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第二話 気まぐれ定食

第二話です。


作者も気まぐれ定食の正体を知りません。


店長も知りません。


シェフも知りません。


読者の皆様だけが頼りです。


それでは第二話をお楽しみください。

店内には、どこか妙な空気が流れていた。


原因は一人しかいない。


さっき入ってきた黒いコートの男だった。


男は席に座ったまま、静かにメニューを見ている。


常連客の田中はチラチラと男を見ていた。


やはり見覚えがない。


それなのに気になる。


不思議な男だった。


「ご注文はお決まりですか?」



犬丸ブル子が男の席へ向かった。


男はメニューに目を落とした。


「これだ」


ブル子は視線を落とした。


『シェフの気まぐれ定食』


「え?」


ブル子は固まった。


男はメニューから目を離さない。


「どんな料理なんだ?」


ブル子は答えた。


「分かりません」


男は顔を上げた。


「分からない?」


「はい」


男はしばらく黙った。


「店員なのにか」


「はい」


そこへ店長が現れた。


「私も知りません!」


男はゆっくりと店長を見た。


「店長なのにか」


「はい!」


元気よく答えた。


厨房の奥から声が飛んできた。


「私も知りません……」


けつげしげるだった。


男はしばらく黙った。


そして小さく息を吐いた。


「じゃあ誰が知っているんだ」


店内が静まり返った。


誰も答えられなかった。


男は再びメニューを見た。


「それでいい」


ブル子は聞き返した。


「気まぐれ定食でよろしいですか?」


「ああ」


ブル子は一瞬だけ表情を曇らせた。


男はそれを見逃さなかった。


「何か問題があるのか」


「いえ」


「そうか」


ブル子は厨房へ走った。


「店長!」


「なんでしょうダー!」


「気まぐれ定食が入りました!」


店長の顔色が変わった。


「本当ですか!?」


「本当です!」


厨房の奥でけつげしげるが青ざめた。


「どうしましょう……」


「シェフ!」


店長の声に、けつげしげるが顔を上げた。


「いつも通りでお願いします!」


「いつも通りが分からないんです!」


店内の静寂。



男は、腕を組み、窓の外を見ていた。


田中は再び男を見る。


やはり気になる。


見たことのない客。


それなのに。


どこか懐かしい。


そんな気がしてならなかった。


【第二話 完】


最後まで読んでいただきありがとうございます。


気まぐれ定食を注文した男。


果たして無事なのか。


そもそも料理は完成するのか。


作者にも分かりません。


次回、第三話でお会いしましょう。


レストラン・ゲロマズは本日も元気に営業中です。

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