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刻の檻刀シリーズ②偽りのsânge ー赤き薔薇が示すものー  作者: 慧依琉:えいる


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第3話:敵はまさかの…!



ニュースにこそならなかったが、実際には昨夜は一人の女性が襲われていた。


それに気付くのは最早時間の問題だった。なぜなら襲われた柳川かおりは輝夜たちの通っている塾の後輩だったからだ。



きっかけは何気ないことだった。

かおりはあの日以降、何度も彼に狙われて血を奪われていたのだ。そのせいで彼女は段々貧血になっていった。


その日は塾で彼女の方が終わり、入れ替わりで輝夜たちが教室へと入ろうとした時だった。


彼女から〝ふわっ〟とした例えようが難しい香りがした。と感じたと同時に彼女が貧血によりその場に蹲ってしまったのだ。すぐそばにいた輝夜は彼女に声をかける。


「ねえ、大丈夫?」


輝夜は驚いた。目の前で倒れたかおりはとても青白い顔色をしていたからだ。教室内はざわついていた…。帰宅しようとしていたが何が起こったのか気になる生徒もいて皆、遠くから見守っているようだった。



「先生、この子貧血を起こしてるのかもしれません。」


輝夜は塾講師に伝えると講師もそばに駆け寄った。すると何故か隣ににた満流が名乗り出てきたのだ。


「俺が送って行く。お前はここで講義を受けていろ。」


「え、でも…!」


「大丈夫だ。サクッと送ってくるよ。こいつん家知ってるから。」


────チクリ。輝夜の胸が小さく痛んだ…。


〝どうして満流が彼女の家を知ってるの?〟だけど今はそんな気持ちになってる場合じゃない…。



目の前で満流は彼女を背負って塾を出た。輝夜は静かにその後ろ姿を見守っていた。






満流がそのまましばらく歩いてあの公園のそばを通りかかった。


「…ん?」


すると目の前に小さな男の子がいる事に気付いた。


〝金髪の碧…。あれ?さっきまで誰もいなかったように思ったが…。ま、今はコイツの事もあるし、構ってらんねぇな。〟


そう思って男の子を無視してスタスタと歩いて行く。すると無視された男の子の方から声をかけてきた。



「ねえ、」


それでも満流は無視を続ける。


「僕、そのお姉ちゃん、知ってるよ。」


その言葉で満流はピタリと止まった。〝コイツの知り合い?〟そして男の子の方に振り向いて


「で?」


と一言返した。男の子はビックリした。まさかここまで無関心な人間がいるのかと…。


「お前、僕のこと、迷子じゃないかとか気にならないのか?」


そう言って関心を引こうとするが満流にとってはどうでもいいことなのでそうは上手くいかない。



「別に。俺、急いでるんでガキんちょに構ってらんねぇからな。」


スルリと男の子を交わして満流は彼女の家を目指した。だが、男の子が黙って通すわけがない。



「なあお前。その女届けたあとまたここ通るよな。」


ピクリ…。


今の言葉で満流は反応した。


〝────ナンダ?こいつ。さっきはお姉ちゃんて言ったのに今、その女と言ったな。〟


満流は警戒しながら振り向かずに答える。



「さあな、お前に答えてやる義理はないと思うが?!」


「ふぅ~ん、僕待ってるから。絶対戻って来てよ。」


「はっ!迷子は大人しく交番行ってろ!」


そう言って満流はスタスタと歩いて行く。その後ろ姿を男の子はニヤニヤしながら見送った。



「ふぅ~~ん、こいつは暫く退屈しなくて済みそうだ。」







その時一瞬空間が歪み、女性の声がした。同時にその姿が露わになった。


「陛下!」


「ケルドアか。どうだ?」


「はい、対象者はこの近所にいるようです。」


「ほぉ、それは楽しみだ。俺は今、新しいおもちゃを見つけたんだ。」


「まあ、それは良かったですね、陛下。そこに私も混ぜては下さいませんの?」


ケルドアがそう言った。灰色の瞳がギラギラと揺れる…。



「そうだな。今夜はお前に譲ってやろう。楽しみは後に取っておくのがいいからな。その間に俺はちょっと食事に行ってくるとするよ。」


「ごゆっくり。」


「ああ、もうじき、ここを男が一人通るだろう。ソイツと遊んでやれ。俺の代わりだと言ってな。」


「ええ、陛下。」


そして男の子の姿はその場から消えた。まるで砂のように…。残ったのはケルドアだった。陛下が言っていた新しいおもちゃが気になって仕方ないようだ。

〝陛下が言っていた新しいおもちゃ。それはいたぶって遊べという意味だ。殺さずに…。〟


しばらくするとそこを満流が通りかかる。


「ハッ、さっきのガキんちょいないじゃん、自分で交番にでも行ったか。」


そう呟いた時だ。ただならぬ気配に満流は立ち止まった。



「────なんだ?!」



辺りを見回すが、暗く気配はするが音はしない。


「この感覚はなんだ?」


満流は今までに味わったことのない感覚に戸惑っていた。スッツと体制を整えて様子を見る。そして気配を感じる方角に向かって霊札をサッツと投げる。



────スタタッ…!



数枚の霊札がその位置に刺さる音がした。だが、確かな手応えは感じない。


「………………?!」


悪鬼ではない、違う気配。身構える満流。



だが、目の前に〝バンッ!〟とケルドアの姿が明らかになった。



灰色の髪と灰色の瞳、服は深紅のドレスにハイヒール。そしてニッと笑ったその口元には鋭い牙が光って見えた。



「…な!…っ吸血鬼か!?」


満流は瞬時にその姿を見破った。



「ほほぅ、陛下が言っていた遊び甲斐のあるおもちゃとはやはりお前か。」


ケルドアは興奮してそう言った。



「はぁあ?おもちゃ?!…それに陛下と言ったか?あのガキんちょがか?」


身構えつつ冷静に相手から情報を聞き出そうとする満流。



「お前っ、陛下に対して何て言い草!」


「知らねぇよ!見た目がガキんちょだから仕方ねぇだろ?」


満流の言うことは至極当然だ。誰もが見た目で判断するだろう。



「陛下は1026歳だ。」


「あぁー、吸血鬼は寿命が長いもんな。で?何でお前らがここにいんだよ!?」


「おしゃべりはここまでだ!」


そう言ってケルドアは満流に襲いかかる!だが満流は瞬発力を活かして攻撃を避ける。


「お前、普通の人間じゃないな。」


「へへっ、残念だったな。」


そう言って満流は再度霊札をケルドアに向けて放つ!



が、ケルドアはその髪で札を弾き飛ばした。


「お前如きの相手は我が僕、バモアスとココシアで充分だ!」


ケルドアがそう言うとバモアスとココシアが突然やってきた。



「バモアス、ココシア。頼んだぞ!」


「はい、ケルドア様!」


そうしてケルドアはその場から姿を消した。



「ちょ…!ズルいぞ!部下に任せて逃げるだなんて!」


満流が手を伸ばしたが、ケルドアも砂のように消えてしまったからどうしようもなかった。



「チッ、仕方ねぇな。お前たちの相手は俺だ。」


そう言って満流はバモアスとココシアに立ち向かうことを決意した。早くコイツらを退治して輝夜の元に戻りたい、その一心だった。







ご覧下さりありがとうございます。とうとう満流が敵に遭遇し、奴らが吸血鬼だと見破りました。

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