第9話:かおりの吸血鬼化!
塾へ到着したふたりは途中までに何も起こらなかったことでホッとする。
時間になり、入れ替わりで出てきた1年の柳川かおりとすれ違った。
〝ふわっ〟とかおりから何か香りがした。
〝あれっ?この香りはこの前も…。〟
輝夜がそう思った瞬間、この前と同じようにかおりは貧血によってその場になだれ込むように倒れた。塾内はかおりが倒れたことでざわつく。
「だっ?!大丈夫?!」
咄嗟に彼女の腕を取って頭が地面にぶつからないようにした輝夜。彼女は息も切れ切れの様子で
「だ…大丈夫で…す…。」
と言葉を返すが、顔は青ざめて血の気がなく、とても放っておける状態ではなかった。輝夜は顔をあげて声をかける。
「満流!」
「ああ。」
満流は短く返事をしてすぐに塾講師に向けて言った。
「先生、俺たち彼女を送って行きます!」
二人で彼女を送って行くこうとしている様子を見た講師は
「何もお前たち二人揃って行かなくても…。」
そう言ったが前回の事もあり、輝夜も満流も一人での行動は危ないとお互いに思っていたので講師の言葉を振り払って
「すぐ戻ってきます。」
半ば強引に塾を出た。
前回のようにかおりを満流が背負っていく形だ。
「輝夜も一緒だと何かと安心するな。」
「うん、私も…。」
輝夜はちょっと照れくさく感じていた。気持ちを整えるために小さく息を吐き、輝夜は真剣な顔で満流に話かけた。
「ねぇ満流…。さっきのことだけど、この子が倒れる前にすれ違いざまに〝何かの香り〟がしたの。この前もそうだったわ。」
「んあ?〝香り〟?」
「うん…。なんていうのかな、香水とかそういうんじゃなくて、匂いを辿ろうとしてもわからないから多分、〝そこにある匂い〟じゃなくて〝感じる〟のかもしれない。」
「あぁ…、それなら理解出来る。俺にはその〝匂い〟がわからないからな。きっと霊力が高いお前だからこそ感じる物なんだろう…。」
満流は冷静に分析した。輝夜も例えるのが難しいけどそれが伝わったようでホッとした。
10分くらい歩いたところであの不気味な雰囲気のある公園のそばに差し掛かった。
「今日もこのあたりは暗いわね…。いつもこんな道をこの子は一人で通っているのかしら…。これじゃぁ、奴らだけじゃなくて普通に不審者でも出てきそうよ…。」
「ああ、用心した方がよさそうだな。」
「そう言えば、この子かなり顔色が悪いけど貧血がまた酷くなったんじゃない?もしかして奴らと関係があるのかしら…。」
輝夜はかおりの顔色の悪さと敵が〝吸血鬼〟だということとの関連を疑った。
「その可能性は充分あるよな。だったらただ休ませるだけだなんてあまり効果はないだろうな。ちゃんと病院で輸血するかしないとヤバイかもな…。」
満流がそう言った時だった。突然2匹のコウモリが飛んできた!
──────────バサバサバサッツ…!!
「……………んなっ!?」
コウモリたちは満流の周りをグルグルと回っている。
「なんだ!?俺の周りをグルグルと!」
「満流っ!」
「ああ、大丈夫だ!」
満流はかおりを背負ったままコウモリたちが攻撃してくるのかどうか様子を見ながら威嚇を受けていた。そのうち満流の背におぶられたかおりがゆっくりと目を覚ました。
輝夜の目には彼女の目が金色に光って見え、瞳はゆらりゆらりと揺れていた…。咄嗟に輝夜は満流に声を張り上げていた!
「────満流っ!彼女から離れてっ!」
「──────────っ‼」
その言葉に満流は彼女から離れようと試みたが、おりにガッチリと掴まれていた。
「は?何だ!?このっ…!すっげぇ力なんだが!?」
かおりの腕は人間とは思えない程の力で満流を捕まえて離さない!そのかおりが口を大きく開けて今にも満流の首筋に噛みつこうとしていた!それを目の当たりにした輝夜は
「こっちよ!」
そう言って制服の自分の首元を開けて吸血鬼化したかおりをおびき寄せようと企んだ。目の前にすぐに噛める状態にあるのにそんな遠くの誘惑に乗るはずがない。見ていたコウモリたちもそう思っていた。
だが風に乗って香ってくる〝ニオイ〟は目の前のソレとは「格」が違った。
その〝ニオイ〟に釣られてかおりは輝夜の方へと向かった。
「……………な!輝夜っ!何考えてるんだ!」
これは輝夜にとっても一か八かの懸けだった。
かおりは輝夜に嚙みついた!
〝ガブッツ!〟
「──────────うっつ!」
噛まれた瞬間、輝夜は呻き声を上げた!
────パシュッ! 周囲に少量の血が飛び散った。
────満流の呼吸が止まった。
1秒、2秒…伸ばす指先が震える…。
「────輝夜!輝夜っ!」
慌てて輝夜の方へと駆け寄ろうとする満流はコウモリたちに阻まれて近付けなかった。
「ークソッ!邪魔だっ!────輝夜!輝夜っ‼」
必死で抗っている満流の目の前で輝夜はかおりに襲われていた…。
かおりは〝ゴクゴクゴク…。〟と輝夜の血を貪る…。
〝そうよ…。かおりさん、その調子だわ。私の血を飲めばきっとあなたは…。〟
輝夜は意識を失わないように気を張っていた。両手をギュッと握り、痛みと吸血行為による幻覚と戦っていた。
コウモリたちの隙を縫って輝夜に駆け寄り、今すぐ輝夜をかおりから引き離そうと試みたが輝夜はそれを阻止した。
「……………なんっ、で…!」
満流はただ黙って見ているしかなかった。目の前で自分の大事なひとが襲われて黙って見てろだなんて屈辱でしかなかった。
相手は吸血鬼化してはいるが人間だから攻撃するわけにもいかないのだ。
〝俺がかおりに霊札を直接刺せば状況が変わるかもしれないが、かおりはきっと元には戻れないだろう…。俺の手で葬ってしまうことになる…。〟
満流は悩んだ。だからと言ってこのまま放っておくと輝夜の命が危ない…。焦る満流。大切な輝夜を失う事を思えば…。そう思ってギュッと自分の拳を固く握って霊札に手を伸ばした時、
かおりの吸血行為が途中で止まり、輝夜の首筋から離れた。
「────?輝夜…?」
満流もコウモリたちもその状況に戸惑っていた。
輝夜の身体は自己治癒を始めたようで身体全体が青白い光に包まれ始めた。それと同時に輝夜の血が体内へと入ったかおりは、その瞳の色は金色から普通の黒へと変化していき、そのまま意識を失っていった…。
ご覧下さりありがとうございます。輝夜は自分の中にある「霊力・神力・妖力」を信じて吸血鬼化したかおりに自身を差し出しました。




