第42話:心配になる悠一の状況…。
二人が進むにつれて、どんどん外の空気を感じるようになってきた。
さっきまでいたロワールの幻影居城は血の匂いがどこか充満していた。嗅ぎ慣れない二人にとっては吐き気を催す一歩手前で、風に乗って流れてくる外の空気を敏感に感じ取った。
「あと少しだ!このまま誰にも見つからずに外に出れたら何とかなるだろう。」
「そうね、早く悠一くんたちと合流したいわ。それにしても、どうして連絡が入らないのかしら…。」
「そうだな、この念珠にも何も音沙汰がないんだ…。まさか!」
「────!」
二人はピタリと立ち止まってしまった。
悠一が連絡をしようにも出来ない状態なのではないかと思ったのだ。
つまり、悠一たちに何かあった。
アイツらが悠一たちを攻撃しているのではないか…。
輝夜も満流も額に汗が流れてきた。
〝────早く合流しなくては!〟
二人は合流することへの気持ちがより一層高まった。それはまだ確定してはいない。もしかしたら単純に妨害されているだけなのかもしれない。だが、二人は最悪な方へと思いを寄せた。
無事に外に出たところでザンテに出くわした。
「おや!?何故お前たちがここにいる!?見張りのあいつら二人はどうしたんだ?」
輝夜たちはキョトンとしていた。
自分たちが脱走してきたというのに、すぐさま捕まえようとせず、まずは部下の心配をしているのだから。魔族にとって部下はあくまでも使い捨てのはず!それなのに…。
〝このひと、吸血族じゃなかったら普通にいい人間だったのかもしれない…。〟
輝夜はそう思うと胸がチクンと痛んだ。それは満流にとっても同じだったようで、彼の表情からも戸惑いが感じられる。
〝一体、こいつらの背景はどうなってんだ!?〟
だが敵に対して情けは無常だ。
わかってはいるが、二人は目の前の敵が人間らしさを見せるたびにその気持ちが揺らいでしまうのだ。
〝チッツ、俺もこんなことで……、情けねぇな。〟
満流は気持ちがぶれている事に対して自分を少し責めていた。だが、ザンテがこのあといきなり戦闘態勢に入ったとしたら?それはとてつもなく脅威だ。輝夜はまだ万全ではないだろう…。
〝油断できねぇ…!〟
満流は冷や汗をかきながら戦闘態勢を取る。─────輝夜にまで緊張感が伝わっていた。だが、肝心の輝夜の持っていた剣は時間が経過したことで元の刀に戻っていた。
〝────やばいな…。あの仕組みがバレたら絶対ぇ、キスさせてくんねえよな。〟
満流は焦った。
輝夜も唯一の武器である影切刀が今は元の姿であることが敵にバレないようにしなくてはならない。奴らにとっての唯一の脅威であるからだ。
「なんだ?お前たち、ここまで出てきたわりには随分と余裕がなさそうだな。何か隠してるのか…。」
〝─────────っ!〟
ザンテの気が部下の双子から自分たちへと移った瞬間を指す言葉だった。
「ケッ、何でもねーよ。それよりもあの陛下とやら、見に行った方がいいんじゃねーか?」
満流がザンテをけしかけた。
「ん?陛下か?お前たちごときにやられるわけがないではないか。」
笑いながらザンテが言う。構わずに満流は続けて言う。
「お?だったらどうして今、俺たちがここにいると思ってるんだ?」
ザンテに対して煽る満流。このまままともにザンテと対戦することは、かなりのハイリスクだ。彼の動揺を誘おうとする。するとザンテの表情が険しくなった。
「────!それもそうだな。だが!お前たちをそのまま逃がす訳にはいかないのでな。」
そう言っていきなり満流へ飛び掛かった!満流の気をそらす作戦は失敗に終わったようだ。
「おっと。」
満流は自慢の瞬発力で逃げたが、ザンテはすぐさま体制を整えて再び満流へと飛び掛かる。
〝ここでやられてたまるか!捕まったら元の木阿弥だ!〟
必死で逃げる満流。そこに輝夜がザンテに目掛けて霊気を放つ!
────ビシッツ!ビシッツ………………!
当たったからと言って灰になるわけではないが、ちょっとした傷にはなる。
「────な!女っ!2:1は卑怯だぞ!」
「知らないわよ。そっちが化け物級体力なんだもの…。」
「は!俺とまともに勝負しようってか?」
ザンテは今度、輝夜に狙いを変更した。元々陛下の要望はおもちゃである満流よりも輝夜の方だからだ。
「アイツに煽られてつい、忘れていたが、陛下はお前を所望していた。お前だけでも連れ戻す。」
ザンテはそう言って輝夜めがけて突進するが、
「させるかっ────!」
後ろから満流がザンテに飛び掛かった!
満流に乗りかかられてバランスを崩し、倒れ込むザンテ。輝夜はそのままザンテに対して霊力をフルにして手足を縛ってその場から動けないようにした。
「トドメを刺さないのか?」
満流が絞り出すようにしてその言葉を言った。
輝夜は首を静かに横に振った。
「別の方法があればいいなと思ってる。それに、早く合流しに行きましょう!」
輝夜の言葉には一切の迷いはなかった。またコイツと対戦する事に絶対なるであろうに、それでも共存、もしくは元に戻す方法を考えようだなんて…。輝夜らしいな、と満流は思った。
「よし、行こう!」
二人は悠一と早く合流をしようとその場を離れて駆けて行く。そしてとうとうロワールの幻想居城から脱出した!
外はまだ暗かった。
「こんな所に作っていたのね。」
二人は宙に浮いている。
この前、創造主の元に行った時に輝夜が手に入れた力の一つだ。
元々鬼の血を引いている輝夜だからこういう妖術的な事も出来るのだ。だからなのか、吸血族たちの悲しみを感じてしまうのだろう。例え彼等自身がその感情を無くしていたとしても…。
ご覧下さりありがとうございます。何とかロワールの住処から脱出が成功しました。宙に浮いて逃げるだなんて、中々出来ません。




