第44話:平気そうに見えて心に闇を抱えている悠一
三人の冷めた視線を感じたフラッパはドラドラに喋るのをやめるように言った。そして輝夜たちに向かって宣戦布告を言い渡したのだ。
「そういうことだ!」
その言葉を皮切りにフラッパが輝夜に向かって突き進む!それを悠一が輝夜の前に出て霊力で盾を作り、フラッパの攻撃を防ぐ!
「な!お前ら三人って、汚いぞ!」
「もう、何を言ってるのかしら?さっきから三人いたわよ?」
輝夜は呆れた顔でフラッパに言い返した。フラッパはどうやら悠一の存在に気付いていなかったようだ。
「君らってどうやっても僕の存在を見くびるね、この前の華奢な双子といい…。」
悠一はどうやら自分の存在が目に入っていない事に怒りを覚えていたようだ。
「君の相手は僕が受ける!輝夜さんはいざという時のために待機してて!それでいいよな、満流?」
「そうだな、俺もそう思うぜ。」
満流は既にドラドラに視線を向けて戦闘態勢に入っていた。輝夜は視線を合わさなくても満流の気持ちが伝わってくる。悠一だって同じだった。
「わかったわ。あなたたちに任せるわ。」
戦闘は二人に任せて輝夜は他に邪魔がはいらないかどうか気配の範囲を広げて黙って二人の戦いを見ることにした。
〝今、この手の中にある刀はキングの祝福を受けてからでないと銀の剣にはならない。満流から祝福を受けるのはどうやら戦いが終わらないと無理っぽいわね…。〟
輝夜の目の前で二人がそれぞれ戦っている。霊力を駆使して戦う悠一、ほぼ格闘に近い戦いを続ける満流。
〝満流ってば、武器はどうしたのよ…。せっかく創造主様に力を授かったのに……………。さっきのアレ以外にもあるでしょうに、何故出さないのかしら…。〟
キングの権限で銀の剣を使えるのは全部で三回だけだ。それだけ元々人間の満流にとっては偉大すぎる力だからだ。だが、それを補うために補助的に使える力も考えていたのだ。更に満流自身が剣を収納するスペースがない為、輝夜に預けているという剣もある。
輝夜は小さく息を吐き、
〝仕方ないなぁー。〟
そして自身の手の平から一つの剣を取り出した。
「満流ーっ!」
その声に振り向く満流。
────シュッツ
剣を満流の方に投げた輝夜。咄嗟に満流は剣をキャッチする。
────パシッツ!
「サンキュ!」
その様子を見たフラッパはジリッツと足を後退させた。その剣には銀が使われているのだ。
同時に
「悠一くんも!」
そう言って悠一に同じように剣を投げる輝夜。
「輝夜さん!」
剣をキャッチして悠一はニッコリと笑う。
「そうですね、流石にコレでないと決着はつきませんね。」
その言葉を発して改めてドラドラに向き合った。ドラドラもその剣が何で出来ているのか察したようだ。
「マテマテ、それだと俺たちは……………!」
そう言った瞬間、悠一の手にあった剣はドラドラに対して真っすぐに突き貫かれていた!
血が飛び散るでもなく、ドラドラの身体は瞬時に砂に変わり、剣先から崩れていった。
「ーはあ、流石銀の剣だ。一瞬ですね。」
悠一は落ち着いた顔で言った。輝夜は悠一の冷めた表情から彼は戦い慣れているのだろうと悟った。そして満流の方に視線を向けるとこちらもフラッパを追い詰めていた。
「お前たちには悪いが、これはやるかやられるかになるんだ。すまないな。」
「ハッ!そんな綺麗ごと言っていたってお前だって命が欲しいだけだ!早くトドメを刺せ!」
ドラドラはまるでいつかこうなると覚悟を決めていたかのように満流に言い放ち、煽った。満流は一瞬目を瞑ってからドラドラに剣を向けた。
剣先からドラドラも砂に変わっていく…。
輝夜も悲痛な顔をしていた。満流もそれに近い顔だ。だが悠一だけはケロっとしている。
「なあ、悠一って…その、こういう状況を何度も繰り返してきたのか?」
満流が気まずそうに悠一に問う。
山の中だ。辺りは静かだ。通り抜ける風が砂になったドラドラとフラッパを静かにどこかに運んでいく…。
その様子を見守るように立つ三人。
「………………。そうですね。いつか僕の過去をお話します。僕はあなたたちに会うまでに僕のキングとクイーンを探して彷徨ってましたから…。」
悠一の言葉には重みがあった。それは彼の顔を見ればわかる。輝夜と満流はお互いがいつもそばにいて助け合ってきたのだ。だが、悠一は自分たちに出会う前、きっと一人で戦ってきたのだろう。しかも悠一にとってのキングとクイーンは実質どちらももうこの世にはいない。新たに彼のキングとクイーンに自分たちがなったとしても彼の過去はそうとう辛く苦しい日々だったのだろうと二人は感じていた。
そこには彼が言った〝いつか〟という言葉があったからだ。悠一が平気な顔をしているわけではなかった。彼はもうそれを通り過ぎてしまったのだ。
そう思った時、輝夜はロワールの事を思い出した。
〝そう言えばアイツもそういうところ、あったな…。〟
三人は夜が明けて辺りが明るくなっていく空を見上げた。
ご覧下さりありがとうございます。奴らの眷属たちは全滅しました。これで残っているのはロワールとその直属の部下である三人だけ。




