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第八話 設備屋

いつも『レストラン・ゲロマズ』をお読みいただき、ありがとうございます。


第八話では、新しい出会いがあります。


名前が分かるだけで、その人との距離は少しだけ近くなる。


でも、本当に知りたいことは、名前の向こう側にあるのかもしれません。


いつもの笑いに、少しだけ静かな時間を添えて。


それでは、第八話「設備屋」をお楽しみください。

昼の十二時。


レストラン・ゲロマズ。


カラン。


「いらっしゃいませダー!!」


店長のピヨ田ゲロ彦が迎える。


男はいつもの席へ腰を下ろした。


ブル子が水を運ぶ。


「こんにちは。」


男は小さく頷く。


「……ああ。」


昨日と変わらない。


それだけなのに、ブル子は少し嬉しかった。


「兄さんはコーヒー飲みたい顔してるシャー。」


いつの間にかシャー子が男の隣に立っていた。


男はシャー子を見た。


「コーヒーを。」


「ほらシャー。」


ブル子は思わず笑う。


「ただいまお持ちします。」


湯気の立つコーヒーを男の前へ置いた。


男は一口飲む。


「悪くない。」


ブル子の顔がほころんだ。


カラン。


「いらっしゃいませダー。」


店へ入ってきたのは皮皺稲荷だった。


「コーヒーを。」


皮皺は静かに席へ着く。


ブル子が運んできたコーヒーを一口飲み、男の方へ視線を向けた。


「相席、いいかな。」


男は黙って頷く。


皮皺は男の向かいへ腰を下ろした。


しばらく静かな時間が流れる。


やがて皮皺が口を開いた。


「深く静かな、人の心を見透かす目をしている。」


男はコーヒーカップを置く。


「買いかぶりだ。」


皮皺は小さく笑った。


「そういうことにしておこう。」


ブル子は二人を見比べた。


まるで昔からの知り合いのようだった。


意を決したように口を開く。


「あの、お名前を聞いてもいいですか?」


男は少しだけ間を置いた。


「原島修一郎。」


「私は犬丸ブル子です。」


ブル子は笑顔で頭を下げる。


原島修一郎は静かに頷いた。


「お仕事は何をされてるんですか?」


「設備屋だ。」


「設備屋さんなんですね。」


「そんなところだ。」


それ以上は語らなかった。


皮皺はコーヒーを飲み干す。


「ごちそうさん。」


立ち上がると、原島修一郎を見た。


「また会おう。」


原島修一郎は小さく頷く。


皮皺は静かに店を後にした。


ブル子は空になったコーヒーカップを手に取る。


原島修一郎は窓の外を眺めながら、静かにコーヒーを飲んでいた。


その横顔を見ていると、ブル子はまた少しだけ、この人のことを知りたくなった。


【第八話 完】

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


今回は、これまで「男」としか呼ばれなかった人物の名前が明らかになりました。


しかし、名前が分かっても、その人物の正体はまだ謎のままです。


そして、皮皺稲荷も本格的に登場しました。


一言しか交わしていないのに、どこか通じ合っている二人。


そんな空気を感じていただけたら嬉しいです。


次回からは、新たな人物たちも少しずつ物語へ加わり、ゲロマズの日常が少しずつ動き始めます。


これからも『レストラン・ゲロマズ』をよろしくお願いいたします。

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