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【完結】刻の檻刀シリーズ②偽りのsânge ー赤き薔薇が示すものー  作者: 慧依琉:えいる


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第38話:ロワールへの呪いが完成した夜

今回は残酷なシーンが入っております。表現が下手なのであまり感じないかもしれまんが、内容を理解した時に、残酷なシーンに気付きます。ご注意下さい。

*後半のミリアナが登場するあたりからラストに向けてです*



母の部屋で母とロワールは暫く黙って見つめ合っていた。

ロワールにとって母は大切な存在で、そんな母に自分と同じ思いをさせたくないという気持ち、そして出来れば生きていたいという気持ち。それらが入り混じっていた。だが、このまままた人間を襲うのかと思うとやりきれない…。それも事実だ。


そして母の方はというと、愛する我が子が人間を襲う事で心が壊れていくのを見ていられない。だからと言って自分の手で我が子を葬ることは身を切る思いだ。万一、ロワールの返り血を自分が浴びても女性は吸血族にはならないのだ。女性は吸血行為によってその眷属になるしかないからだ。既に彼女は夫の眷属であるから夫の死後24時間が経過すると自分も砂になって消えてしまうのだ。やるなら今しかない…。だが……………。



二人ともそれぞれ思いが深すぎて見つめ合ったまま言葉に出来ずにいた。空気が重く二人にのしかかっていた。




だが、時間は容赦なく、彼等の気持ちを踏みにじる────!




吸血族に目覚めて最初の吸血行為からもう8時間を過ぎているのだ。ロワールの身体の奥底から何かムズムズする感覚が全身を襲い始めた。


〝な…。なんだ?〟


その感覚に戸惑っていると全身が身震いし始めた。すると同時にロワールの意識が飛んだ…。


刹那─────!

母、ユリアの目の前にいるロワールは既にロワールではなくなっていて、吸血族としてそこに立っていた。


「あぁ…!間に合わなかったのね…。せめて私の手で…。」


ユリアがロワール目掛けて決意の剣を差し出した瞬間、ロワールの姿は無くなっていた。



─────そう、吸血族として再度目覚めたロワールは目の前の母を襲わずに驚く速さで母の部屋を出て獲物を狩に行ったのだ。きっと本能的にここにいることよりも離れた方がいいと察したのだろう。



〝あぁ…あぁ…ロワール、許して…。ロワール…。〟


もう自力で立ち上がる事さえ出来ないユリアは唯一のチャンスを逃してしまったのだ。これでもう自分の愛する息子は永遠に人間の血を求めて貪る魔族と化してしまったからだ。その運命から解放するための唯一のチャンスを、自分が迷ってしまったために失ってしまった…。ユリアはそう考えてこれからの息子の事を思うと哀しみで自分を保っていられなかった。




そんな時、ロワールはというと、昨夜のように出会った人物を片っ端から襲って行く…。


もちろん、父の執務室にいるエドモンド伯爵もだ。吸血族と化したロワールに敵う相手などもはや誰もいなかったからだ。今回もほんの数時間で40人を襲っていた。


城の中には半数以上の従者たちが突然消えたことになった。城の中には砂と人の形を残した服と靴だけがそこらじゅうに残っていた。それを見つけた他の従者たちは何が起こったのかわからないが、恐怖を抱いて城さがりをして逃げ出して行った。



ロワールは自分の部屋で意識を失っていた。




そして次に目を覚ました時はまたもや8時間近く過ぎていた。

ロワールは微かに城の人間を襲った記憶が残っていた。これでは生きていけない…。だが、死ねない…。


その時、母の事を思い出した。



「お母様!」



母の元へと急いだが、時既に遅しだった。



母は砂に変わり果てていた。



「………………。うそだ…。お母様、お母様っ!」



哀しんでいる時であっても身体の中が「血」を欲している。


「ーくそっ!あれだけ襲って飲んだのに、まだ足りないのか?!いつになったら落ち着くんだ!」


ロワールは全身が身震いし、必死に自分に抗おうとしたが、またもや自我が消えていくのを感じた…。だが、今は夜だ。城の中に人間はめっきりと減ってしまった。


そんな時、廊下を歩いていた妹のミリアナに出くわした。



「お兄様?」


ミリアナは何も知らずに兄であるロワールに近付いてきた。


「お兄様、お母様のところに行きたいの。お父様が今日は帰らなくてまだお母様にも会っていないわ…。」



ミリアナは兄に向かって話をするが、兄からは何も返事がない。


「………………。」



いつもと様子が違って不思議に思うミリアナ。


「お兄様?」


兄の顔を覗き込む。しかしそこにはいつもの優しい兄はいなかった…。口元には大きな牙が鋭く光っていた。



「────ひぃっ!」



ロワールの吸血族としての顔を見てしまったミリアナは一瞬、悲鳴をあげた。だが、すぐさまロワールの左手で口元を塞がれてしまったのだ。



「お前はよほど大切な存在とみた…。この者への呪いの仕上げにはもってこいだろう。さあ、その小さな目を思いっきりひん剥いてコイツの顔を見てやれ。我の中で薄っすらと意識は残っているからな。コイツの精神を破壊するにはもってこいだろう。さあ!」


そう言って吸血族化したロワールはおぞましい顔をミリアナの顔に近付けた!


ミリアナは恐怖におののいた顔をして身体は全身が震えていた。その瞳からは涙がじわりと滲み出し、ツツ────っと溢れてきた。そしてロワールの手にあたった。だが、今のロワールには何も感じないのだ。それどころか口を押さえつけている左手でそのままミリアナを宙へと担ぎ上げたのだ。


ガッ────!



ミリアナは恐怖で言葉が出ない…。その小さな身体はロワールの左手で口を覆われた状態で持ち上げられて、いつその高さから落下するかわからない恐怖もあったのだ。そんな中、目の前には大好きなお兄様の姿をしたおぞましい存在が声を高々にしてミリアナを見ながら言い放つ。


「さあ、見るがいい。今よりお前は満月以外は子供の姿になる呪いにかかる!解けるのは唯一、聖痕の持ち主だけだ。」


ロワールの中にある吸血鬼としてのロワールが宣言するかのように言い放ち、右手をグッと握ってそのまま宙に突き出した!





──────────ザシュッツ!




それはミリアナの小さな身体を貫く音だった…。




瞬時にあたりに大量の血が飛び散った!そしてその血を浴びたロワールはそのまま血をすすり始めた。



「あぁ…。これほどの美血はないな…。」



そう呟いて口元をペロリと舐めた。





────ハッツ!




ロワールの意識が戻った瞬間だった。



目が泳いでいる…。この惨状を見て何がどうなっているのか、必死で状況を整理しようとしているのだった。だが自分の右手はぬるぬるした液体がまとわりつき、更には左手の方から何やら生温かくぬるっとしたものが流れてくるのを感じてその先に、視線を向けた。


ロワールは目を見開き、すぐに手を下した!



「────ミリアナ!」


辺り一面のむせ返る血の匂い…!

ミリアナの小さな身体が拳大の大きさで貫かれてそこから大量に出血していた。すぐさま状況を理解した。それもそのはずだ。自分の右手がぬるぬるして赤く染まっていたのだから…。


「僕が…!僕がミリアナを…!!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ─────っ‼」



ロワールは発狂しながらその場で泣き崩れてしまった。






ご覧下さりありがとうございます。表現が相変わらず下手なので残酷なシーンも上手く書けたかどうか…。難しいですね。しかしテーマがテーマだけに必要なシーンでもありましたので、頑張って書きました。

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