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モブ王女に転生したら悪役王子の義兄に溺愛されました! 前世の推しを闇堕ちなんてさせない!  作者: まほりろ・コミカライズ配信中


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13話「今明かされるラインハート出生の秘密!?」ラインハート視点




――ラインハート視点――




第三離宮について来られてから二週間が経過した。


ブレンダ様にきつく叱られたからか、あの日以来レイアが寝室に侵入してくることはなくなった。


俺の安眠が保証されたのは嬉しい。


ここにいるとレイアを意識してしまうので、俺は第二離宮に帰ろうと思っている。


だが、俺が逃げ出す度に、レイアが追ってくる。


こっちは、レイアを妹だと思えないから距離を取ろうとしてるのに……。


あいつはそんな俺の気持ちを知らないで、グイグイ距離を詰めてくる。







一週間前から、文字やマナーやダンスの勉強が始まった。


レイアは俺の知らないことを何でも知っていて、先生からの質問にも的確に返答していた。


俺は簡単な文字すら読めず、ダンスのステップも踏めず、王族としての作法もわからない。


教育係が落胆した顔でため息を吐き、侍女が蔑んだ目でクスクスと笑った。


レイアの前で失態を晒した上に、周りの人間に笑われて……。


悔しくて、恥ずかしくて、いたたまれなくて……気がついたら部屋を飛び出していた。






「ラインハート兄様〜〜!

 どこですか〜〜!」


レイアが俺を呼んでる。


だが、出て行く気にはなれない。


がむしゃらに走った俺は、適当な部屋に逃げ込み、吸い込まれるように大きなタンスの中に隠れた。


よく見ると、タンスの中にはシーツやタオルがたくさん積まれていた。

タオルからは、かすかに石鹸の香りがした。

おそらく、洗濯したものをしまっておく部屋だろう。


あいつも、ここまでは探しに来ないだろう。


「先輩、天気がいいから洗濯物がよく乾きますね」


「どっこらせ、少しここで休憩して行こうかね」


このまま昼寝でもしようかと思っていたら、部屋に誰かが入ってきた。


おそらく洗濯物係の侍女だろう。

声の感じからして片方は年老いていて、片方はかなり若い。


彼女たちは、タンスの奥に人が隠れているなど思っていないのだろう。


「こんにちは!」


その時、扉を開ける音と共にレイアの声が聞こえた。


俺の心臓がビクンと跳ねた。


「お、王女殿下!?」


「ど、どうしてこのような場所に……!? 

 わ、私たちは、べ、別にサボっていた訳では……!」


侍女も突然の王女の登場に驚いているようだ。


「ラインハート兄様を探してるんです。

 この部屋に来ませんでしたか?」


「第二王子殿下ですか?

 あいにく見ておりません」


「そう、わかったわ。

 見かけたら教えてね。

 全く、兄様ったらどこに行ってしまったのかしら……」


扉が閉まる音のあと、遠ざかっていく足音が聞こえた。


俺はほっと息を吐いた。

見つからなくてよかった。


「驚いたね、こんな場所に王女殿下が来るなんて」


「サボってるのがバレたかと、一瞬ヒヤッとしました」


安堵したのは侍女たちも同じだったようだ。


「レイア王女は、ラインハート殿下とよく一緒にいますよね?

 今日だってあんなに必死に探して……。

 お二人は仲が良すぎます。

 手を繋いで歩いたり、抱き合ったり、兄妹なのにまるで恋人同士のようだわ」


若い侍女の言葉に、胸がざわついた。

周りからは、そんな風に見られてたのか?


「少し距離をおくように進言した方がいいかしら?」


「止めときな。

 侍女の言葉なんか誰も聞かないよ。

 それに、お二人がくっつくことこそが国王陛下の狙いなのさ」


何かがきしむ音が聞こえたので、彼女が椅子に腰掛けたのだと俺は推測した。


国王の思惑!?

気になる!


「先輩、それはどういうことですか?」


「休憩のついでに、昔話をしようかね。

 聞きたいかい?」


「もちろんです!」


若い侍女は、興味津々のようだ。


「昔……第二王妃トリシャ殿下が生きていた頃……。

 今から十一年以上前の話さ。

 私は、第二離宮に勤めていた」


第二王妃は俺の母だ。

俺は、母のことをほとんど何も知らない。

母のことを知りたい!


俺はドアに耳を当て、話の続きを待った。


「先輩、第二離宮にいたんですか?

 初耳です!」


「あんたがこの城で働く前の話だからね。

 その頃の陛下は若さゆえに旺盛なエネルギーを持て余し……平たく言えば美女に目がなかったのさ」


国王のことはよく知らないが、第三位まで王妃がいるんだから女好きなのは間違いない。


「トリシャ殿下は北方を納めていたグレッチャー王国の王女様だった。

 最も、嫁いできた時には国は滅びてたけどね」


グレッチャー王国……それが母の祖国の名前。

今はもうない国の名前に、どうしてこんなにも心が揺り動かされるのだろう?


「傾国の美女とは、ああいうお方を言うんだろうね。

 トリシャ殿下は、黒く長く艶のある髪、黒真珠の瞳、陶器のように白い肌、手足は細く長く、人形のように美しい方だった」


俺の髪の色は母親譲りだったようだ。


「当時陛下はトリシャ殿下にたいそう入れ込んでいた。

 多くの貢ぎ物をし、彼女の為に立派な離宮をこさえた」


俺が物心ついた時には、第二離宮の外壁には蔦が絡まり、煉瓦にはところどころヒビが入り、庭は草ボーボーで、室内は埃だらけで、かなり寂れていた。


今からでは想像もつかないが、建てられた当初はさぞ美しかったのだろう。


「ここからが本題だ。

 トリシャ殿下は、結婚前から妊娠していたという噂があった。

 ラインハート殿下が生まれたのが、予定日より早かったから、その噂の信憑性は増した」


「えーー!

 托卵されたってことですか?

 それが本当なら大事件じゃないですか!?」


心臓がドクンと大きな音を立てた。


俺が国王の子じゃない……?

そんなこと、有り得るのか……!?


謁見の間で会った国王の瞳は緑だった。

俺の瞳は金色、侍女の話では母の瞳の色は黒。

俺の瞳の色は、実の父親に似たということか?


「そのことを陛下はご存知なんですか?」


「薄々は気づいていただろうね」


「知っていて、ラインハート殿下を生かしておいたんですか??」


「托卵を許容できるほど、トリシャ殿下は美しかったのさ。

 陛下は一人目が他人の子でも、二人目、三人目が自分の子ならそれでいいと思っていたんだろうね。

 一人目の子供を人質にすれば、第二王妃殿下を言いなりに出来るからね」


「うわ〜〜、ドロドロしてますね。

 第二王妃殿下は、私なんかが想像できないくらいお綺麗だったんでしょうね」 


「あの方の美しさは実際に目にしたものにしかわからないよ。

 容姿が整っているのもあるが、人を惹きつける不思議な魅力がある方だった」


俺は母のことを何も知らない。

乳母や侍女に尋ねても、何も話してくれなかった。


もしかしたら、母の死後に第二離宮で大規模な使用人の入れ替えがあったのかも?

だから、誰も母の容姿や性格について答えられなかった?


ここで母のことを知れたのは、幸運かもしれない。

俺は心の中で、年老いた侍女に感謝した。


「だけど、トリシャ殿下はラインハート殿下を生んですぐ逝去された。

 陛下はそれはそれは悲しまれた。 

 愛する人を失ったというより、お気に入りのおもちゃが自分が遊び尽くす前に壊れた……そんな感じの落ち込み方だったね」


「それは、ちょっと第二王妃殿下が気の毒ですね」


それは俺も同感だ。

国王にとって、俺の母は珍しい玩具の一つだったということか?

母に対して余りにも失礼だ!


「陛下は残されたラインハート殿下に興味を示さなかった」


「酷〜〜い」


「同じ頃、第一王妃殿下がワグナー殿下を出産していたからね。

 ワグナー殿下がいるなら世継ぎには困らない。

 下手にラインハート殿下をかまって、第一王妃殿下の嫉妬されるのも面倒だったんだろうね」


「だからって……」


「陛下はラインハート殿下をどう処理するか、頭を悩ませていた。

 自分の子供か怪しい子を世継ぎにはできない。

 さりとて城の外に出して、他人に利用されたら面倒。

 殺す勇気もない。

 だから、第二離宮に閉じ込めたのさ。

 最低限の使用人だけ残してね」


「ラインハート殿下が気の毒です」


若い侍女の声はかすかに震えていた。


俺は自分の半生を嘆く気はしなかった。

ただ自分の置かれた境遇に納得がいった。


第二離宮が寂れていたこと。

使用人がほとんどいなかったこと。

教育を受けられず、まともに着る物も食べ物も与えられなかったこと。


俺が国王の子供ではないから……。

いてもいなくても、どうでもいい存在だから。

だから放置されていた。


国王からすれば、殺すのは面倒だから勝手に死んでくれという感じだったのだろう。


国王を恨む気にはなれない。

そんな感情すら湧かないほど、どうでもいい存在だった。

それは国王にとっても同じだろう。

これからもお互いに干渉せずに過ごしたい。


「でも先輩、国王陛下はラインハート殿下を放置してきたのに、今になってなぜ第三離宮で暮らすことを許可したんですか?

 お風呂に入れて、栄養のあるものを食べさせて、服を新調し、教育係まで雇って……」


そこは俺も疑問だった。

今になってなんで?


「第三離宮には、レイア王女もいらっしゃいます。

 ラインハート殿下は、教養もないし、礼儀作法もまるでなっていません……」


余計なお世話だ。


「ですが、お顔だけはとびきり良いです!

 レイア王女がラインハート殿下に恋してしまったら……!?

 お二人には血の繋がりはないわけですし、万が一ということも……!」


若い侍女の言葉に胸がドキンと跳ねた。

レイアが、俺を兄としてではなく一人の男として好きになる!?

そんな可能性あるのか?


「事情が変わったのさ。

 ラインハート殿下とレイア王女が神獣の加護を受けた。

 それに対して、ワグナー殿下は神獣に危害を加え、神獣の怒りを買った。

 神獣に疎まれている者が国を継いだら、どんな災が降りかかるか……。

 陛下はあれで迷信深いところがあるからね。

 ワグナー殿下を見捨てることにしたんだろう」


「ワグナー殿下もお気の毒ですね。 

 生意気で、使用人への態度が悪くて、横柄で、乱暴で、性格がひねくれていて、根性が悪くて、意地悪なだけなのに……お世継ぎから外されるなんて。

 あれ? よく考えたら、あんまり気の毒ではありませんね」


ワグナーは見捨てられるだけのことをしている。

同情に値しない。


「レイア王女とラインハート殿下が結婚すれば、神獣の加護を王家で丸ごと取り込める。

 グレッチャー王国の残党が謀反を企てるなんて噂があるし……。

 ラインハート殿下が、国王もしくは王配になれば彼らも大人しくなるだろう。

 一度に三度美味しいってわけさ」


……ドクン!! と大きく心臓が鼓動した。

俺とレイアが結婚……!?


俺たちが結婚することを周りも望んでいる……?


「お二人に血の繋がりがなくても、世間的には腹違いの兄妹ということになってるんですよね?

 それで結婚できるんですか?」


「ラインハート殿下の出自を国民にどう説明するかについては、陛下が側近を集めて話し合ってるんじゃないかね」


俺はレイアを好きになっていいのか……?

彼女を恋愛対象として見ても許されるのか……!?


「さて、そろそろ戻ろうかね。

 あまり長居していると、執事長にお説教されちまう」


「そうですね」


「今日の話はここだけの秘密だよ」


「はーーい」


二人の侍女が部屋を出ていく音を、俺はタンスの奥で聞いていた。




読んで下さりありがとうございます。

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