14話「ラインハートの決意!」ラインハート視点
――ラインハート視点――
侍女が退室したあとも、俺はしばらくその場を動けなかった。
母親のこと。
国王と血の繋がりがないこと。
それから、レイアとの結婚のこと……。
情報量が多くて上手く整理できなかった。
二週間前まで、俺はレイアのことを清楚で可憐なお姫様だと思っていた。
でも、実際に話してみたらイメージとかけ離れていた。
強引で、距離感がバグってて、大胆で、無防備で、お転婆で……心が暖かくて、優しい目をしていた。
それに、俺のことを誰よりも考えていてくれた。
気がついたら以前よりも好きになってた。
何度も気持ちに蓋をしようとした。
でも無理だった。
俺とレイアの間に血の繋がりはない。
……もうレイアへの気持ちを我慢しなくてもいいのか?
周囲も俺とレイアの結婚を周囲が望んでいる。
レイアに恋しても……結婚してもいいのか?
彼女への思いが日に日に募っていく。
今までのように、遠くから見ているだけでは満足できない。
俺はレイアを愛している。
国王の策略にハマるのは癪だが、レイアと結婚できるなら奴のことも利用してやる。
もう、自分の気持ちを抑えたりしない。
「妹だから」と自分に言い聞かせて、距離を取ったりしない。
◆
だけど、そのためにはクリアしなくてはいけない課題が沢山ある。
今の俺ではレイアに相応しくない。
レイアと結婚するということは、国王もしくは王配になるということだ。
文字の読み書きはもちろん、色んな知識や作法を身に着けなくてはならない。
それから、彼女を守る為には力も必要だ。
剣術や魔法についても学びたい。
教育係から逃げているようでは、レイアと結婚するなんて夢のまた夢だ。
決めた! 俺はもう逃げない!
レイアと結婚する為なら何でもする!
◆
洗濯室から出て廊下を歩いていると、レイアの後ろ姿が見えた。
まだ俺のことを探していてくれたんだな。
彼女の後ろ姿がいつもより愛しく思えた。
俺とレイアに血の繋がりはない。
もう、気持ちを押し殺さなくていいんだ。
そう思うと、不思議と胸の奥が熱くなった。
「レイア!」
俺が呼びかけると、彼女はうさぎのように耳をピクッとさせ振り返った。
彼女の栗色の髪がふわりと広がり、思わず見惚れてしまう。
レイアの動きだけがゆっくりと見える。
俺に気づいた彼女が、顔を綻ばせる。
俺は彼女の表情の変化に瞬きを忘れる。
彼女はぴょんぴょんと跳ねるように駆けてきて、俺の目の前で止まった。
「ラインハート兄様!
どこに行ってたんですか!?
あちこち探したんですよ!」
レイアはほっぺを膨らませ、俺を睨んだ。
そんな顔も可愛い。
「授業から逃げ出すなんて……。
教育係の先生がカンカンでしたよ!」
「すまない」
「一緒に謝ってあげますから、一緒に……!
ちょっ……兄様!?」
俺はレイアの腕を掴み抱き寄せた。
「兄妹とはいえ、いきなり抱き寄せるのはマナー違反ですよ!」
「レイアだって不意打ちで俺に抱きついてくるだろ?
だからおあいこ」
「そうですが、今は大事な話を……」
「わかった」
俺は腕をほどき、彼女を解放した。
レイアに照れている様子はない。
俺ばかりドキドキしてなんか悔しい。
いつかあいつの顔を真っ赤にさせてやりたい。
「レイア、今日はごめん。
授業から逃げ出すなんて、情けないよな」
「いえ、あれは先生や使用人の態度も悪かったです。
次からはあんな態度をとらせません!
兄様のことは私が守ります!」
レイアは目に強い光を宿し、両方の拳を胸の前で握りしめた。
気持ちは嬉しいが、守られてばかりなのは悔しい。
「これからは真面目に授業を受ける!
マナーやダンスのレッスンもサボらない!
先生にどんな嫌味を言われようと、使用人に笑われようと、逃げ出したりしない!」
俺がそう宣言すると、レイアは口をぽかんと開き目をパチクリさせた。
「兄様!
その決意はとっっっても嬉しいのですが、どういう心境の変化ですか!?」
「別に……。
ただ、欲しいものができただけだ」
レイアの瞳を真っ直ぐに見つめる。
愛してるって気持ちが、レイアに伝わるように。
「……欲しいもの?」
レイアはわからないといった表情で、首を傾げた。
……恋愛方面にかなり鈍いようだ。
こいつはまだガキなんだ。
男とか女とかそういう区別がないんだ。
だから、一緒にお風呂に入ろうと言ったり、押し倒して服を脱がそうとしたり、ネグリジェでベッドに潜り込んできたり出来るんだ。
「今はまだ秘密だ」
「あーー、ずるいですよ!
教えてくださいよ!!」
今はまだ気持ちは伝えられない。
こいつがもう少し大人になったら、俺の気持ちと一緒に血の繋がりがないことを伝えよう。
今はまだ親密度が足りない。
レイアが俺を構うのは、俺のことを兄だと思っているからだ。
血の繋がりがないとわかったら、離れていってしまう。
だからまずは、めいっぱい可愛がって、甘やかして、俺が傍にいないと生きていけないくらい依存させる。
結婚しようって伝えるのはそれからだ。
そのために、まずは世界一のブラコンに育てる!
「ガキには内緒だ」
「子供じゃありません!
私は兄様より大人です!」
レイアはプーッと顔を膨らませた。
「そういう態度が子供なんだよ」
早く大人になりたい。
レイアに好きだと伝えられるように。
それまでに、いっぱい勉強する!
彼女の隣に立つのに相応しい男になるんだ!
◆
―レイア視点―
ラインハートと共に勉強を始めて一週間が経過した。
厳しい授業に耐えきれず、ラインハートが逃げ出した。
彼に勉強を教えるのは、早かったかも知れない。
もう少し、第三離宮の暮らしに慣れてからにすればよかった。
そんな後悔を抱えながら、私は彼を探し、離宮内を走り回った。
離宮ってどうしてこんなに広いの?
学校でかくれんぼしてる気分だわ。
洗濯室も、音楽室も、調理場も、食堂も、衣装部屋も探したけど、ラインハートは見つからなかった。
彼はいったいどこに行ってしまったの?
◆
数時間後、探し疲れて廊下をトボトボと歩いているとき、後ろから声をかけられた。
声でラインハートだとわかった。
駆け寄って小言を言うと、彼は素直に謝罪した。
授業を抜け出したときは、焦燥と苛立ちを抱えているように見えたが、今はずいぶんさっぱりした表情をしている。
かくれんぼしている間に何があったのかしら?
彼の変化に戸惑っていると、不意に抱き寄せられた。
かくれんぼ前は人前で手を握られるのも嫌がってのに……!
どういう心境の変化かしら?
もしかして、私を家族と認めてくれたのかな?
だとしたら嬉しいなぁ。
ラインハートは「これからは真面目に授業を受ける! マナーやダンスのレッスンもサボらない! 先生にどんな嫌味を言われようと、使用人に笑われようと、逃げ出したりしない!」と宣言した。
彼の瞳には迷いがなく、強い意志が宿っていた。
彼がやる気になってくれて、とっても嬉しいわ!
「ラインハートをクロードを超えるハイスペ男子に育てて、ヒロインとくっつけよう作戦!」は一歩前進ね!
一日2話更新にしたかったのですが、推敲が間に合わず……(^_^;)
一日1話は必ず更新したいと思います!




