第47話:ザンテ、醜態を陛下に晒す
輝夜と満流が悠一と無事皆と合流した頃、ロワールの居城(洞窟)を訪れたドライトは、手前でザンテが縛られて動けない状態でいるのを発見していた。
「サンテ?!どうしたのだ!お前とした事が!」
ドライトほどではないがザンテは幹部のうちの一人だ。そんなに容易く縛られるとは思えなかったのだ。駆け寄りすぐさま縄をほどこうとするドライト。しかし彼ほどの腕力があっても力でほどく事は出来なかった。
そして彼は力技で縄を解くのを諦めて腰に着けていたソードを取り出した。
「お前の腕は信じているが…動けぬというのは恐怖を感じるものだな…。」
ザンテは屈辱的な気持ちでドライトに言った。
「は!お前がそんな弱音を吐くとはな!安心しろ。殺る時は苦しまずに送ってやるから。」
「けっ、お前がそんな冗談を言うとは思わなかったぜ。」
ザンテは軽いノリの自分とは真逆の超がつく真面目で融通の利かないドライトに強がりを言ってみた。
ドライトがザンテの身体と縄の隙間にソードを差し込む。ギチギチに絞めて巻かれているところに何やら術がかけられているせいで簡単には解けないのだ。解こうとすればするほど縄が食い込むかのようだ。
だからか、ザンテの身体に微かに切り傷が増えていく。
「ほんと、大丈夫なんだろうな?あちこちヒリッとするんだが?!」
「うるさい!少しは黙ってろ!こんな…!」
「たかが縄だろ?」
「たかが?!自分でも解けなかったくせに?!」
温厚なドライトが苛ついているのがわかる。
〝なんなんだ?あの女は。この縄に何を仕込んだんだ!?ドライトでさえも苦戦するだなんて…!〟
ザンテの額からジリッと冷や汗が流れる。ずっとこのままなのか?そう思った時、突然ドライトが叫んだ。
「ーそうだ!陛下にお願いしよう!」
「は?陛下にこのみっともない恰好をお見せするのか?!」
「仕方ないだろう。ハッキリ言って俺たちでは無理だ。」
〝チッツ、開き直りやがったな、こいつ。〟
ザンテは諦めの早いドラフトにあきれ果てた視線で彼を見ていた。ザンテは知ってたのだ。このあとの彼の行動を…。言い出したら聞かない。
ドライトはすぐさまザンテを〝ひょいっ〟と担ぎ上げ、陛下の元へと向かう。
まず向かったのは玉座の間だ。だがそこに陛下はいない。次に陛下の部屋に尋ねた。だがいない。直属の眷属のラビットが「聖痕さまの部屋」だと言ったので輝夜が捕らわれていた部屋へと向かう。
だが部屋の扉は開いたままだ。
咄嗟にザンテもドライトも〝陛下の身に何かあった〟と察した。
〝そういや俺、あの女と出くわしたんだった。陛下が見逃すはずがないのにどうして気付かなかったのだ!〟
ザンテはあの時、陛下の身を考えられなかった自分を責めた。
ドライイトはザンテを担いだまま部屋の奥へと進む。ベットの上に誰かが横たわっている。近付くと陛下だとわかった。
「─────陛下!?」
声をかけるが反応がない。驚いたドライトはザンテを担いでいた事を忘れて陛下に駆け寄る。ザンテは床にそのまま落とされる。
「─────った!」
いきなり落とされたザンテは衝撃による痛みで思わず声が出た。しかしドライトはそんな彼のことはお構いなしで陛下の元にいき、まずは息をしているか確認をした。
「ほっ、よかった。息がある。しかも正常だ。眠っておられるのだろう。」
安心したドライトはその時にザンテの事を思い出した。
「あ、悪いザンテ。」
「大丈夫だ。陛下は大丈夫なんだろうな?」
「ああ。眠っておられるだけだ。奴ら、眠らせたあとに殺す事も出来ただろうにどうしてだ?何故殺さずにそのまま去ったのだ?」
ドライトは不思議でならなかった。
「あ?ただ殺そうとしたが陛下には効かずに眠ってしまった…。そんなところだろ?」
「………………。本当にそうなのだろうか?アイツらは銀の剣を持っていたんだぞ?それで刺さねば我らは死なないとわかっているではないか。それなのに…。不思議でならぬ。」
ドライトの方がじっくりと考えるようだ。ザンテは色々考えるのが苦手なようで早く決着をつけたそうだ。
「は!とにかく、奴ら次は絶対にただじゃ済ませねぇからな!」
ザンテは受けた屈辱を決して忘れまいと心に誓ったようだ。
ほどなくして陛下、ロワールが目を覚ました。
「ん…、ん…?」
「陛下、大丈夫でございますか?」
ドライトがロワールの顔を覗き込んで声をかけた。まだ頭がぼぉ~っとしているロワールは一体何が起こったのか理解するのに少し時間がかかった。今まで千年以上こんな事はなかったからだ。そしてようやく頭が冴えてきたと思ったら
「……………は!あの女、やるな。」
どうやらこんな目に遭ったというのにご満悦のようだ。ザンテもドライトも陛下のそのような顔を見たことがなかく、驚いていた。陛下は部屋の中を見回して二人の存在にしっかりと気付いた。
「して……………。ザンテは何故そのような格好なのだ?」
ロワールに醜態を見られたザンテは全身を真っ赤にしてどこか震えているようにも見えた。
「陛下、ザンテは奴らが逃亡する時にやられたようです。」
「なんと!アイツらにやられたのか?ハハハッ、それは見ものだったろうに。ほれ、解いてやる。もっと近くに来い。」
ロワールはそうは言うがどうも楽しそうだ。
そして彼がザンテの縄に触れた途端、縄は緩みシュルシュルと解けた。
「─────!」
これにはドライトもザンテも驚いた!
「流石です、陛下!」
ドライトのロワールを敬う視線が一層輝いていた。
「ありがとうございます。陛下。」
ザンテも深々と頭を下げてロワールに対して感謝を述べた。
ロワールは目の前の二人がどんな行動をしていても全く気にしなかった。ただひたすら自分をワクワクさせるあの二人が気になって仕方ないようだった。
ご覧下さりありがとうございます。輝夜たちが無事に脱走出来たあとの話を書いております。




