20話「クロードのお迎え。礼服を汚した事でお母様がカンカンです」
――レイア視点――
月日は流れ、ラインハートと同居してから一年が経過した。
私は十一歳、ライハートは十二歳になった。
ラインハートは背が伸び、逞しく凛々しく成長している。
彼のファンの侍女は増える一方だ。
私も背が伸び、他のところも色々成長した。
「大人っぽくなった」、「黙っていれば淑女に見える」と言われることも増えた。
「黙っていれば」は余計よ。
某箇所が現時点で前世より大きい気がするんだけど……。
この世界の子は成長が早いわ。
決して前世の私がまな板だったわけでは……!
今日はクロードが来訪する日。
クロードが国王に謁見するので、王族全員で出迎えることになった。
謁見の場に、皆が集まるのは一年振りね。
皆、この日の為に新しい礼服を仕立てたようね。
ワグナーと第一王妃は謹慎が解けて初めての公務だ。
相変わらず二人とも派手な服装だわ。目がチカチカする。
ラインハート兄様は黒地に赤の差し色を使ったジュストコールを纏っている。
素敵だわ。
そう言えば、彼は赤を差し色に使った服を着ることが多いわ。
赤が好きなのかしら?
私も白地に金の刺繍のあるドレスを新調した。
本当は、桃色のドレスを着るはずだったんだけど……ルーディーと遊んでいて汚してしまったのよね。
お出迎え用のドレスを汚してしまったので、お母様にものすごく怒られたわ。
髪も泥だらけだったので、謁見の前にシャワーを浴びた。
「隣国の王太子を迎えるのに、そこまでするのか!?」
お風呂場の前でラインハートとばったり遭遇。
彼に怪訝な顔で睨まれてしまった。
「あいつの為におしゃれするのも気に入らないのに……!
謁見前に風呂に入るなんて……!」
私が「クロードが一番」と言ってから、ラインハートはクロードを敵視している。
別にクロードの為にしてるわけではないんだけど……。
でも説明して、彼の闘志を削ぐわけにはいかないわ!
これも剣術大会が終わるまでの我慢よ、心を鬼にしないと!
剣術大会が終わったら、ラインハートとまったり過ごしたいわ。
◆
玉座には国王が、向かって左側に第一王妃が、向かって右側にお母様が座っている。
この辺の配置は以前と同じね。
私たちは玉座の向かって左側に、縦一列に並ばされている。
玉座に一番近い位置に長男のワグナー、二番目に次男のラインハート、末っ子の私は一番端だ。
椅子はないので、立ったまま過ごさなくてはいけない。
ヒールには慣れたけど、長時間姿勢を崩さずに立ってるのはしんどいわ。
「グリューン王国、クロード王太子殿下がおいでになりました!」
高らかにラッパが鳴り響き、侍従長がクロードの来訪を告げた。
ゆっくりと扉が開き、クロードが入ってきた。
金色の髪に青い瞳、画用紙のように真っ白な肌に、水色と白を基調としたジュストコール。
小説の挿絵で見たクロードと全く同じだわ。
眉目秀麗な少年の登場に、隅に控えていた女性文官からため息が漏れる。
小説のクロードのことは嫌いではなかった。
だけど、実物を見ても何も感じない。
ラインハートと出会った時は、胸の奥を矢でいられるような衝撃を受けたのに。
小説の登場人物に会ったらもっと感銘を受けると思ってたけど……実際はこんなものなのかも。
やはり私の推しはラインハートだけね!
ラインハートは、鋭い目つきでクロードを見据えていた。
今から敵意がむき出しね。
ラインハートは、半年間みっちり修行し、騎士団長を負かすまでに成長した!
これなら、クロードにだって負けないわ!
ちなみに、私の出場は認めてもらえなかった。
「王女がそのような大会に出て怪我をしたらどうする」というのが国王の言い分だ。
怪我をしたルーディーに治してもらうから、別にいいのに。
その上、面倒なことを押し付けられてしまった……。
礼服を汚してしまったことで、お母様がカンカン。
罰として、クロードに庭を案内することになってしまった。
それをやらないと明日の剣術大会を見物させてもらえない。
大会の為に色々と頑張って来たのに……!
ラインハートの勇姿が見られないなんて、そんなの無理!!
謁見のあとラインハートの稽古を見学して、明日の大会の準備を手伝う予定だったのに〜〜!
さくさくクロードに庭を案内して、稽古場に向かわないと!!
クロードが私の前を通り過ぎたとき、彼と目が合った。
彼のサファイアブルーの瞳が、私を真っ直ぐに見据えている。
私の顔になにか付いてるのかしら?
クロードはにっこりと微笑んだあと、視線を前に戻し玉座へと歩いて行った。
今のは何だったのかしら?
隣を見ると、ラインハートが額に青筋を浮かべ、クロードに刺すような視線を送っていた。
彼が犬だったら、クロードに噛みついていたわね。




