23話「苛つきが止まらない! 恋のライバルはキザな王太子!?」ラインハート視点
――ラインハート視点――
その日、俺は朝からイラついていた。
隣国の王太子の来訪に備え準備で使用人は忙しそうにしていた。
侍女達は髪型やメイクを整えるのに忙しいようだ。
女性は老若問わずそわそわしていた。
他の奴はどうでもいい。
俺が苛つく理由はレイアだ。
レイアはわざわざ昼間から風呂に入り、入念に支度を整えていた。
半年前、レイアに言われたことを思い出すと今でもムカムカする。
『現状、兄様がクロード殿下に勝てるところはひとつもありませんわ』
顔も見たことのない王太子が、そんなにいいっていうのかよ!
絶対に剣術大会で優勝して、俺の方が上だってレイアに認めさせてやる!
◆
隣国の王太子を迎える為、謁見の間に向かった。
ここに来るのは一年ぶりだ。
あの時は緊張で何も出来なかった。
もうあの頃の俺じゃない。
沢山知識を吸収し、マナーも身に着けた。
剣の腕も磨いた。
堂々とレイアの隣に立てる。
謁見の間にクロードが入ってくると、侍女や女性文官が「はぁ〜〜」とため息を付き、頬を染めた。
クロードは金色の髪に青い目をしていた。
絵本に出てくる王子様そのものといった感じだ。
奴の動きは洗練されていた。
ただ歩いているだけなのに、周囲が魅了されていく。
指一本動かすのにも品がある。
これが生まれながらの王子様が持つオーラなのか……?
レイアまで奴に夢中になったら……!
不安にかられ隣を見る。
レイアは、観察するようにクロードを眺めていた。
侍女のように目をハートにしているわけではないが、奴に興味があるようだ。
もやもやする!
クロードはレイアの前を通る時、一度足を止め、彼女を見つめにこりと笑った。
いちいちキザな野郎だ!
気に入らない!
国王から大会の報酬の話が出たとき、クロードの目の色が変わった。
奴は振り返り、欲を宿した瞳でレイアを見た。
俺はレイアの前に立ち、奴の視線を遮った。
奴はそんな俺を冷ややかに笑い、視線を前に戻した。
腹立つ! 何なんだあの嫌味な男は!
国王や王妃との挨拶が終わると、クロードは俺達の前に来て、一人ひとりに挨拶をしていった。
クロードはレイアの前に立つと、気取った笑顔をたたえ「庭を案内してほしい」と願い出た。
レイアは当然断ると思っていた。なのに彼女は笑顔で奴の申し出を引き受けた。
ショックだ! レイアも侍女のように、すかした王子に心酔しているのか!?
クロードがレイアの手を握り、指を絡めた!
初対面の相手に取る態度じゃない!
俺はレイアの肩を抱き寄せ、奴の腕を力を込めて握り締めた。
かなり力を入れたのに、奴は涼しい顔をしていた。レイアから手を離す気配はない。
レイアは俺と結婚するんだ!
ぽっとでの王子に渡すもんか!
謁見の間で奴と睨み合っていたら、国王に二人でクロードに庭を案内するように言われてしまった。
◆
庭を散策してる間、クロードはレイアの手を馴れ馴れしく握っていた。
レイアもそれを振りほどこうとはしなかった。
レイアはこのキザ男が気になるのか?
恋をしているのか……?
どんどん焦りと苛立ちが募っていく。
噴水にたどり着くと、クロードはお茶会を提案した。
従者に組み立て式のテーブルや椅子を持ち運びさせるなんて、手が込んでいる。
レイアはこの場は自分に任せ、俺には稽古に行けと言う。
クロードと二人きりになりたいのか?
もやもやとムカムカが同時に襲ってきて、どうにかなりそうだった!
クロードがレイアに気があるのは明白。
なのにレイアは、そのことに全く気づいてない!
惚れたひいき目を抜きにしても、レイアは世界一可愛い!
最近は背が伸びて大人っぽくなって、純粋さの中に色気も混じって、以前よりも魅力が増している!
部屋に閉じ込めて、俺以外の男に見せたくないくらいだ!
レイアは自分の魅力に気づいてない!
彼女を一人残して帰ったら、クロードに何をされるかわかったもんじゃない!
それなのにレイアは「お帰りになるなら、兄様お一人で帰ってください」なんて冷たい事を言う。
クロードが来てから、レイアとの間に溝ができた気がする。
いや、その前からだ。
クロードの来訪が決まった時からだ。
レイアから奴の名前を聞きたくない。
レイアの視界にあいつを入れたくない!
◆
さらに腹が立つことに、クロードは俺がレイアの自由を奪っていると決めつけ、レイアを自分の国に招待したいと言い出した。
短期的な訪問ではなく、長期的な留学の申し出だ。
あり得ない!
初対面の相手にグイグイ迫ってくる女たらしがいる国に、大切なレイアを留学させられるか!
奴は、俺の耳元で「僕は剣術大会の優勝の褒美にレイア王女との婚約を望んでいます」と言ってきた。
はぁぁぁあ!?
そんなこと許せるわけないだろ!!
レイアを一番近くで見てきたの俺だ!
今日会ったばかりの奴に、レイアの何がわかるって言うんだ!
絶対にレイアは渡さない!
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