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刻の檻刀シリーズ②偽りのsânge ー赤き薔薇が示すものー  作者: 慧依琉:えいる


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8/22

第8話:あなたの態度一つでこんなにも不安になるということ



輝夜が教室に戻った時、教室内では静かになってはいたが、どこかヒソヒソと声が聞こえるようだ。居心地が悪い…。だが、間もなく授業が始まるだろうから教室から出て行くわけにもいかない。変に緊張する輝夜……………。


〝こういうの、苦手だから公にしないでおきたかったのに…。満流ったら何を自信なさげに…。〟


輝夜は緊張で喉が渇く感覚を我慢して居心地が悪いままに席に着こうとしていた。



そんな時に声をかけてきたのが砂山悠一だった。




「輝夜さん。」


「悠一くん?」


「さっきは災難だったね。だけど、アイツは輝夜さんに対しては真剣だから悪気はないってこと理解してやってくれるかな。」


悠一は輝夜の事が好きだからこそ、自分の最大のライバルである満流のことをかばって言った。


「うん、ありがと。私もその辺りは理解してるから大丈夫よ。」


悠一の言葉に心が少し落ち着いた輝夜はにっこりと笑った。



クラスの皆は二人が何を話すのかと興味津々で耳を澄ませていた。そのせいで妙な静けさが教室に漂っている。その静まりようで輝夜は〝やっぱり注目されてるんだわ……………〟そう思って緊張した。


「あ、それから…。」


悠一は言葉にしたかったが、注目されている時に誤解を与えそうだと思ったので紙を輝夜にそっと渡し、


「ほら、席に着こう。まもなく授業開始のベルが鳴るよ。」


と言って自分の席へと戻って行った。輝夜も自分の席に着くが、満流はまだ戻ってこない。心配しつつもこれ以上目立ちたくなくて我慢して席に座り、悠一に渡されたメモをそっと広げた。


〝満流から聞いた。僕も合流しようと思うから準備が出来次第また君のところでお世話になろうと思う。〟


〝────悠一くん…。〟


輝夜は満流と悠一の熱い友情に感動してメモを持つ手が少し震えていた。



〝そっか、満流が敵に対抗する為に協力を仰いだのね。〟


満流への不満も今は薄れてただ感謝の気持ちだけが輝夜を満たしていた。





その時、次の授業が始まるベルが鳴り、教師が教室の前の扉を開けて入室し、そして教壇に立った時、廊下を走ってくる足音がした。その足音は近くで止まった。誰もがたった一人の生徒を思い浮かべた。




────ガラッツ!



教室の後ろのドアが開き、満流が戻ってきた。



「すみません、先生。」


潔く謝罪する満流。


「おお、神凪か。ちょうど今来たところだからセーフだな。次からは気を付けろよ。ほら、早く席に着け!」


「はいっ。」


満流が無事授業に間に合って輝夜もホッとした。

満流は輝夜の席から斜め前の方に座っている。だが入室してから輝夜の方を一度も見る事もなく授業に入った。


〝間に合ってよかった。…けど、こっちに視線すら合わそうとしないってどういうこと?満流ってば!〟


輝夜はちょっとイラッとした。そして気付いた。



〝私ってこんなに満流の態度一つで気持ちがぶれ動いてしまうの?それだけ満流のことを…?〟


そう思って満流を見ていた輝夜を悠一は輝夜の斜め後ろの方から見つめていた。


〝まいったな…。あんな顔してる輝夜さんを見てたら僕なんて相手にされるわけないじゃん。元々輝夜さん(白のクイーン)の相手は満流(白のキング)なんだし、僕の入る余地なんてこれっぽっちもないんだよね…。はあ…。〟


狭い教室という空間の中で三人のそれぞれの想いは交差することなくカラカラと空回りをしているかのようだった。







放課後────






────ドン!


「帰るぞ。」



そう言って満流が輝夜の席に来て、片手を机の上に勢いよくついた。輝夜はあれ以来視線すらよこさない満流に対して不満と不安が入り混じっていただけに満流のこの行動は予期せぬことで嬉しくなった。


「もう…。話してくれないかと思った…。」


そう言って輝夜の瞳にじわりと涙が滲んだ。それを見て満流が慌てだした。


「な…!そんなわけないだろ?!な、なぁ、大丈夫だって。俺がお前のこと見捨てるはずないじゃないか!?」


まだ教室にはクラスメイトが数人残っているというのに慌てた満流はしどろもどろにそう言った。


「……………うん、ごめん。満流。私、恥ずかしかったの……………。」


輝夜が珍しく蚊の鳴くような小さな声でそう言った。この普段とのギャップに満流は鼓動が飛び跳ねて


「や…、お…俺もデリカシーなくて悪かった!だから…、な?」


そう言って輝夜の顔を見た。


「うん…。」


やっと安心したのか輝夜は微笑んだ。満流は心臓がバクバクしてて今すぐにでも輝夜を抱きしめてキスしたい衝動を何とか抑えようと頑張っていたのだ。


そんな二人に声をかけてきたのが悠一だ。


「おふたりさん。仲直りしたようでよかった。」



────!


満流は悠一の声に救われたような気がした。



「お、おう。すまんな。お前にまで心配かけて…。」


「いえ、僕はこのまま上手くいかなかったら輝夜さんにアタックするだけですからね。」


そう言って笑っていた。悠一のおかげで二人の間に流れていた妙な雰囲気は一変した。



「そうそう、輝夜さん、さっきの件、よろしくお願いします。」


「ええ。父に言って許可をもらっておくわね。」


「それじゃ。」


そう言って悠一はカバンを持って自分の家へと帰って行った。



輝夜と満流もお互いに顔を見合わせてカバンを手にして教室を出て帰路に就く。

そして昨日の今日ではあるが、今日も塾がある日なので二人は向かった。


「なあ、昨日の奴…、仲間が報復にくる可能性もあるよな。」


「……………そうだね。あの様子だときっとくるよね。」



輝夜は昨日の出来事を思い出していた。胸を貫く感覚すらなかったのに実際に貫いていた……………。それは彼女ココシアが吸血眷属であることに対して銀の剣が威力を増したということだ。


「輝夜。アイツらは人の形をしていても人間じゃない。俺たち人間の血を根こそぎ奪い取って命を奪っていく魔族だ。その命を奪うことに罪悪感なんて必要ない!」


満流は輝夜を真っすぐに見てそう言った。


「うん…。そうだね。」


彼等を生かすということは人間を殺すということだ。輝夜はグッと動揺する気持ちを落ち着かせようとした。






ご覧下さりありがとうございます。何とか仲直りする事が出来た二人。満流はいつだって輝夜の心を大切に思っています。

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