に入るなんて一言も……。

 それに着替えもいりません!」


「そうは参りません。

 客人をもてなすのは、この第二離宮の主である私の努め。

 当屋敷に泊まる以上、誰であっても決まりは守っていただきます」


「……」


さすがお母様!

無言の圧力で、ラインハートを従わせたわ!!


「ラインハートを湯殿に案内しなさい」


「承知いたしました」


「レイア、あなたもですよ。

 夕食の前に湯浴みなさい。

 泥だらけではありませんか」


母は私の服を見て、眉を顰めた。


今日は色々あったから、服が汚れてしまったようだ。


「はい、お母様。

 では、ラインハート兄様と一緒に……」 


子供同士だし一緒に入っても問題ないよね?


「はっ! お前まだそんなこといってるのか!?」


だが、ラインハートに全力で拒絶されてしまった。


「駄目に決まっているでしょう。

 別の湯殿を使いなさい。

 あなたときたら、慎みをどこに置いてきてたのですか?」


母は、疲れた様子で額を押さえていた。

慎みはおそらく前世に置いてきました。





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