第41話:二人で脱出を試みるが…?!
パドリスを銀の剣で刺して葬り去った満流。彼の横顔は何も語らない。ただひたすら冷たく砂になったパドリスを見ていた。
輝夜自身も満流に〝命を奪う〟という行為を肩代わりさせたことで今回の敵である彼等に対して、自分たち二人は運命共同体であるのだと改めて思い知った。
〝白のキングとクイーンである私達。一体何故そうでならなければならなかったのか……………。いつかわかる日がくるのだろうか……………。そしてアイツ。ロワールだってそうだ。何故アイツは吸血族になったのだろうか……………。〟
輝夜は砂になったパドリスの残骸を見て考えていた。
満流がスッツと立ち上がった。
「行くぞ。」
輝夜も小さく頷いた。
パドリスの残骸の砂……………。その上には輝夜が取り寄せた小さな花が置かれていた。せめてもの弔いのつもりなのだろう。
二人はロワールが目を覚ます前にこの場所から出たいと考えていた。二人だけでは相手が集まってきた時に大勢になり、勝てる見込みがないからだ。一旦外に出て皆と合流するのが今は一番の対策だと考えている。
だが、パドリスの姿を探して今度はケドリスがやってきた。
────またか!
輝夜も満流もまた命を奪わなければならないことに罪の意識が芽生えていた。
〝輝夜の気持ち……………。少しはわかったよ。さっきなんてほぼ無抵抗だったんだもんな。後味が悪いぜ……………。〟
流石の満流も複雑な心境のようだ。だが、やらねばやられる。剣を持つ手に力が入る。その手の上に輝夜が手を乗せてきた。
「………………?輝夜?」
満流が輝夜の顔を見ると彼女は静かに首を横に振った。
「だめ、私がする。」
輝夜はまっすぐに満流を見て言った。その瞳の奥には揺れる気持ちが隠れている。わからないわけがない。
「無理すんなって。」
それでも輝夜は首を横に振る。
「だめ。あと2回しか使えないんだよ?これからの方が使わなければならない時がくるわ。私なら大丈夫、満流に背負わしてしまった、その事の方が辛いもの……………。」
「…輝夜……………。」
満流自身も、いつまでも使い続けられる力ではなかった。それだけ普通の刀を銀の剣に変えるのには特別な力が必要なわけで例えキングといえど、3回分しか使えないのだ。
輝夜はニコッツと笑って
「だからお願い……………。私のキング。私に勇気と力を与えて…。」
「…ああ。俺のクイーン。」
満流は輝夜にそっとキスをした。震える輝夜の身体をしっかりと抱き寄せて創造主に力を与えてもらってもまだ自分が頼りないことに悔しさを感じながら…。
そして二人は離れて、お互いの瞳を見つめ合って、静かに頷いてケドリスへと向かった。
輝夜がケドリスの正面から向かう。そしてその隙に満流はケドリスの背後へと回る作戦だ。
「…なっ!お前っ。よく出てこれたな!?」
ケドリスは驚きつつも輝夜を捕まえて部屋に閉じ込めることを考えた。が、背後に回っていた満流に両手を取られて手が出せない。
その状況で輝夜が持っているのは〝銀の剣〟
ケドリスは目の前に見えている状況を痛いほど理解した。
「ま、待ってくれ!パドリスは……………、パドリスも。もしかして…!」
輝夜は剣を持ったままピタリと立ち止まった。
「……………。残念だけど、砂になったわ。」
「………………!パドリスがっ!」
ケドリスは俯いてその場に崩れ落ちた。
「わかった……………。僕を刺してくれ。アイツのそばに行ってやりたい。」
そう言ってケドリスは無抵抗になった。
〝彼らは本当に愛し合っていたのね……………。〟
輝夜は胸を締め付けられた。愛する者を亡くした悲しみで生きている事も辛いのだろう……………。それが痛いほど目の前のケドリスからは伝わってきたからだ。
「ごめんなさい。」
その言葉を発して、輝夜は目をギュッツと瞑って剣を真っすぐに突き刺した。
チョコン、と当たるだけで効果のある銀の剣だ。
すぐさまサラサラサラ……………とケドリスも砂に変わっていった。
その様子を見て
「ふふ……………。ほんと、あっけないのね。」
その輝夜の言葉の重さを満流も共に捉えていた。
「お前はさっき、俺に〝命を奪う行為を背負わせた〟っつったろ。俺だってお前に背負わせちまってるんだ。俺たちは運命共同体だ。」
満流の言葉で輝夜はホッとしたのかツツーっと涙が頬を伝った。
「まだだ。泣くのも喜ぶのも、まだ早い。」
「そうね、」
手の甲で涙を拭って輝夜は口角を上げて小さく深呼吸をした。
「行こう!」
決意を秘めた目だ。
「ああ。悠一たちが待ってる。」
二人は灰となったケドリスを後にしてひたすら洞窟の外へと目指して進んだ。
今が一体何時なのか、そんなことすら頭にはなかった二人だ。
この先にはザンテがいるかもしれない。二人は用心しながら進んだ。
〝それにしても…たしか私に部屋を用意したアイツ直属の眷属ラビットはどこにいったのかしら…。〟
輝夜は逃げながらラビットを見かけないことに違和感を覚えた。
ご覧下さりありがとうございます。パドリスを葬り、ケドリスまで葬ることになった二人。彼等の強い絆の前にしっくりこない気持ちが二人の心の中でもやもやしていた。だが、二人にはこれ以外に最善策はなかった。




