12話「気になる美少女の距離感がバグってた!? 複雑な気持ち、妹として見れない!」ラインハート視点
――ラインハート視点――
色々あったが食事が終わり、俺はルーディーと共に部屋に戻った。
ブレンダ様との約束なので、一晩だけ泊まるつもりだった。
夜が明けたら、朝食を食べずにここを去るはずだった。
それなのに……。
目覚めたら俺の隣りにレイアが寝てた。
ネグリジェを纏ったレイアが、あどけない顔で寝息を立てている。
「わ〜〜!!
何でお前がここに!?」
近くに寄られるだけで、胸がドキドキするのに……!
添い寝なんかされたら、心臓が爆発する!!
レイアが寝ぼけながら上半身を起こした。
ネグリジェの裾から素足が見えて、俺は目のやり場に困った。
「……おはようございます。
ラインハート兄様……ふにゃふにゃ」
彼女が頭を下げた時、ネグリジェがするりと落ちて……日に焼けてない肩が見えた。
俺はとっさに近くにあった毛布を掴み、奴の体にかけた!
肩とか、足とか、鎖骨とか……露出し過ぎだ!
こいつには警戒心はないのか!?
あるわけないか……。
こいつにとって、俺は兄なんだから。
俺は妹として見れないのに……。
レイアがこの部屋にいたのは、夜のうちに俺が帰らないか心配だったかららしい。
それから、ルーディーと添い寝したかったかららしい(絶対こっちが本音だろ)
奴は俺の気など知らずに、「兄様がここに住むって言ってくれるまで離しません!」と言って抱きついてきた!
淑女としての恥じらいも慎みもない。
妹というのは兄に対して、こんなに無防備なのか!?
それともレイアの距離感がおかしいだけなのか!?
侍女が部屋に入ってこなかったら、俺はどうなっていたかわからない。
◆
侍女がお茶とともに、朝食を運んできた。
食事の前にここを出る予定だったのに……。
レイアのせいで予定が狂った。
夕食の時の記憶が蘇る。
また食事で恥をかくのだろうか。
だけどワゴンに乗っていたのは、サンドイッチやスコーンや カナッペという手で食べられるものだった。
ブレンダ様がシェフと共に、俺が楽しく食事が取れるようにと考えたメニューらしい。
マナーを覚えるまでは部屋で食べることが許可された。
胸の奥がぽかぽかと暖かい。
ブレンダ様の心遣いが嬉しい。
◆
室内でゆったりと朝食を味わえるはずだった……。
レイアのせいで、胸がばくばくしっぱなしだった。
「ティーカップは一つしかありません。
共有しましょう」
レイアが口をつけたカップを無防備に差し出してきた。
こいつが口を付けた箇所と、柔らかそうな唇を交互に見てしまい心臓が落ち着かない。
「だっ、誰がお前の手を付けたカップなんか使うかよ!!」
カップに手を伸ばしそうになる自分を、ギリギリのところで律した。
レイアは俺の気持ちなんてまるで気づいていないようで、ばくばくとサンドイッチを平らげていく。
「お前、口の周りにパンくずが付いてるぞ」
「えっ……?」
彼女を見てると、本当にお姫様なのかと時々思う。
「パンくずが付いてるのは反対だ。貸せ」
レイアからナプキンを受け取り、彼女の頬にナプキン越しに触れる。
思ったより距離が近い。それに布越しとはいえレイアの顔に触れてしまった。
心臓がとくとくと音を立てる。
不意に彼女が目を閉じたので、心臓が止まるかと思った!
「お前っ……!
この距離で瞳を閉じるなよ……!」
俺はナプキンをテーブルに置き、彼女から距離を取った。
食事は美味しかったが、その間もずっと瞳を閉じたレイアの顔が頭から離れなかった。
だってあんな表情、く、口づけする時にしか……。
うわぁ〜〜! 俺は何を考えているんだ!?
心の中が全部レイアで埋め尽くされていく。
レイアへの気持ちが溢れてしまいそうになるのを、理性で抑え込む。
それなのにあいつは、俺を子供扱いしてくる。
「兄様が、年相応に子供らしく顔をほころばせている姿を見て、胸を打たれました!」
「はっ?
お前俺より年下だろ?
発言がおばさん臭いぞ」
「女の子の方が精神年齢が上なんです。
ラインハート兄様が野良猫みたいな目をしていたから……母性本能がくすぐられたんです!」
「誰が野良猫だ!
それに、母性ってなんだよ……」
「ラインハート兄様のことが子供みたいに可愛いってことです。
私のことを、お姉さんだと思って甘えてもいいんですよ?」
子供みたいに可愛い!? ふざけんな!
「年下にガキ扱いされて、喜ぶ奴がどこにいるんだよ」
恋愛対象にしてくれとまでは望まない。
だからといって、子供扱いは許容できない。
昨日からあいつの距離が近い理由がわかった。
俺を息子か弟のように思っているからだ。
だからあんなに警戒心がないんだ。
なんか、むかむかしてきた。
勝手に人を小動物扱いするな!
「もう、素直じゃないですね。
そういう態度は可愛くないですよ」
「お前に、可愛いなんて思われたくねぇよ」
俺はお前に、「頼りになる」とか「かっこいい」って思われたいんだ。
「でも、私は……。
そんな兄様も好きです」
「はっ……?」
「好き」という言葉に、心臓がドクン……と音を立てる。
春が十年分いっぺんにきたような、そんなときめきと心地よさに包まれる。
「ラインハート兄様が大好きです!
だから、どこにもいかないでくださいね」
「お、お前……そ、そういうことを……!
と、突然……言うなよ!」
心臓がばくばくと音を立て、血が沸き立つような感覚がした。
レイアも俺のことが好き?
なら気持ちを抑えなくてもいいのか?
俺も……と口を開きかけた瞬間、現実を突きつけられた。
「妹として、兄様のことが大好きです!」
わかってた。
そういう意味だって。
レイアが俺を異性として意識していないって。
「……ぁぁ、そういうこと……」
腹違いとはいえ、兄をそういう目で見ろと言う方が間違っている。
頭ではわかっているのに、心が追いつかない。
「人の気も知らないで……。
俺はお前を……妹として……見れないのに……」
レイアは何事もなかったかのように、お茶のおかわりを楽しんでいる。
俺の心の中を嵐のようにざわつかせておいて、酷い女だ。
レイアの横顔は赤ん坊のようにあどけなく、ほんの少しだけ腹立たしく思えた。
レイアは俺を兄として慕っている。
でも俺は……レイアを妹として見れない。
この思いの違いをどうやって埋めたらいい……?
今は何も考えられない。




