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第十四話 MISTAKE

いつも『レストラン・ゲロマズ』をお読みいただき、ありがとうございます。


前回は、いつもとは少し違う緊張感に包まれたお話でした。


今回は、その空気を少しだけ忘れて、ゲロマズらしい日常へ。


……のはずが、看板娘のブル子が、とんでもない「ミステイク」をしてしまいます。


どうぞ肩の力を抜いて、お楽しみください。

昼の十二時。


レストラン・ゲロマズ。


カラン。


「いらっしゃいませダー!!」


店長、ピヨ田ゲロ彦の元気な声が店内に響く。


昼の営業が始まった。


「ブル子ダー!」


「はい!」


犬丸ブル子は元気よく返事をする。


……返事だけは。


頭の中は昨日の出来事でいっぱいだった。


(レインメーカー……。)


(最強の傭兵……。)


(エクアドルの英雄……。)


(原島さんって……。)


考えれば考えるほど分からない。


昨日まで、ただ静かにコーヒーを飲みに来る常連さんだと思っていた。


それなのに――。


「ブル子!」


「は、はい!」


店長の声で我に返る。


「ぼーっとしてるダー!」


「すみません!」


シャー子がニヤニヤしている。


「恋してるシャー?」


「違う!」


ブル子は顔を真っ赤にした。


その時だった。


カラン。


入口のベルが鳴る。


原島修一郎だった。


黒い傘をたたみ、いつもの席へ静かに腰を下ろす。


ブル子は水を運ぶ。


「こんにちは。」


修一郎は軽く頷いた。


それだけだった。


ブル子は何も聞かず、厨房へ向かう。


いつものコーヒーを淹れるために。


だが、頭の中では昨日の言葉が何度も繰り返されていた。


(レインメーカー……。)


(最強の傭兵……。)


(エクアドルの英雄……。)


(原島さん……。)


数分後。


「お待たせしました。」


コトッ。


修一郎の前に置かれたのは、


湯気の立つ味噌汁だった。


修一郎は器を見る。


ブル子も見る。


二人とも動かない。


静かな時間が流れる。


次の瞬間。


「あーーーーーーっ!!」


店中の視線が一斉に集まった。


「ご、ご、ごめんなさい!!」


ブル子は慌てて味噌汁を持ち上げる。


「コーヒーと間違えました!」


店長が目を丸くする。


「新メニューダー!」


「違います!」


シャー子はお腹を抱えて笑う。


「勘違シャー!」


厨房からけつげしげるが顔を出した。


「味噌汁の方が早くできたんですか?」


「違います!」


店内は笑いに包まれた。


ブル子は修一郎に何度も頭を下げる。


「本当に申し訳ありません。」


修一郎は小さく息をついた。


「珍しいな。」


ブル子は恥ずかしそうに笑う。


「……考え事をしてました。」


修一郎はそれ以上聞かなかった。


「そうか。」


ただ、それだけだった。


数分後。


今度こそ、湯気の立つコーヒーが運ばれてくる。


「お待たせしました。」


修一郎は一口飲んだ。


静かにカップを置く。


「うまい。」


短い一言だった。


ブル子は胸をなで下ろす。


「ありがとうございます。」


店長が腕を組む。


「やっぱりコーヒーの方が人気ダー!」


「最初からそうです!」


シャー子の笑い声が店内に響く。


いつものゲロマズ。


昨日までとは少し違う。


だけど、どこか安心できる昼の時間だった。


【第十四話 完】

第十四話『MISTAKE』を最後までお読みいただき、ありがとうございました。


シリアスな展開が続いたあとだからこそ、今回は思い切りゲロマズらしいドタバタ劇にしてみました。


それでもブル子の頭の中には、まだ「レインメーカー」と「エクアドルの英雄」という言葉が残っています。


笑いの中にも、小さな変化は少しずつ積み重なっていく。


そんな一話になっていたら嬉しいです。


次回は、また新たな騒動が待っているかもしれません。


これからも『レストラン・ゲロマズ』をよろしくお願いいたします。

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