表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
モブ王女に転生したら悪役王子の義兄に溺愛されました! 前世の推しを闇堕ちなんてさせない!  作者: まほりろ・コミカライズ配信中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/13

4話「謁見なんて怖くない! お兄様は私が守ります!」



王宮の謁見の間には、豪華な装飾が施され、厳かな空気に包まれていた。


部屋の奥が一段高くなっていて、赤い絨毯が引かれている。

そこに、華美な装飾が施された椅子が三つ並んでいた。


中央に座っているのが現在の国王ジギフリッドだ。

栗色の髪を肩まで伸ばし、前髪を真ん中で分けたなかなかのイケオジだ。


向かって左側の椅子に腰掛けているのが、ワグナーの実母である第一王妃ゾルヴィックだ。

第一王妃は、真紅の髪をオールアップにし、吊り目がちな茶色の瞳の美人だ。

ワグナーの母親なので、彼女はとてもプライドが高く意地悪な性格をしている。


右側の椅子に座っているのが、第三王妃ブレンダ。

彼女は私の実母だ。

茶色の髪に赤い瞳をしている。

清楚でおっとりした雰囲気の美しい女性だ。


ジギフリッドは愚王ではないが、賢王でもない。その中間にいる至って普通の王様だ。

美人に弱く、女好きなのが欠点だ。


謁見の間には、他にも人がいた。


向かって右側にはワグナーの一族が、左側には私の一族がズラリと並んでいた。


今から戦争でも始めるかのように、皆厳しい表情をしている。


玉座に近い場所にワグナーが立っていた。

彼の背後には側近のゲロンとグスが控えている。


私はラインハートと共に、謁見の間の中奥を進み、国王の前に立った。

前と行っても、三メートルは離れている。


第一王妃派の冷たい視線が、私たちに集まる。

私には敵意を、ラインハートは孤児でも見るような目を向けている。


値踏みされているみたいで、気分が悪い。


横にいるラインハートを見ると、緊張しているのか、表情が堅かった。


同い年の男との喧嘩では負けなしでも、貴族や大人との政治的な駆け引きや口論の経験はないはず。

それに、離宮で暮らしてきた彼はこういう場に慣れていない。

なんの後ろ盾もない彼には、さぞ居心地が悪いことだろう。


こういうとき、豪華な服はそれなりに自分を守ってくれる。


私は濃い紺色のドレスを纏っている。

フリルやリボンが少ないシックなデザインのドレスだが、仕立てや素材は一流だ。

社交という名の闘技場で、十分に私を守ってくれる。


ラインハートが纏っているのは、謁見の間に相応しくない粗末な布の服。

これでは、鎧として役割は期待できない。


前世知識持ちで、こういう場に慣れてる、私がしっかりしないと!


私はラインハートの手を握りしめ、「安心してください。私が守りますから」と囁いた。


「自分の身くらい自分で守れる」


彼はそう素っ気なく呟くと、そっぽを向いてしまった。


彼の男としてのプライドを傷つけてしまったかしら?


「……ありがとう」


ラインハートがそっぽを向いたまま、ぼそっと呟いた。

どうやら、強がっていただけのようだ。


「どういたしまして」


ラインハートは素直でないけど、根はとてもいい子だ。

この子の心を、ワグナーの意地悪で歪ませたくない。


私は深呼吸して、まっすぐに国王の顔を見た。


「レイアです。

 ラインハート兄様と共に参りました。

 父上に置かれましては、ご機嫌も麗しく……」


「よい、堅苦しい挨拶は抜きだ。

 レイア、そしてラインハートよ。

 ここに呼ばれた意味はわかっているな?

 ……待て!

 なぜ謁見の間に犬がいる?

 なぜ連れてきた?」


国王は、私の腕の中にいるルーディーが気になったようだ。


左手はラインハートと繋いでいるので、右手だけでルーディーを抱っこしている状態だ。


「此度、ワグナー兄様と揉めた原因ですので連れて参りました」


「なるほど、事件の当事者と言うわけか」


「父上、あのバカ犬がオレの手を噛んだのです!

 だからオレは犬にお仕置きしようとしたんです!

 そうしたら、レイアが邪魔をして、ラインハートがオレを殴ったんです!」


ワグナーの奴、よくそんな嘘を並べられたわね!


だが、第一王妃ゾルヴィックと、彼女の派閥の貴族は、「なんと酷い」、「第二王子殿下は凶暴だ」、「犬は処刑すべきだ」と彼の意見を指示していた。


ワグナー単独ならいざ知らず、オマケがついてるのは厄介だわ。


「ワグナー、余はまだ発言を許していない。

 口を慎め」


「……すみません」


国王に叱られると思っていなかったのか、ワグナーは体を縮こまらせていた。

今のところ、国王は中立の立場のようね。


「素行の悪いラインハートはともかく、お淑やかなレイアがそのような行動に出るとは思えん。

 レイア、理由があるなら申してみよ」


こういうとき、日頃の行いがものを言うようね。

記憶が戻る前のレイアが、お淑やかな性格だったことに感謝しましょう。


「恐れながら、ワグナー兄様の発言は真っ赤な嘘です。

 仔犬はワグナー兄様を噛んでなどいません。

 ワグナー兄様は何もしていない仔犬を、側近の二人に命じ棍棒で殴りつけていました。

 だから、だから私は仔犬を庇ったのです」


室内がざわついた。

ワグナーは苛立った表情で唇を噛み、ゲロンとグスは真っ青な顔で震えている。


「ワグナー兄様は、私のこともことも棍棒で殴ろうとしました。

 ラインハート兄様は、ワグナー兄様から棍棒を取り上げ、私と仔犬を助けてくれたのです」


室内が再びざわついた。


「なんと恐ろしい」、「無抵抗な仔犬とレイア王女を武器で殴りつけるとは……!」、「ワグナー殿下の王族の資質を問うべきですな!」……私の母方の貴族が割と大きな声でワグナーを避難している。

援護射撃ありがとう!


ワグナー&第一王妃派の貴族は、苦虫を噛み潰したような顔をしている。


「ラインハート兄様は、ワグナー兄様を脅しただけです。

 殴っていません」


ちょっと腕をねじり上げたりはしたけど……。そのことは黙っておこう。


「それが事実なら、処罰を受けるのはワグナーの方だな」


国王がじろりと、ワグナーを睨めつけた。


「で、でたらめです!

 レイアが嘘をついてるのです!」


ワグナーは事実を認める気はなさそうだ。


「酷いぞ、レイア!

 引っ込み思案のお前を可愛がり、面倒を見てきたというのに、そのオレを陥れるというのか!?

 お前には兄妹の絆はないのか?」


そんな気色悪いもの、ワグナーとの間にあってたまるものですか!


「ワグナー殿下とレイア王女は仲が良かったはず。

 その殿下が、大切な妹君にそのような事をするとは思えませんな」


第一王妃派の貴族がワグナーを援護した。


「その件に関しては余も引っかかっておる。

 ワグナーはレイアの面倒をよく見る、良き兄だと認識していた。

 そのワグナーが、そなたになぜ暴力を振るおうとしたのだ?」


国王にもそんなふうに見えていたのね。

今こそ、彼らの認識を正すときだわ。


「ワグナー兄様が私を可愛がったことなど、一度もありません。

 彼は、私の自尊心を砕き、言葉の暴力を振るい、恐怖で支配していました。

 ワグナー兄様が私を連れて歩いていたのは、『妹を大切にする良き兄』を演じ、周囲の好感度を操作するためです」


やっと言えたわ。

記憶が戻る前のレイアが怖くて言えなかったことを、国王に伝えられた。


「それから、ワグナー兄様の側近の二人は私に好意を持っていました。

 ワグナー兄様はその気持ちを利用していたのです。

 『レイアが見てるぞ、臆病者だと思われてもいいのか? オレの命令に従え!』

 そう言って、ワグナー兄様が側近に無茶な命令をしているを何度も聞きました」


国王は真実を知り驚いた顔をしていた。

彼はワグナーを厳しい表情で睨めつけた。


ワグナーは、唇を噛み、冷や汗を流している。


「で、でたらめだ!

 レイアはオレを陥れようとしてるんだ!」


ワグナーは、意地でも自分の非を認めないようね。


「お父様、私が申し上げたことは全て事実です。

 ワグナー兄様の横暴はこれだけには留まりません。

 ワグナー兄様は、ラインハート兄様に難癖を付けては暴力を振るっていました。

 ラインハート兄様がワグナー兄様に暴力を振るったのは、自分の身を守るため。

 正当防衛です」


ラインハート兄様の汚名もしっかり返上しておかないとね。


「私はワグナー兄様の非道な行いの数々を、全て見ていました。

 でも……今までは、ワグナー兄様のことが怖くて何もできませんでした」


もう気弱な頃の私とは違う。

前世の記憶が戻ったからには、ワグナーの好きにはさせないわ。


「ですが、この度のことは見過ごせませんでした。

 ワグナー兄様が仔犬に暴力を振るったのは、ラインハート兄様への仕返しのため。

 ラインハート兄様が可愛がっている仔犬と知って、棍棒で殴りつけたのです。

 復讐の為に、いたいけな仔犬を利用するなんて許せませんでした」


私はキッとワグナーを睨めつける。

 

「私がこの場で申したことは全て真実です!

 お父様、信じてください!

 悪いのは全部、ワグナー兄様です!」


私は瞳に涙をたたえ、国王を見つめた。

国王にとって私は唯一の娘。

可愛い我がこのつぶらな瞳攻撃届いて……!


「嘘をつくな!

 オレはそんな卑劣な人間じゃない!」


唾を飛ばしながら、ワグナーが叫ぶ。

諦めの悪い男ね。

こいつの心をベコベコにへし折って、泣きながら謝罪させたいわ。


その時、思わぬところから援護が入った。


「レイアが言ったことは、本当です」


横を見ると、ラインハートが真っ直ぐに国王を見据えていた。


「俺は、ワグナーがレイアを虐めているところを何度も見ました。

 今日だって、奴がレイアを棍棒で殴ろうとしたから、止めに入ったんです」


こういう場に慣れてなくて、怖いはずなのに……。

私の為に……。


「俺が過去にワグナーに暴力を振るったことがあるのは認めます。

 だけど、それは相手が先に手を出したからです」


彼を守る筈だったのに、今は私が守られている。


「父上、ラインハートの証言など信じないでください!

 奴の母親は滅びた国の卑しい女……ひっ!」


ワグナーは言いかけた言葉を呑み込んだ。

ラインハートが鋭い目つきで、ワグナーを睨んだからだ。


「我も証言しよう。

 この二人は無実だ」


「誰だ!

 今発言した奴は!

 『我』なんて偉そうに!」


ワグナーが眉間にしわを寄せ、周囲を確認している。


「ここだよ。

 我も当事者なのでな発言させてもらった」


謁見の間が、一瞬水を打ったような静寂に包まれた。


「い、犬が喋った!!」


しばらくのち、室内はパニックに陥った。


「……黙っていた方が、良かったのう」


テヘッという効果音が付きそうなあどけない顔で、ルーディーが申し訳なさそうに呟いた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ