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第十五話 東郷玄十郎(後編)

いつも『レストラン・ゲロマズ』をご愛読いただき、ありがとうございます。


前編では、東郷玄十郎が原島修一郎に深々と頭を下げ、店内に大きな衝撃が走りました。


中編では、東郷が「命の恩人」であることだけが静かに明かされ、その過去は謎のまま。


そして、いよいよ後編。


店の外で交わされる短い会話の中に、二人だけが知る長い年月と、揺るぎない信頼が垣間見えます。


第十五話「東郷玄十郎(後編)」。


どうぞ最後までお楽しみください。

カラン。


ドアが静かに閉まる。


店の外は厚い雲に覆われていた。


柔らかな風が通りを吹き抜ける。


人々は普段と変わらぬ昼を過ごしている。


修一郎は何も言わず歩き出した。


東郷玄十郎が半歩後ろを歩く。


二人のSPは少し距離を取りながら周囲を警戒していた。


しばらく歩くと、修一郎が足を止める。


道路脇の街路樹が風に揺れた。


東郷は静かに口を開く。


「原島様。」


修一郎は振り向かない。


「何だ。」


東郷は一度だけ空を見上げた。


その曇り空を見つめながら、遠い昔を思い出していた。


激しい銃声。


燃え上がる炎。


崩れ落ちる建物。


血に染まった自分。


薄れゆく意識の中、一人の男が歩いてくる。


若き日の原島修一郎だった。


「立て。」


差し伸べられた手。


東郷は、その手を力いっぱい握った。


我に返る。


あの日と同じように、修一郎の背中が目の前にあった。


東郷は静かに言った。


「ドン・ゴルガンが、原島様にお会いしたいと申しております。」


修一郎は小さくため息をつく。


「死んだと伝えろ。」


東郷は微笑んだ。


「そういうと思っておりました。」


修一郎は少しだけ笑う。


「あいつは昔から諦めが悪い。」


「はい。」


短い返事だった。


しばらく沈黙が流れる。


風だけが二人の間を通り抜けていく。


修一郎はポケットから煙草を取り出した。


オイルライターの蓋を開ける。


カチッ。


小さな炎が揺れる。


煙草に火をつけ、ゆっくりと紫煙を吐いた。


東郷はその姿を静かに見つめていた。


「原島様。」


「何だ。」


「お元気そうで安心いたしました。」


修一郎は煙草をくわえたまま答える。


「まだ死なん。」


東郷は穏やかに笑った。


「何よりでございます。」


修一郎は煙草を揉み消す。


「帰る。」


赤いスポーツカーへ向かう。


ドアを開ける。


乗り込む直前、振り返ることなく言った。


「じゃあな、爺さん。」


「はい。」


エンジンが静かに目を覚ます。


赤いスポーツカーはゆっくりと走り出した。


東郷は、その姿が見えなくなるまで静かに見送る。


やがて振り返り、二人のSPへ穏やかに言った。


「帰りましょう。」


「はい。」


黒い車のドアが閉まる。


静かに発進する。


曇り空の下、二台の車は別々の方向へ走り去って行った。


【第十五話 完】

第十五話「東郷玄十郎(後編)」を最後までお読みいただき、ありがとうございました。


東郷玄十郎と原島修一郎。


二人の関係をすべて語ることは、あえてしませんでした。


だからこそ、「命を救われた」という一言や、交わされる短い言葉の重みを感じていただけたなら嬉しいです。


そして、新たに登場したドン・ゴルガン。


修一郎との間には、まだ語られていない過去があるようです。


その過去が明かされる日は来るのか。


それとも、永遠に語られないままなのか。


それは、これからの『レストラン・ゲロマズ』で少しずつ描いていきたいと思います。


最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。


これからも『レストラン・ゲロマズ』をよろしくお願いいたします。

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