第24話:その勇気ある一歩を踏み出して…!
二人がコッソリ出かけたあとのこと
輝夜は眠りに就こうとしたが、何だか眠れずにいた。それでも心を落ち着かせるためにと、静かに本を読んだりして過ごしていた。雨脚は激しいが雷が鳴っていにだけマシだと思っていた。
本を読むのにも飽き、少し眠気を感じたので布団の中で横になったものの、それでも中々寝付けずにいた。ふと思いついた。
「満流は起きてるかな?いつも深夜までゲームしてるって言ってたし…。」
あまりにもの寂しさと不安から輝夜は満流の部屋を訪ねることにした。
「満流?起きてる?」
だがいくら部屋の前で声をかけても返答がない。何気にドアを触ると扉が開いた。
「あっ…。って、満流?」
部屋の中は暗い。
〝今日はもう寝ちゃったのかな?〟
「満流…?」
一応、そっと声を掛けるがやはり返答がなかった。少しだけ部屋に入ってみたがどうやら満流はいなかった。
〝この時間だともうお風呂は出て来てるはずだし、鍵も掛けずにどこに行ったんだろう…。おかしいわね…。悠一くんの部屋にでも行ってるのかしら?〟
そう思って既に夜も遅い時間だけど悠一の部屋も尋ねることにした。だが悠一の部屋も真っ暗で声を掛けても返事がなく、玄関に行ってみると二人とも靴がなかった。つまり、外にいる。
「こんな雨の夜に二人ともどこで何してるのよ?」
傘を手に取って外に出て境内を探してみるが見当たらない…。
その時、輝夜は一つの思考に辿り着いた。
「………………まさか!」
──────ドクン!
輝夜の胸が大きく鳴った…。
輝夜は迷った。雨はほんの少し先の景色でさえ鈍らせるほどの土砂降りだ。このままだと雷が鳴るのも時間の問題かもしれない。そう思うと身体が震え、足がすくむ。
────その時だった────
──────────ピカッツ…!
ピシ────ンッッツ……………!ゴロゴロゴロ……………ドォォォォーン!!!!!!
「────キャッ!」
輝夜は稲光と轟きから恐怖で思わず叫んでその場にしゃがみ込んでしまった!
武造作に落ちる傘……………。
その雷は、光ったと同時にすぐ裏手の山へと稲光を放ちながら落ちた!
その雷鳴を聞いて身体がガクガクと震える輝夜……………。
〝怖い怖い怖い怖い怖い怖い……………!〟
その場に蹲って小さくなって自分の耳を塞ぎ固まる輝夜。
あの日の出来事がトラウマとなって輝夜の思考を停止する。ガクガクと震えながらも思い出すのは満流のことだった。いつだって不安な時にそばにいた満流。こんな雷雨の時には走って輝夜の元に駆けつけてくれたほどだ。
〝満流…。怖いよ、怖いよ満流…。助けて……………。〟
怯える輝夜に雷は更に追い打ちをかけて雨の夜空を暴れ回る。
ドォォォォ────ン!!!!バリバリバリ……………!!
より激しさを増していく。その空を見ながら輝夜は光るたび、轟くたび、肩をビクッツと振るわせて涙目になりながら耐えていた。
〝────満流…!〟
心細く彼の名を呟く輝夜。その瞳からは耐えていた涙がポロリと溢れて頬を伝う……………。
〝……………どこ行ったの?満流…。まさか悠一くんと二人で……………?〟
二人がもしあの場所へ行ったのなら…。もし奴らと遭遇したら……………。もし奴らが多勢になっていたら……………。
もし満流に何かあったら……………!
そう考えると輝夜は何かを決意するかのように自分の手をギュッツと握り絞めて、次の瞬間、立ち上がり身体が勝手に動き〝その一歩〟を踏み出していた。
ドォォォォォーン!バリバリバリバリ……………!
「キャッ。」
空はまだ稲光が轟いている。
「怖い!だけど…!二人が危ない!」
二人の危機に意を決した輝夜。それでも雷は怖い。だけど満流を失うかもしれないと思うと、もっと怖いということに気付いたのだ。
恐怖と不安と恐れが彼女に襲いかかる!だがその足はもう止まらない!
彼女は身体能力強化を使って急ぎその場所へと向かった─────
***
そして現在、
満流も悠一もザンテの攻撃により二人揃ってあばら骨を折られて動けずにいる。満流はキングとしての能力の一つ、自己治癒を発動しているが、ザンテはそれが終わるまで待ってくれず、次の攻撃をしてくる!
「今度は足だ!」
ザンテの声が裂けるように響いた次の瞬間空気が歪んだ。
低く沈みこんだ体制から、獣のような踏み込み。
狙いは明確─────────満流の足!
地面をける音すら置き去りにする速度でザンテが間合いを詰める。
─────逃げ場はなく、回避も、防御も間に合わない──────!!
─────その刹那!
「────そこまでよ!」
鋭く凛とした声が、その場を断ち切った!
─────閃光が駆け抜けて銀のナイフが一直線に空を裂く!
回転する刃は雨の雫を受けて鈍く輝きザンテの進行起動を正確に貫いた。
ギィン─────!
甲高い金属音とともにナイフはザンテの眼前で地面い突き立つ。
ザンテの動きが止まる。
それに触れてしまうと一瞬で灰に変わってしまうからだ!
「輝夜っつ!」
「輝夜さんっ!」
満流と悠一が輝夜の名を呼ぶ。
「二人ともっ、私、怒ってるんだからねっ!滅茶苦茶…雷、怖かったんだからっ!」
輝夜は涙を流しながらそこに立っていた。幸い、このあたりは既に雷は止んでいた。輝夜が到着したあたりから雨脚も少しマシにはなっていた。
「すまない。」「すみません。」
二人は声をそろえて謝った。
三人がやり取りをしているその後ろでザンテはニヤリと笑いながら
「ほほぉ~、お前が生け捕りにしろと言われてる女か。男どもよりも面白そうだな。」
満流の時のように輝夜をもジロジロと見た。
その様子を見て満流は思わずカッとなった。
「てめっ!何ジロジロ見てんだよ!!?」
満流は自分の事以上に怒った!自分の彼女が嫌らしい目で見られてるからだ。だが、輝夜だって負けていない。
「なに?変態。そんな見ないでよ。」
仲間が動けないほど痛めつけられているというのに恐怖すら感じていない輝夜を見たザンテはニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「ハハハッツ!物怖じしないその態度、陛下もきっとお気に召すだろう!」
「ゴチャゴチャ言ってないで決着をつけるわよ?!」
そう言って輝夜は身構えた。態度はでかく振舞ってはいたが、満流と悠一があれだけ傷を負っているのを見て、額からジリッと冷や汗が出て来る。
二人に視線をやると満流も悠一も双子に捉われており、身動きが出来なくなっていた。
「女、強がっているのも今のうちだ。あの二人、早く治療した方がいいだろう。お前が俺についてくるならアイツらは今回見逃してやろう。」
ザンテの提案にすかさず反応を示す満流。
「はぁ?そんな事させるか!輝夜っ!俺たちの事は構うなっ!」
その声に悠一も同調した。
輝夜は満流を見た。満流は必死に首を横に振っている。
次に悠一を見る。悠一は苦しそうに呼吸をしていた。
「……。」
輝夜は唇を噛んだ。
そして静かに顔を上げた。
「それ、どこまで保証されてるの?私を捉えて彼らを見殺しにするだなんて許さないわよ!?」
自分ならきっと殺されずに済むだろうし、機会を伺って脱出することも出来るかもしれない。
「─────輝夜っ!」
心配する満流と声も出せない悠一。
「ああ、保証する。」
ザンテの言葉に迷う必要はなかった。
「………………わかったわ。陛下とやらに会えばいいんでしょ?」
「ほほぉ、物分かりのいいお嬢さんだ。」
「そんなお世辞は結構よ。それよりも二人を早く解放してよ。」
「仰せのままに!行くぞ!ケドリス、パドリス!」
輝夜はザンテと共に満流たちに背を向けた。
「待てッ!待て輝夜っ!!」
ザンテが二人と共に輝夜を連れてその場から消えてしまった。
「待てっ!そんなことのために俺たち二人で来たんじゃない!輝夜っ!輝夜────っ!」
満流は悲痛な叫び声をあげた。身体の痛みではなく心の痛みだ。
「────クソッ……………!!」
絶対に守ると誓っておきながら進んで敵に行かせてしまった…!
満流の自己治癒が完了したらそのまま悠一のそばに寄り添い、彼に治療を施した。自己治癒能力は相手にも発動させることが出来るのだ。
二人は自分たちの無力さを痛感し、悔しくて一言もしゃべることが出来なかった。
ご覧下さりありがとうございます。今回は輝夜がトラウマを乗り切るシーンを重点的に書きました。上手くかけたかどうか……………。




