第46話:決戦を控えて一大決心をしたケンとダナ。
満流が悠一たちとやり取りをしている間、輝夜は自分の心を落ち着かせていた。このまま動揺した状態ではケンとダナを人化させるための術に影響が出るかもしれないからだ。
すぅーっと息を静かに吸い込んで集中していく輝夜。
両手で持つ影切刀を胸の前で構えて刀にキスをする。
刀は光を放ち、銀の剣へと変化した。
その様子を初めて見るケンとダナ。そしてその剣を使ってどうすれば人化出来るのかわからず、ただ輝夜を信じて見ているしかなかった。
銀の剣になった影切刀の剣先を、輝夜は躊躇いもせずに自分の指先に傷をつけて剣の先に血をなぞらせる。
指先から血がポタポタ…と流れ落ちる。剣にも血が伝い流れる。その血が剣先から剣の本体を伝って持ち手の飾り部分まで流れてきた。飾り部分には十字架がはめられている。そこに輝夜の血が辿り着いたのだ。
「輝夜っ!」「輝夜さん!」
皆が輝夜の様子を見て駆け寄る。
それでも輝夜はその姿勢を崩さず、声も出さずに、ただ、静かに首を横に振り、皆の静止を計る。
集中力を途絶えさせたくないのだろう。
十字架の飾りが血のせいで一度金色に光ったあと、元の銀に戻った。
「うん、これで大丈夫なはず。」
ようやく輝夜が言葉を発したが…。
「輝夜?」
満流も心配そうに見守っている。またしても自分の身を削って何かをやろうとしているのだから。
「大丈夫よ、もう自分を傷付けたりしないから。」
そう言って。ケンとダナにその剣を順番に突き刺した。
「─────!」
ケンもダナもびっくりはしたものの、霊体の具現化なので傷付くわけでもなく、壊れるわけでもなかった。
ただエネルギーが人間の姿を形取って人々に見せていただけなのだ。輝夜はそれを理解した上で神刀だからこそ出来る人化の方法を生みだしたのだ。
剣先から輝夜の莫大なエネルギーがケンとダナに流れ込む。二人はとても心地よい温もりを感じていた。
「………………。これが、輝夜のエネルギー…。」
二人の周りには優しく眩しい光が長く漂いながらやがて二人を包んでいった。
ただ見守るだけの満流と悠一。
確信を持って二人を待つ輝夜。
光の中でケンとダナはどうやら創造主に会っているようだ。
輝夜は創造主に会いに行った時に「自分の願いを構築出来る力」も、もらいに行ったのだ。それは普通の人間には出来ないが輝夜のように霊力と妖力を持つ半人間だからこそ出来る事だった。
「だからと言って、私は私だけどね。」
輝夜はぼそっと呟いた。
自分が人間ではないということを一度も悲観したことはない。幼い頃に母が必死で守った自分を、しいては母をも否定する事になるからだ。だから輝夜は自分を否定するのではなく、自分だからこそ出来ることが沢山あるのだという事に気付いたのだ。誰にも恥じることはない。それがきっと彼女自身の強さでもあるのだろう。
二人を包む光がキラキラと眩しく輝いている…。
中にいるケンとダナは輝夜の想像通り、創造主と会っていた。
「お主たちは主人を決めたのだな…。」
「ええ、私は元々彼女の僕。ですが今よりももっと彼女の力になりたいのです。」
「私も…。本来、彼女とは対する黒のナイトとして存在していますが、彼女を幼い頃から見てきて私も彼女の力になりたいと思います。」
二人は真剣に創造主に答える。
「だが、そうなると今のように自由な霊体ではいられず、肉体を持つということは肉体が傷付いても自力で回復が難しくなり、死をもいつかは迎えるということだが、それでよいのか?」
「………………。はい!覚悟してます。」
二人が声を揃えて言うと創造主は大きく頷いて、
「では、望むままに…。」
二人に創造主から最後の祝福である光を贈られた。それは目を開けているのが辛いほどの眩い光。だが、とても温かく優しい光だった─────。
その光から解放された二人は本当に肉体を持った人間になっていた。
どうやら二人は〝ビショップ〟として創造主から迎え入れられたようだ。
「本当にもう後戻りは出来ないんだからね、自分たちの命を優先にしてよ!」
輝夜が心配そうに二人を見つめて言うと
「ああ、努力する。我らがクイーンよ。」
そう言って輝夜の手を取り手の甲に口付けをした。
「─────‼」
その様子を見ていた満流は心中穏やかではない。だが、あの行為は男性が女性に忠誠を違うための行為だとわかってはいるが…。モヤモヤしている。
しかも輝夜に対しては行動を起こしているが自分へは?と考えるとより一層モヤモヤが大きくなる。
そんな満流の心境を見透かしているのか、ケンとダナは満流のそばに歩み寄ってきた。そして二人は輝夜と同じように満流に対して跪き、手を胸に置き、
「これで我らも正式なあなたの僕です。キング。我らはクイーンと、あなたに忠誠を誓います。」
そう言って二人は頭を垂れた。
流石の満流も慌てたが、輝夜が満流を見て静かに頷いていたので
「ああ、よろしく頼むよ。ビショップのふたり。」
満流のその言葉を聞いて驚いたのは悠一だった。ケンとダナは創造主から聞いていたので自分たちの立場はわかっていた。そしてキングとクイーンである満流と輝夜は自分たちの立場から二人の立場を見抜いていた。
だがナイトである悠一にはそれはわからないのだ。
〝目の前にいる人物が仲間かどうかすら僕には見抜く力がないのだな…。〟
少し肩を落としている悠一にケンとダナは優しく肩をポンと叩き、
「私達だって同じだよ。立場を見抜けるのはキングとクイーンのみだ。安心しなさい。」
ケンとダナに言われて悠一は、ぱあっと表情が明るくなった。きっと安心したのだろう。
「さあ、それじゃあ、夜の決戦までにみんな、しっかりと休息を取りましょう!」
「輝夜、俺、腹減ったんだけど…。」
「自分で何とかして……………。私、さっき凄い力使ったから眠くてもうダメ…。」
「………………。ああ、そうだったな。わりぃ、ゆっくり休めよ。」
「うん…。」
そう言ってそれぞれが自分の場所へと戻った。ケンとダナは悠一と共に寝泊まりするようだ。
ご覧下さりありがとうございます。霊体のケンダナが輝夜たちのために永遠の霊体から限りある肉体へと希望しました。彼等にはどんな能力があるのでしょうか。




