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【完結】刻の檻刀シリーズ②偽りのsânge ー赤き薔薇が示すものー  作者: 慧依琉:えいる


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第34話:戦いを目前に迷う輝夜



悠一との通信を切ったあと、輝夜と満流はお互いに顔を見合わせた。長く共にいたからこそお互いの考えていることが…。そして共に目覚めた事でキングとクイーンとしてより一層心の繋がりが深くなった。

長時間の通信は敵に察知される可能性が高い。だからと言って外との繋がりを切るのは不安があり、出力の小さい念珠で悠一とはいつでも繋がるように輝夜は念珠に対して術を施した。

満流は黙って彼女のする事を見つめていた。

術が完了したのか、輝夜が顔を上げたとき満流は小さく息を吐いて



「しかし……、本当に何でも出来ちまうのな、お前って。」


唐突に輝夜に向けて言った。嫌味でもなんでもない。ただ感心しているだけなのだ。

だが、輝夜は違った。



「は?何言ってんの?そんな何でも出来るわけないじゃない。」


「だってさっきの……………。」


満流はどうして輝夜がそんなにムスっとしたのかわからなかった。心の底では繋がっているのに、こういうデリケートな問題はどうやら苦手なようだ。

今度は輝夜が小さく息を吐き、


「あれだったら満流だって方法がわかれば出来るでしょ?使うのは霊力だし。」


「そうなのか?今度教えてくれ!」


突然満流の表情が明るくなった。調子のいい満流に対して輝夜は逆に冷静になった。



「まったく……………。」



輝夜は満流があまりにも能天気なものだから思わずため息が出た。

今、こうしてゆったりした時間を取れているが、いつロワールがやって来るかもわからないのだ。確かに強力な結界を張っているが、ロワールだって成人の姿をしていたのをぼんやりと記憶している。だったら少し時間がかかったとしてもきっと結界を破って突入してきてもおかしくはない。


〝今すぐに突入してこないってことは……………。多分、私の意識は戻らないと踏んでのことよね。〟


輝夜はそれならその状況を利用すべきじゃないかと思い始めていた。その方が相手を油断させれるはず。それに今は満流がそばにいるし、他のメンバーも集まってくるのなら勝算は見えてくる。


だが輝夜は一つ引っかかっていた。



「ねぇ、吸血族って突然なるのかしら……………。」


「は?何言ってんだ?んなこと、俺にわかるわけないだろ?」


「…だよね。」



輝夜はひょっとしたらロワール自身も何かの被害者なのではないかと思い始めていたのだ。それは意識を失う直前に見た彼のあの表情が原因だ。

確かに人間の血を貪る悪魔だ。だがロワールは人間の精神を壊してしまうが命までは奪わない。それは永続的に血を飲むためなのかもしれないが…。


〝あのニュースになっていた犯人は少なくともロワールではなさそうね。だったら一体……………。〟


輝夜は考えれば考えるほど疑問が浮上してきた。だがその問いを一体誰に投げかけろというのだろうか。敵であるロワールに言ったところで答えてくれるはずがない。捉えて強制的に聞き出すのか……………。それでも答えないだろう。


「もし…。もし、人間化する方法があれば、その方がいいのかしら…。」


輝夜がポツリと呟いた。すかさず満流は聞き返す。


「は?お前はアイツらと共存する方法を探してるのか?お前をこんな目に遭わしたんだぞ!?」


輝夜に詰め寄る満流。その行動には自分の恋人に度重なる吸血行為を行ったことに対しての怒りと彼女を傷付けて心を破壊しかけたことへの怒りだった。到底許せるはずがない!

そんな満流の勢いに輝夜は言葉を詰まらせながら答える。


「………………。わからないわ。確かに辛かったけど、だからと言って理由もなく命を奪う事は出来ないでしょ。」


「理由なら充分すぎるほどあるじゃないか。ニュースにもなってんだぞ?被害者だって出てるんだ。」


「………………。それは…。」



一歩も引かずに詰め寄る満流に対してとうとう輝夜は返す言葉が見つからなかった。


〝確かに被害者まで出てるんだもの。退治するのが当たり前よね。頭ではわかっているのに何故だろう……………。どうにか出来ないかと模索してしまうのは…。〟



それは輝夜自身もわからない感情だった。見た目が人間の姿をしているから同情しているだけなのか…。だが、時々輝夜の前で一瞬だけ見せたあの顔が輝夜の頭から離れなかったのだ。



このまま無言でいるのが気まずい輝夜は話題を変えることにした。


「さっきも話したけど…、吸血族にとってこの薔薇の痣は聖痕だと言っていた。これって何に役に立つんだろう…。」


「あの陛下って奴も知らないのか?」


「そこまで話出来る状況じゃなかったのよ。」


「ーチッツ、そうだった。アイツ速攻で輝夜を襲ってたんだった。許せねぇ!」


「ちょっと満流。襲うって言い方気を付けてよね。吸血されただけで…。」


「似たようなもんじゃねーか!お前が傷付いたんだから。お前の身も心も…!お前に触れたってだけでも許せねぇのに…………!」


「………………満流…。」


輝夜の隣に座る満流の拳が震えている…。怒りと輝夜を大切に思うが故の震えなのだろう。彼は輝夜の顔を覗き込んで、今度は心配そうに見つめて言う。


「痛かったんだろ?怖かったんだろ?」


「………………。うん、痛かったし、怖かったよ。」


「もう絶対ぇ、お前を手放さねぇ!」


そう言って満流は輝夜を抱きしめた。輝夜も満流の腕の中で安心に包まれていた。しばらく二人はお互いの心が落ち着くまで抱擁していた。




落ち着いてきた時、輝夜は思いついたかのように満流に提案をする。


「そうだ。今度ロワールがやってきたら私、まだ意識ないように演じてみようかと思ってるのだけど。」


「んー、それいい案だけど、俺が無理。」


速攻で断る満流に輝夜も何かを思い出したようだ。


「あ…!」



そう、満流は小学校でも中学校でも演劇には向いていなかった。それに普段からも隠し事が出来ないタイプだ。



「じゃ…、じゃあ、仕方ないわね。正々堂々と立ち向かいましょう。」


「そうだな。ほんでもってお前が気になってること、聞き出そうぜ?」


「────満流!」


輝夜の顔からは安堵と感激で瞳が優しく揺らいでいた。満流は最終的にはいつだって輝夜の味方だ。


「お前が共存の道を探すってんだったら俺も協力するしかないな。」


そう言って満流は照れくさそうに笑った。



輝夜は満流がそばにいてくれるだけで何でも出来てしまいそうに思えるほど安心しきっていた。






ご覧下さりありがとうございます。準備が整いつつあります。ロワール率いる吸血族と輝夜たちの戦いが始まるのでしょうか……………。

次回、ロワールの秘密に迫ります!

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