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モブ王女に転生したら悪役王子の義兄に溺愛されました! 前世の推しを闇堕ちなんてさせない!  作者: まほりろ・コミカライズ配信中


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19話「完全無欠の光属性の王太子も、結局はおもしれー女に弱い!?」クロード視点



 

――クロード視点――


 

僕の名前はクロード。

グリューン王国の王太子だ。


自分でいうのもなんだが、武術の学問も容姿も人より優れている自覚はある。


人々は僕が何かやるたびに、大げさに褒め称えた。


誰も彼もが、王族と縁を作ろうと作り笑いを浮かべて近づいてきては、おべっかを並べていく。

正直そういう連中には飽き飽きしている。

いつの頃からか、彼等を適当にあしらう術が身に付いていた。


退屈だ。


欲深い貴族にも、愛想笑いを「天使の微笑み」と称える令嬢にも、「天才」「鬼才」と持ち上げるだけの令息にも、うんざりだ。


何をやっても人より成果を出せてしまう。


何か予想もつかない、人の手では想像もつかないようなことでも起きて、僕を楽しませてくれないだろうか?

 






「クロード殿下、半年後にハーフェン王国へ外交のため赴くことになりました」


剣の訓練をしながら、侍従の話に耳を傾けた。


「ハーフェン王国には王子が二人、王女が一人いたよね?」


「ご指摘の通り、彼の国には第一王子のワグナー殿下と、第二王子のラインハート殿下がおります。

 二人の王子はクロード殿下と同じ歳。

 レイア王女は一つ年下です」


歳の近い王女がいるのか。

婚約の打診をされると面倒だな。


外交に赴く度に「家の王女を嫁に」という話をされる。

うんざりだ。


「確か第二王子のラインハート殿は国王に冷遇されていたはず。

 親交を深めるのは、第一王子のワグナー殿とレイア王女だけでいいな」


おそらく、次の国王はワグナー殿。

限られた滞在時間の中で、冷遇されている王子に構うこともないだろう。


「いえ、親交を深めるならラインハート殿下になさるべきです」


「なぜだ?」


「つい先日、ラインハート殿下とレイア王女は神獣の加護を授かったそうです」


「神獣……!?

 そんなものが本当にいるの?」


「はい、確かな情報にございます」


神獣など古文書の中にしか存在しないと思っていた。

まさか実在していたとはな。


「ラインハート殿下は炎の魔法を、レイア王女は癒しの力を、神獣から授かったそうにございます」


癒しの力は、伝説の聖女しか持たないと伝えられる貴重な力だ。


そのような力を、一国の王女が授かったというのか?


父上が此度の外交を決めた理由がわかった。

神獣の加護を持つ王女の心を射止めろということだろ。


結婚相手ぐらい自分で決めたい。


控えめでお淑やかに見えるのは表面だけ。

裏ではライバルを蹴落とす為に爪を研ぎ、卑劣な噂話で相手を蹴落とし、己の権力を誇示する。

猛獣や毒蛇よりも恐ろしい魔物の群れ。

……そんな令嬢との付き合いは、社交の場だけで十分だ。


プライベートの空間は、心の安らげる者と過ごしたい。

裏表のない素朴で可憐な少女と結婚したい。


だが、王太子である以上それは叶わぬ夢。


「ラインハート殿下はそれまでは冷遇されていたそうですが、精霊の加護を受けてからはレイア王女の暮らす第三離宮に移り、王族としての教育を受けているそうにございます」


「なるほど」


精霊の加護を受けた第二王子か。


「親交を深めるべきは、ワグナー殿より、ラインハート殿とレイア王女のようだな」


二人のどちらが王位を継いでも問題ないように、関係を築いておこう。


「第二王子はどれほどの強さを持っているのか。

 剣術大会で手合わせが楽しみだ」






◆◆◆◆◆◆




――半年後――




ハーフェン王国は緑の豊かな平穏な国。

グリーン王国より面積は小さく国民の数も少ない。

騎士の士気も低く、文化も遅れている。


しかし侮ってはいけない。

王子と姫が神獣の加護を授かった国なのだから。


滞在中、僕たちは離宮に泊まることになった。


神獣をこの目で見ておきたい。


第二王子とレイア王女には謁見で会えるが、神獣にはお目にかかることが叶わないかもしれない。


僕は従者の目を盗み、離宮を抜け出した。


「確か、神獣は第二王子やレイア王女と共に第三離宮に住んでいたはず……」


王宮内の地図を頭の中に描き、僕は目的地を目指した。


「あれが第三離宮か」


生い茂る木の向こうに、建物の屋根が見える。


その時、茂みの奥から甲高い笑い声と犬の鳴き声がした。


もしかしたら神獣とレイア王女かもしれない。


足音を殺し忍び寄り、そっと木の影から覗いた。


芝生の引き詰められたよく手入れされた庭、そこに一人と一匹の人影が見える。


桃色のドレスを纏った十歳くらいの少女と仔犬。


少女は栗色の髪に赤い瞳をしていた。レイア王女の特徴と一致している。


あれがレイア王女なら、傍にいるのが神獣か?


神獣は白い毛で仔犬のような姿をしているという。

確か名前は……。


「ルーディー、飛びついては駄目よ。

 ドレスが汚れてしまうわ」


「レイア、我はもっと遊びたいぞ!」


そう、ルーディー!

人語を話す獣! 間違いないあれが神獣だ!


古文書とだいぶ違うな。

聡明な瞳と美しい毛並みを持つ、狼のような姿を想像していたのだが……。


王女とじゃれる姿は、そのへんの犬となんら変わらない。


もしかしたら人の心を試すために、あのような姿をしているのかもしれない。


……神獣より、傍にいる少女に目がいってしまう。


レイア王女は、お淑やかだと聞いていたが……。


王女は栗色の髪をたなびかせ庭を走り回り、時には神獣と共に芝生の上を転げ回っていた。


とても、つつしみ深いようには見えない。

だが、そんなことはどうでも良くなるくらい、彼女の笑顔は眩しかった。


ルビーのように赤く美しい瞳、無邪気に笑うあどけない顔、元気いっぱいに走り回る姿、彼女から目が離せない……!


王族にもあのような無垢な少女がいたんだな。


その時、強い風が吹き彼女のスカートがふわりと揺れた!


僕はとっさに目を逸らした。

茂みの中から女性のスカートの中を覗くなんて……! 僕のやってることは変質者と同じじゃないか!!


レイア王女のことがますます頭から離れなくなってしまった!


彼女と言葉を交わし、お茶を飲み、ダンスを踊りたい!


なぜだろう、彼女を見ていると心臓の鼓動が早くなる。


護衛とはぐれキメラ三体と遭遇した時ですら、冷静さを失わなかったのに!


顔に熱が集まってくる……!

息が上手く吸えず、胸が苦しい……!


僕はどうしてしまったんだ!?




※補足

 ルーディーが仔犬な理由。

 一年経過してもルーディーが仔犬の姿なのは、普通の犬とは成長速度が違うからです。

 クロード視点では説明できませんでした。

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