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【完結】刻の檻刀シリーズ②偽りのsânge ー赤き薔薇が示すものー  作者: 慧依琉:えいる


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第52話:ピンチの悠一。


悠一とザンテはお互いに距離を取りながら相手の攻撃のタイミングを見計らっていた。






悠一は大鵬剣を握る手に汗をかいている。それだけ緊張しているのだろう。


一方、ザンテの方は余裕がありそうだ。




悠一と目が合うと〝ニタリ〟と笑う。






〝………………なんだ?この銀の装飾が入った剣が怖くないのか………………?〟




悠一は何故ザンテが余裕をみせているのかわからなかった。自分は当たっただけでも相手を灰に出来る剣を持っているというのに………………。








「さあ、坊主。早くケリつけようぜ?!」






悠一を煽るザンテ。




そんなザンテに更に疑問が覆いかぶさる。






〝………………どうして、そうも死に急ぐのだ?〟




悠一の手に握る汗が更に増える。相手の考えが全く読めないから心理的に追い詰められている。










「なんだ!?お前っ、俺を煽っておきながら今更尻込みしてるのか?」




「………………っつ!」




「はっ、だったら!こっちから行くぜ?!」






宣言した言葉通りにザンテはまっすぐに悠一の方へと向かった。






─────そう。ザンテは見抜いていたのだ。






悠一がザンテの首に大鵬剣を突きつけた時点ですぐさま殺さなかったことで彼の中での躊躇いを見抜いていたのだ。








ザンテはすかさず悠一の目の前に飛び込んで、逆に大鵬剣が使えないようにした。彼の瞬発力は並外れたものだったようだ。戦いなれているはずの悠一でさえ、その許容範囲内に踏み込まれてしまったのだから………………。






「─────くっつ、!」






刹那!




ザンテは容赦なく悠一にパンチを繰り出す!何度も何度も!その至近距離で…。


まともにパンチを受ける悠一はなすすべもなく、最後に強いパンチが繰り出された時、その反動で悠一は吹っ飛ぶ。






──────────ドォン!








「─────ウグッ!」




悠一はお腹を押さえて動けずにいた。既に顔は血の気も引いて真っ青だ。








「はっ、どうした?あのおもちゃよりは、やり合えると思っていたんだがな。何てことないな。相手にならん。」




ザンテは悠一を見下ろしながら吐き捨てるように悠一をなじった。








「─────ツぅ…。僕としたことが、思いっきり油断をしてしまいましたね…。」






悠一の武器である大鵬剣は飛ばされた反動で手から離れて届かない。






さっきまでとは違う焦りを感じる悠一。






「お前、対戦中に何考えてたんだ?お前からは戦闘能力の高さを感じて期待してたんだが…?」




「………………。お見通しってことですか。それとも計算の上ですか?」




焦りを隠せない悠一をザンテはジロリと見て




「さあな。」




と一言だけ言ってから言い放つ。




「その状態で続ける気か?自分から死にに行くようなもんだぜ?」




それだけ悠一の状態が思わしくないのだ。彼の内臓は再び悲鳴をあげている状態だ。このまま動くと体内での出血が酷くなるのは目に見えてとれる。






「………ええ、あなたが僕の立場だったとしても、きっと同じ決断を下すのでしょう?」




悠一は顔から血の気が引いていながらも、相手にバレないようにと気丈に振舞っていたが、とうの昔にバレていたとなり、気を張る必要が無くなったからだろう。それでも最後の最後まで抗いたい、彼はそう思って答えたのだ。






「ハッ、戯言をっ!」




ザンテはそう言って悠一の目にまだ闘志が残っているのを見て悠一から一歩、後ずさりをした。悠一は見逃さなかった。




有り余った霊力を込めてザンテの足元に放つ!






…ハ─────ッ!






それに気付いたザンテは咄嗟に避けようとしたが、悠一が放った霊気は一つではなく、ザンテが逃げるのを見込んでその先にも放っていたのだ。




─────シュッツ………………。




「─────ッツ!」




ザンテが足をかばい、態勢が崩れる。








その隙に動くのも辛いであろうが悠一は立ち上がり、自身の武器でもある大鵬刀を手にするためにお腹を押さえながら歩く。




「─────そうはさせるかっ!」




態勢を整えてザンテは悠一よりも先に大鵬刀のそばへと駆け寄る!






一方の悠一は怪我の状態が酷いためにあと少しで大鵬刀に届きそうなのにザンテに阻止されてしまった。






「…うぅっ…!あと少しだったのに…!」




そこで悠一の気力が限界を超えて大鵬刀に手を伸ばした形で倒れてしまった!










***






悠一が死闘を繰り広げている間に先へと進んだ輝夜と満流は、次の敵であるドライトが待ち構えていたところに遭遇した。




「─────っつ!」




輝夜と満流は体格のいいドライトを見て一瞬怯んだ。覚悟は決めていたものの、やはり今までの敵とは格が違うというのを肌で感じる…。






「ーはっ、これが武者震いってやつか…。」




満流が強がって言っていることを輝夜は理解していた。輝夜自身もドライトはケルドアやザンテとは比べ物にならないくらい妖気が駄々洩れなのを感じていた。




「満流…。」




輝夜が心配そうに声をかける。




「ああ。気にすんな!俺には必殺技もあるんだ。お前は先にアイツの元へ進んでくれ。アイツさえ仕留めれば眷属であるコイツら皆、消滅するんだ。」




満流は輝夜の顔を見ないで早く行けと言わんばかりだ。輝夜は胸がチクンと痛んだ。




〝大丈夫だと思うけど、これが満流と最後になるかもしれない…。〟




「満流っ!」




輝夜が少し大きめに声を張り上げて満流の名前を叫んだ。思わず振り向く満流。






そっと触れた唇が二人の体温をお互いに伝え合う…。




満流は驚いたがすぐに輝夜に熱くキスを贈る。






─────そう。これは二人の儀式でもあるのだから。








ご覧下さりありがとうございます。とうとう戦いも終盤へと向かう…。はず。

大怪我をしている悠一の事も気になりますよね。

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