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モブ王女に転生したら悪役王子の義兄に溺愛されました! 前世の推しを闇堕ちなんてさせない!  作者: まほりろ・コミカライズ配信中


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6話「初めて見た時から気になっていた天使のような可憐な少女は、俺の妹だった」ラインハート視点

※ラインハート視点を6話目に追加しました。

 昨日投稿した6話を7話と改めました。



――ラインハート視点――



俺が育ったのは、第二離宮と呼ばれる王宮内で一番寂れた場所だった。


生まれた時から母はいなく、侍女に育てられた。

侍女は仕事だから仕方なく、という感じで俺の世話をしていた。


住まいは汚くておんぼろで、満足な食事すら与えられなかった。

当然、教育係なんて大層なものがついているはずもない。


五歳か六歳になった頃、俺が「第二王子」という身分で、同い年の兄がいることを知った。


第一王子の名前はワグナー。


俺はワグナーに一ミリも興味がなく、別世界の人間だと思い関わらないようにしていた。


だが相手は違うようで、無駄に絡んできては自慢話をしてくる。

俺が無視すると、暴言や暴力が飛んできた。


やられっぱなしは癪なので、やられた分はやり返した。

そうしているうちに、どんどん嫌がらせはエスカレートしていった。


しかし、奴のお陰でわかったこともある。

俺のこの国での立場だ。


「お前は滅びた国の王女の息子!

 オレの母親は国で一番力のある公爵家の出身だ!

 お前とオレとでは同じ王子でも立場が違うんだよ!

 オレが豪華な宮殿で暮らし、お前がボロボロの離宮で暮らしてるのがその証拠だ!

 お前は父上に見捨てられたのだよ!」


ワグナーが言った言葉が胸に刺さった。


奴の言う通り、第二離宮の暮らしは酷いものだった。


外の壁はひび割れ、蔦が絡まり、庭には雑草が生い茂っていた。


隙間風が吹き、夏でも夜中は冷えた。

ベッドは固く、掛け布団も一枚しかない。

冬になっても薪は満足に支給されず、寒さで寝れなかった日は何度もある。


食事は固いパンと薄いスープだけ。

たまにスープに肉が入ってたらラッキーだと思った。


服はどこからか侍女が用意してきた古着だけ。


ワグナーが着ているピカピカな服とは比べ物にならないほど粗末だ。

いや、あいつの取り巻きが着てる服にすら遠く及ばない。


それでも、着る服があるだけマシだと思って我慢していた。


洗濯は週に一回だけ。


お風呂はないので、自主的に池で水浴びするしかなかった。








俺にもう一人きょうだいがいることを知ったのは、もう少しあとになってからだ。


王宮で初めてレイアを見た時、雷に打たれたような衝撃を受けた。

艷やかで豊かな長い栗色の髪、野イチゴのように真っ赤な瞳、肌は小麦みたいに真っ白だった。


あの時の胸の高鳴りを、今でもはっきりと覚えている。


俺は彼女の事を知りたくて、近くにいた兵士に少女の事を尋ねた。


「あれはレイア王女です。ラインハート殿下の母親違いの妹君ですよ」


腹違いの妹だと知った時の衝撃は、今でも忘れられない。


よりによって妹なんて……。


美しいドレスを纏い、使用人を何人も引き連れて歩く彼女に……俺は声をかけられなかった。


同じ男を父親に持っていても、古びれて汚れた服を着た俺と、高価な宝石を身に着けた彼女では住む世界が違いすぎる。


俺と彼女を隔てる壁は、余りにも大きかった。


だけど忘れることも諦めることも出来なくて、行き場のない感情がぐるぐると渦を巻き、俺を苦しめた。


関わらないと決めたはずなのに、目は自然と彼女を探してしまう。

偶然彼女を見つけた時は、顔が綻び、胸が高鳴った。


ただ遠くから見ているだけで良かった。


そうして見守っているうちに、レイアはワグナーとつるむことが増えた。

あんな奴と親しくしなくてもいいのに……。


レイアの隣に自然に立っているワグナーが羨ましかった。

胸の中に焦りや、苛立ちが募っていく。


ワグナーと過ごすうちに、レイアは悲しそうな表情をすることが増えた。


理由は直ぐにわかった。


レイアは、ワグナーに悪口を言われ傷ついていたのだ。

ワグナーの暴言に、じっと耐えている彼女を見るのは忍びなかった。


俺に出来るのは、レイアの代わりにワグナーを殴ることくらいだった。


だけど俺がワグナーを殴ると、ワグナーがストレスを溜めて、レイアへの当たりがさらに強くなる……という悪循環に陥っていた。

 






そんな日々がしばらく続いたある日、仔犬を見つけた。


仔犬の毛は元々は白だったんだろうが、泥などで汚れて所々茶色くなっていた。


犬は弱々しく鳴き、俺の足元に体を押し付けてきた。


汚れた体、行く場所がなく、寂しげな目をし、自分の力で生きていくこともできない。


余りにも自分の境遇が重なって、仔犬を放置できなかった。


だから、第二離宮に連れて帰り侍女に見つからないようにこっそり飼った。


ただでさえ少ない食事を犬と分け合ったので、前より空腹は増した。

その分、犬を布団に入れると一人で寝るよりあったかいので、心は満たされた。


誰かの温もりを感じて眠るのが、とても心地よかった。







ある日、犬が姿を消した。


俺は第二離宮中を探した。


建物の中も庭もくまなく探したが、犬の尻尾すら見つからなかった。


犬に名前を付けていなかったことを後悔した。


きっと、第二離宮の外に出たんだ!

そう気づいた時、俺は駆け出していた。


どうか無事でいてくれ!

あいつは俺に唯一温もりを与えてくれた存在なんだ!


城中を走り回った。

でも、どこにもいなくて……。

ようやく犬を見つけたのは、第一離宮の近くだった。


犬の傍らには、ワグナーと側近の二人とレイアがいた。


レイアが犬を守るように、犬の前に立ちふさがっていた。


大人しい女の子だと思っていたけど、こんなに勝ち気な一面があったんだな。


ワグナーは口ではレイアにかなわないと悟ったのか、棍棒でレイアに殴りかかった。


レイアが仔犬を守るように身をかがめた! 頼む、間に合ってくれ!


ワグナーが棍棒を振り下ろす前に、俺は奴の棍棒を掴むことができた。


ワグナーを締め上げると、奴らは泣きながら退散した。


あいつらは、弱い者いじめしかできないクズだ。


ワグナーへの仕返しはあとだ。

今はレイアと犬が心配だ。

さぞかし怯えているだろう。


だが俺の予想に反して、レイアは元気だった。


レイアの雰囲気がいつもと違うような気がする。

レイアは淑やかで大人しい子だと思っていたが、話してみると意外とそうではなかった。


俺は遠くから見つめていただけ。だからもしかしたら、これが彼女の素の性格なのかもしれない。


レイアは、俺がワグナーに絡まれていることを知りながら、大人に相談しなかったことを謝罪してくれた。


彼女自身がワグナーに虐められていたのだ。

自分の身も守れない人間が、誰かを守れるはずがない。

俺はレイアを責める気持ちなど、爪の先ほども持っていない。


気の利いた返事をしたかったが、レイアとの初めての会話に緊張して、上手く言葉が出てこない。

そのせいか、素っ気ない態度をとってしまった。


その後、犬の名前を聞かれた。


丸っこいから「ルー」でいいんじゃないかと言ったら、レイアはそんな適当な名前ではダメだと怒った。


レイアは「ルーディー」という名前をつけた。

古い言葉で「狼」という意味があるらしい。


ちゃんと教育を受けてるやつは賢いんだ。

年下の女の子が知っていることすら、知らない自分が恥ずかしかった。


第二離宮では勉強の時間なんてないので、俺は 文字すら満足に読めない。


兄妹なのに……。

凄く遠く感じる。


それに、俺の服……。

洗濯してないから臭いはずだ。

レイアと話せたのは嬉しいが、自分の格好がレイアと不釣り合い過ぎて、一緒にいるとどんどん惨めになる。


だけど、レイアは俺の傍に来ても顔をしかめることはなかった。

俺に触れることもためらわなかった。


彼女の瞳には、蔑みの色も、侮辱の色もない。

ただ愛情に満ちていて、誰かにこんな風に見つめられるのは初めてで、心がじんわりと暖かくなっていくのを感じる。


レイアは俺が想像していたよりずっとずっと良い子だった。


だが、距離が近い!


レイアにとっては兄の一人なんだろうが、こっちはまだ、妹と思えなくて戸惑ってるっていうのに!







この日は他にも色んなことがあった。


ルーディーは、なんと神獣だった。

しかも助けたお礼に加護の力を授けてくれるという。


レイアは癒しの力を、俺は炎の魔法を授かった。


レイアは癒やしの力でルーディーの怪我を治した。

凄い、こうしていると天使みたいだ!


俺もそんな凄い力を授かったんだろうか?

わくわくしながら手を伸ばし、「ファイア」と唱えた。


小さな火の玉が出て、すぐに消えてしまった。

ガッカリした気持ちを隠せず、思わず「しょぼっ……」と漏らしてしまう。


魔法の威力は訓練次第では強くなるようだ。

強くなりたい!

強くなって、レイアに近づきたい!









その後のことは、酷く疲れていてよく覚えてない。


ワグナーとの喧嘩のことで、謁見の間に連れて行かれた。


謁見の間に入ると、ワグナーと側近がいた。

その後ろに奴の親族らしい貴族がずらっと並んでいる。


皆、貴族が着る上等な服を纏っていた。

だけど俺が着ているのは汚れた古着だ。


部屋の奥に一段高くなった場所に、豪華な椅子が三つ並んでいた。

中央にいる茶髪のおっさんが国王で、その両隣にいるのが王妃なんだろう。


ワグナーの母親はすぐにわかった。奴と同じ赤い髪と茶色の目をしている。顔も凄く意地悪そうだ。


だとすると、反対側にいるのがレイアの母親だろう。

栗色の髪に真紅の目、優しそうな雰囲気がよく似ている。


国王は俺のことを、そのへんの石ころでも見るような目で眺めていた。

今まで俺に関心を示さなかった奴が、俺の味方をするとは思えない。


周囲から俺に突き刺さる視線が酷く冷たい……。


王宮のことに疎い俺でもわかる。

俺の格好は、この場にふさわしくない。

息が苦しい、酷く喉が乾く、胃がぎゅっと掴まれたみたいに痛い。


レイアはどうしているのだろう?

ふと隣を見ると、彼女は堂々とした態度で前を見据えていた。


レイアはお姫様なんだと痛感した。

彼女はこういう場所には慣れてるんだ。


同じ神獣の加護を受けて、レイアと距離が近づいた気がしたが……思い上がりだったようだ。


そんな俺の心に気づいたのか、 レイアは俺の手をギュッと握り「安心してください。私が守りますから」と囁いた。


レイアの方が年下なのに、俺よりしっかりしている。


「自分の身くらい自分で守れる」


俺は素っ気なく返すことしか出来なかった。


「……ありがとう」


俺はなんとか声を絞り出してそう伝えた。


「どういたしまして」


レイアは目を細め、穏やかに微笑んでいた。


もう息苦しさを感じない。

胃の痛みも消えた。

レイアのお陰だ。







レイアは言葉通り俺を守ってくれた。


ワグナーの嘘は、全てレイアに論破された。


ルーディーが神獣ということが分かり、国王や周りの貴族の態度が一変した。


ワグナーの嘘は暴かれ、第一王妃と共に謹慎処分を受けた。


余りにもくるくると状況が変わっていくので、俺はついて行けずにいた。


気がつけば、俺はレイアの母親の保護の元、第三離宮で暮らすことになっていた。


全部が終わったら、ルーディーと一緒に第二離宮に帰れると思っていた。

なんだか面倒なことになってしまった。






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