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【完結】刻の檻刀シリーズ②偽りのsânge ー赤き薔薇が示すものー  作者: 慧依琉:えいる


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第45話:今夜が決戦?…備えるためには…。



チチチチチチ………


ピチュピチュ…






山の中で鳥たちのさえずりが聞こえてくる。




─────完全に朝を迎えた。




今から太陽が沈むまで彼等は外に出て来ることはないだろう。きっと決戦は今夜になる。






「陽が昇りましたね。」






悠一が静かに言った。




「腹減ったな。」




満流が返す。






噛み合わない会話に隣で輝夜がくすくすと笑う。さっきまでの深刻な空気が満流の一言でいつもの日常へと戻ったからだ。




〝ふふっ、満流はわざとなのか知らずなのかはわからないけど、こういう重たい空気を変えるのが得意ね。〟








輝夜がにこやかに笑っているのを見て悠一は微笑み、




「そう言えば、この数日間、あなた方はインフルエンザということで学校へは届けております。」




これについては輝夜もどうなっているのか気にはなっていた。




〝流石悠一くんね。〟




彼の機転に感謝した。すかさず満流も悠一に言葉をかける。輝夜は2人のやり取りを黙って見ている。






「おお!気が利くじゃん!ってか、そんな偽造出来んのか?」




「ダメですよ、もちろん。ですが、緊急事態でしたし…。」




「ハハッ、流石にサボるつもりはねぇよ。」




「………………。」




満流の言葉に黙る二人。






「は?二人とも、俺がそんな卑怯な真似するとでも思ってんのか?」




慌てる満流を見て輝夜は噴き出した。








「そんなわけないじゃん!私も悠一くんも満流の反応を見て遊んでるだけよ。」




輝夜が満面の笑みで答える。




「チェッツ。惚れた弱みだな……………。」




小さく呟きむくれる満流。








二人のやり取りを羨ましそうに少し離れて見ている悠一。そこには悠一に割り込めない二人の世界があったからだ。


だが、悠一は顔をあげて、二人に声を掛ける。




「さあ、今日こそ学校へ行ってもらいますよ?」




「えぇーっつ!?俺たち昨日から寝てないんだけど…。」




「では、帰宅してから2時間ほど睡眠をとりましょう。」






悠一の言葉には容赦がなかった。だがこれには輝夜も黙って見ている訳にはいかず




「あ…、流石に悠一くん、それだと今夜に影響が出るかもしれないわ…。」




満流を庇うつもりで言ったのではなく、ただ今夜が最終決戦だと思って挑むのであれば学校よりもまずは体力温存することを優先すべきだと思ったのだ。








「はぁ~~~っ、仕方ないですね。輝夜さんが言うなら、今日は学校を休んで今晩に備えるということで。」




悠一の言葉に満流は喜ぶが、同時にとても不満な顔をしている。




「なあ、お前って輝夜が言うと速攻〝yes〟になるのに、俺だとそうじゃないのは何でだ?一応、俺ってキングなわけでお前の主人でもあるんだぞ?」




「さあ、どうしてでしょうか。キングだとは思っているのですが、きっと戦闘態勢に入ってるわけではないので同級生の満流として接してるからでしょうね。」




「ふ~~~ん、」




嬉しいのかよくわからない感情を満流は持て余していた。だが、彼にとってはそれは重要な事ではなかった。今、目の前にいる悠一と自分の答え、そのものが全てなのだと思ったからだ。




「ま、とにかく早く帰って、飯食ったら寝ようぜ!」




「そうですね、」




三人は急いで夜月神社へと戻って行った。










***




ジャリッ、ジャリッ……。境内の中の敷石の音が懐かしくさえ感じる。






狛たちの石像がある場所に近付くと、ケンとダナが人化して待っていた。三人の気配が近付いてきたのを察知したからか、あの後ずっとこの姿でいたのか…。二人は三人を見て立ち上がり手を広げて出迎えた。






「おかえりなさい、キング、クイーン、そして悠一。よくぞご無事で。」




「ただいま。ケン、ダナ。心配かけたわね。」




輝夜は涙ぐんでいた。本当に家に帰ってきたんだという安心感からだろう。産まれてからずっと住み慣れたこの神域だ。全身で帰ってきたことを感じていたのだ。






「そうだわ。ケン、ダナ。あなたたちのその姿って霊体の具現化だったのね。気付かずにごめんなさい。」




「いいえ、私達が言わなかったのですから…。」




輝夜は首を横に振って二人を見つめ




「二人を人化する方法がないわけではないの。だけど、そうしたら今度は元の姿に戻れなくなっちゃう…。」




輝夜の真剣な表情にケンとダナはお互いに顔を見合わせてから静かに頷いて、輝夜に答えた。


「俺たちはそれでもいいと思ってるよ。」




二人の返事を聞いて、輝夜は決心したようだ。


「わかったわ。」






輝夜が返事をしてからおもむろに神刀「影切刀」を取り出した。




満流は久しぶりに目の前で輝夜が刀を取り出す姿を見て相変わらずの神々しさにうっとり見惚れていた。






影切刀を両手に構え、




「キング、どうか祝福を…。」




「え…、今、ここで?」




「………………。」




輝夜の言うキングの祝福とはキスのことだ。知り合いの前でする事ほど恥ずかしいものはない。満流が戸惑っていると輝夜は顔を真っ赤にして目を閉じて待っている。


その姿を見て満流も覚悟を決めて




「チッツ。」




小さく舌打ちをして輝夜にキスをした。




〝大体、創造主は何だってこういう設定にしたんだ?!そりゃ俺はキス出来るから嬉しいけど、正直、ちょっと物足りないというか…。下手したら押し倒してしまい兼ねないんだよなぁ…。〟




満流の考えが唇を通して輝夜に伝わっているようで輝夜は耳まで真っ赤になって、〝トン〟と満流を押しのけた。




「もうっ、何考えてんのよ?」




真っ赤になった輝夜を見て




「は?何だよ…。いつものキスじゃん!」




「いや…、その、力とともに満流の考えが流れ込んでくる…」




輝夜の言葉に今度は満流も顔を真っ赤にしていた。その二人の様子を見て周りも満流が何を考えていたのかを想像しているようだった。




「ちっ、違うから!お前たち想像力逞しすぎだろ???」




「いや…、満流さん、僕たち何も言ってませんから…。」




悠一が覚めた目でピシャリと言い放った。




「あ…。」




満流が一人慌てて動揺していた。






ご覧下さりありがとうございます。今夜が決戦になるだろうと見込んだ三人。そして輝夜は霊体の具現化であるだけのケンとダナに人間化を提案し……………。

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