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モブ王女に転生したら悪役王子の義兄に溺愛されました! 前世の推しを闇堕ちなんてさせない!  作者: まほりろ・コミカライズ配信中


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26話「レイアの悲鳴と大会のルール」




一回戦・一試合目


いきなりラインハートの試合だわ!


相手は騎士団に所属していて、ラインハートよりも三歳年上で、体もガッチリしている。

いきなり体格差がある相手だけど大丈夫かしら?


対戦相手は「こんなちび楽勝だぜ!」みたいな顔で、薄ら笑いを浮かべラインハートを見下ろしている。


ラインハートは開始の合図と共に斬り掛かった!


相手はラインハートの速さに目を見張っている!

相手が剣を振り下ろす隙を与えず、ラインハートは喉元に剣を突きつけた。


かっこいい!!


「きゃーー! ラインハート兄様! 素敵ーー!」


思わず立ち上がり叫んでしまった。


「レイア」


お母様の冷ややかな視線が突き刺さる。


「すみません、つい」


私は席に座り直した。


大勢の観客の前で、緊張してるかと心配していたけど。

ラインハートは普段通りね。

むしろ、いつもより動きに切れがあるわ。 






一回戦五試合目は、クロードの試合だ。

対戦相手の少年は、出場する騎士の中で二番目に強い人だわ!


きっとクロードでも苦戦するわ。

戦いが長引けば、クロードの戦い方がわかるかも!?


「そこまで! 勝者クロード殿下!」


対戦相手の剣は場外に飛ばされ、床に尻餅をつき、降参のポーズをとっていた。


瞬きしている間の出来事だった。


彼の強さは想像以上だわ……!


試合を終えたクロードは、涼しい顔で武舞台を降りていく。

髪型一つ乱れていない。

圧倒的な強者のオーラだわ。


ラインハートは彼に勝てるのかしら?


私が信じてなくてどうするのよ!

ラインハートは誰にも負けないんだから!





ついでにワグナーの試合結果も報告しておこう。

彼は一回戦で、靴の紐を踏んで転んで剣が場外に飛んでいき、戦わずに負けた。

あんな無様な負け方は見たことないわ。


あれと半分でも血が繋がっているのかと思うと、げんなりするわ。


ちなみに第一王妃は……。

「きーー! 審判はどこに目をつけてしているの! ワグナーは負けてないわ! 対戦相手がずるしたのよ! 対戦相手の親は左遷よ! 審判は首よ!」

パワハラ発言を連発していた。







準決勝。


ラインハートもクロードも順調に勝ち進んでいる。


ラインハートのファンは確実にファンを増やし、彼が闘技場に上がると会場のあちこちから黄色い歓声が上がった。


それは第一試合のときよりも確実に大きくなっていた。


ラインハートのかっこよさに、皆が気づいてくれて嬉しいわ。


彼のファンとしても妹としても誇らしく思う。


もう離宮で一人寂しく過ごしていた頃の彼はいないのね。

そう思うと感動で胸が震えた。 


「勝負あり! 勝者、クロード殿下!」


先に決勝進出を決めたのはクロードだった。


さすがと言うか何と言うか、クロードは全ての試合を一分以内に終えている。

彼の額には汗すら浮かんでいない。


相手も弱いわけではないのに……。

彼の強さは桁外れだわ。







次はラインハートの試合ね!

しっかり応援しなくちゃ!


ラインハートの決勝戦の相手は、第五騎士団長の息子ベアントだった。

彼はラインハートとクロードを除いた出場選手の中で、一番強いと言われている。


ちなみに私とラインハートの剣術の先生は、第一騎士団の隊長なのでベアントとは無関係だ。


ベアントは背も高いし、腕も太く、力も強い。

対戦前に中央で向かい合った時の体格差は、大人と子供だ。


試合開始を告げるドラが鳴り響き、両者が激突する。


今までの試合は、ラインハートが圧勝してきた。

だけど、今回はそうはいかないようね。


武舞台の中央で一進一退の攻防が続いている。

両者の力は拮抗しているみたい。


「兄様……!」


私にはハラハラしながら試合の行方を見守ることしかできない。


このあと決勝が控えているから、お互いに体力を消耗したくないはず。

その焦りからか、ベアントが大ぶりの一撃を繰り出した。


あの体格から繰り出された技をまともに食らったら、ラインハートが大怪我してしまうわ!


「避けて兄様!!」


ラインハートはすれすれのところで攻撃を躱し、間髪入れず相手の胴に一撃を入れた。


「そこまで! 勝者、ラインハート殿下!」


会場が一瞬の静けさに包まれ、その数秒後に歓声に包まれた!


「やったわ! 兄様が勝ったわ!!」


私も立ち上がり、力の限り叫んでいた。

お母様が何か言ってるけど、もう聞こえない。


ベアントがよろよろ立ち上がる。

彼は眉間にしわを寄せ、悔しそうに唇を噛んでいた。


「くそがっ!!」


ベアントが木刀を力いっぱい床に叩きつけた。


叩きつけられた衝撃で木刀は二つに折れ、切っ先がラインハートに向かって飛んでいく!


ラインハートは背後から飛んでくる木片に気付かない!


バキッ! という鈍い音のあと、ラインハートが肩を抑え床に膝をついた。


観客席がどよめきに包まれた。


「ラインハート兄様!!」


私はいても立ってもいられず、ボックス席の仕切りまで走った。


ライフハートは右肩を押さえたまま動かない。

よりによって、利き腕だわ!


「どうしよう! 兄様の怪我は重いんだわ!!」


ベアントは係の人に取り押さえられ、退場した。


ベアントの馬鹿! マナーが悪すぎよ!!

あらゆる大会に一生出場禁止よ!

騎士団から永久に追放よ!!


「私が回復魔法をかければ、兄様を助けられるわ……!」


「なりません、レイア!」


扉を開けようとする私の手を、お母様が掴んだ。


「お母様、どうして止めるのですか!?

 兄様が怪我をしているのに!」


遠目にもわかるくらい、ラインハートは苦しそうな顔をしている。

このままじゃ、次の試合に出れないよ!


決勝の相手はクロードなのだ。

万全の状態でも勝てるかどうかわからない。

利き腕を怪我してたら、勝負にすらならない。


今すぐ治療しないと!


「試合中の怪我は、医務官による治療のみが認められています。

 これが大会のルールです」


「そんな……!」


「決勝まで怪我をせず勝ち残るのも強さの証。

 怪我をするということは、それまでということです」


「それはあんまりです!

 ラインハート兄様の怪我は試合中のものではありません!

 試合が終わった後、相手の選手によるもので……いわば事故です!」


試合中に油断をして怪我をしたのなら、私だって諦めがつく。

相手の選手がしたことは、明らかなルール違反だ。


「不慮の事故による怪我を、兄様の責任にするのはおかしいです!」


「もちろん相手の選手には厳しい罰を与えます」


相手に罰を与えてもラインハートの怪我は治らないわ。


「王族としてルールは守らなくてはいけません。

 そうでなくては、秩序が保たれません」


お母様の顔にいつもの穏やかさはなく、王妃としての威厳に満ちた目をしていた。


「あなたがラインハートに回復魔法をかけたら、彼はその時点で失格。

 クロード殿の優勝が決まります」


利き腕を怪我してたら、勝負にすらならないよ……!

でも、回復魔法で治療したら失格になっちゃう……!


涙が溢れてきた。

ラインハートはあんなに訓練を頑張ったのに……!

せっかく決勝まで勝ち進んだのに……!


全力も出せないなんて……!

こんなのあんまりだよ……!





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