第60話:輝夜の前世…。魂の記憶の覚醒!
突然あたたかな光に包まれた輝夜。そしてその光景を驚きながらも見続けているロワールとドライト。その光が二人を攻撃しないことを察した二人はじっと様子を見守っている。
輝夜を取り巻く光が落ち着いた時輝夜が目を開いて二人を見る。
だが、どこか焦点が合わない感じだ。
すぅっと小さく息を吸って何かを話そうとする。
「ーお兄様。」
それはどうやら輝夜の中にあるミリアナとしての記憶のようだった。
「ミリアナ…か?」
「えぇ、お兄様。私はこの日を随分待ちました。再びこうしてお兄様の前に立つために何度も転生を繰り返してきました。今回、この転生でお兄様と合うための条件をいくつかのんで今世ではかなり奇妙な人生になっているようですが…、仕方ありません。」
「そうか…、ミリアナ。あの時は記憶がなかったとは言え、すまなかった。怖い思いをしたであろう。」
ミリアナは首を横に振って
「確かに怖かったですが、アレはお兄様ではないとわかっていましたので…。私はお兄様をそうしたアレから解放してあげたいと思ってこうして転生を繰り返してきたんです。会えてよかった…。」
ミリアナ自身も涙を流していた。この時、輝夜としての自我はミリアナと共にあった。ミリアナの気持ちが痛いほどに伝わってくる…。そして五度の転生を走馬灯のように知る事となる。
「お兄様、今世の私がお兄様を救ってさしあげます。そのために聖痕の持ち主となる運命も受け入れました。今のこの身体の私も産まれる前に聞いてきた上でこの世に誕生しています。お兄様を開放すれば眷属であるあの三人も同じように開放されます。今の年齢の人間として…。」
「─────!!」
彼女の中で聞いていた輝夜も驚いた。それは願った通りのことだからだ。
「それは本当か?俺だけじゃなく、アイツらもみな、人間に戻れるのか?!」
「ええ、ただ…。戻ったあとの生活は各々自分で何とかしなければなりません。」
「それは大丈夫だ。みな、強いからな。」
その言葉を聴いてミリアナは安心したかのように輝夜の中へと戻ってしまった。
「ミリアナ?」
いくら呼びかけても返事がなくなった。そして輝夜の瞳が一瞬揺らいで真っすぐにロワールを見つめる。
「ロワール…。聞いていたわ。方法自体はあるようね。」
「お前、わかるのか?」
首を横に振る輝夜。だけど核心はないけど輝夜には一つしか方法が思い浮かばなかった。
「私になら開放する事が出来ると言っていたわ。だったら方法は一つ。」
輝夜は決意した。そしてロワールも決意し、ドライトも頷いた。
ちょうどその時、朝を迎え太陽の光が洞窟の中に漏れ出した。この光はさっき満流が天を突いた時のもの。
輝夜はその光を見て自然に身体が動いていた。
影切刀はまだ銀の剣として存在している。
輝夜はその漏れた光の到達点に立ち、剣を構える。剣の先で自分の指先を少し切って血を付ける。
そしてその血の付いた剣を聖痕に付けた。
すると剣は朝陽を吸収して剣に光を宿した。その光をロワールに目掛けて放つ!
──────────シュウッッッ!
「─────ウッツ!」
ロワールは衝撃を受けた。ただの光のはずなのに、鋭い何かが突き刺したような衝撃だ。
受けたところがまるでたばこの火でもついたかのような焦げになる。
「陛下!大丈夫ですか!」
ドライトがすぐさま反応する。
「大丈夫だ。ただの衝撃だ。」
落ち着いた声でロワールが返事をした。ドライトはキッツ!と輝夜を睨むが、ロワールに阻止される。
「我はあいつを信じる。」
「陛下…。」
ドライトにとって陛下の言葉が全てだ。
ロワールがドライトとそういうやり取りをしているうちにさっきの焦げの部分が広がっていった。
そしてロワール自身が痛みでも生じているのだろうか?とうとううずくまってしまった。
輝夜は一歩も動かない。
変化には痛みは伴うもの そう理解しているからだ。
ロワールはうずくまったまま動けないでいる。それでも輝夜は動かない。
輝夜の中で確実ではないが、確信はあった。
〝あの時─────。私と満流は死んでいた…。だけどあれが覚醒の為の鍵だった。だからもしかしたら…。〟
輝夜にとっても半分は賭けだった。今や兄であったロワールのことを少しは記憶にある。だから人間になったらいいという思いは以前よりも強くはなった。
だが、吸血族であり続けるのならこのまま消滅してしまっても仕方ないとすら思っていた。
〝私の中のミリアナが言っている…。兄を開放してって。その開放の仕方はわからない。人間になれれば一番だけど、なれなくても今の悪魔のような吸血族で居続けるよりはいいと、彼女の魂も言っている…。〟
─────創造主さま…。
輝夜は再び創造主に願った。
すると目の前に創造主が降臨した!
「─────創造主さま!」
輝夜はまさかの降臨に驚いていた。さっきのミリアナの登場ですら創造主の力であると察していたが、本人が現れるとは流石に思わなかったからだ。
ご覧下さりありがとうございます。とうとうロワールを開放するために動き出していきます。




