第25話:この薔薇の痣の意味は…?!
ザンテの力で連れて来られた場所はどこかの洞窟のようだった。一瞬で移動したので輝夜はここがどこにあるのか、さっぱりわからなかった。
ザンテ、輝夜、そしてその後ろを双子たちが輝夜を見張るように付いて歩いている。洞窟の中へと進むに連れてここが洞窟だった事を忘れてしまうかのような空間に出た。
〝いきなり洋館のような造りになったわね。まるで創造主のいるあの場所のようだわ……………。いきなり場所が変わるのね…。どういう仕組みなのかしら…。〟
輝夜は冷静に周りを見て歩いていた。今までに誰にも出会っていない。
奥へと進むとまるで中世の玉座のような場所に出た。
〝こういうのってテレビのドラマとか漫画でしか見たことがなかったけど、こんな場所に…。幻影なのかしら…。〟
輝夜がそう思っていると小さな男の子が出てきた。
〝え…?男の子…。〟
するとザンテと双子はその子供に向かって深くお辞儀をして言った。
「陛下。ご指示のありました〝女〟を連れてきました。」
〝────陛下?!この子供が!??〟
輝夜はジッツと子供を見た。金髪碧眼、きっと大きくなるにつれて美男子になるだろうなと思いつつ、「陛下」とよばれているこの者が敵の大将だということだ。きっと見た目ではわからない大きな力を秘めているかもしれないと思って警戒することにした。
「ほほぉ、皆の言葉から出て来た〝女〟か。」
そう言ったあと、ズカズカと輝夜の近くまで歩いてきてじっと輝夜を見た。
「人間にしては綺麗な顔をしておるな。だが、お主、何者だ?」
輝夜はこの男はどこまで見抜いているのだろうかと思ってその質問には答えなかった。彼から感じる今までの奴らとは違う圧倒的なオーラ。輝夜は背筋がゾクリとした。
「は?まさか口がきけぬと言う事はないな?」
その問にザンテが答える。
「はい、その者、見た目に似合わず喋り方が下品です。」
「────!?下品て何よ!!」
輝夜は思わず反論してしまった。
そして慌てて〝しまった〟と自分の手で口を覆った。
その様子を横目に見ていた陛下が
「はっ、どうやらお主も我らのおもちゃにしてやろう。」
その言葉を受けてまず双子が輝夜に飛びついた!
首元を隠すように巻いていたスカーフがケドリスの爪によって引き裂かれて地面にヒラリと落ちた。
輝夜の首元が露わになった時、陛下と呼ばれる子供が驚いた。
「────お前っ!その痣はなんだ!?」
輝夜は動揺した。この痣を知っているの?と。
「知らないわよ。突然出来ていたんだもの。」
落ち着いて答える。
「お前、その痣は我ら吸血族の為の聖痕だ。吸血族に噛まれると普通血族に、眷属となる。だが、まれにならずに人間のままでいられる者がいる。そしてその者は我ら吸血族の救世主となると言われている。それが何故お前のソコにあるのだ?!」
目の前の陛下と呼ばれる男の子が驚きながらそう言った。
「私は一度あんたの被害者に噛まれたわ。そのあと、この痣が出た。これが何なのかわからなかったから、知ってそうなあんたに聞きたかっただけよ。」
輝夜はこの場に吸血族が4人いても堂々としていた。
もし彼等に襲われて吸血されたとしても柳川かおりのように対応出来るだろうと思っていたからだ。
「なら、ソレの使い方を教えてやろう。」
陛下がそう言うと輝夜の首に噛みついた!
「────ッツ!何すん…!」
────ポタタタ……………。
輝夜の血が吸われ、垂れた血が地面に零れる。吸血されるのは初めてではない。だが、あのときと明らかに違う…。
身体を押さえつける力が人間とは違い、振りほどくことが出来ずに輝夜は吸われるがままになっていた。そのうち、全身の力が抜けていくのを感じていく…。。
〝柳川さんの時とは全然違う……………。気をしっかり持たないと幻覚が…!〟
純吸血族には吸血中に相手に幻覚を見せる作用を起こせる。これにより吸血される側は痛みを伴わず、逆に依存効果を発揮してしまう。輝夜は本能的にその依存を避けるために気をしっかり保とうとして拳を握りしめていた。
が、力つきて地面に伏せてしまった。
輝夜がどれだけ強く力を込めて握りしめていたかはその爪先が手のひらに傷を作って少し血が滲んでいることで察することが出来る。それだけしていても意識は遠のいていく。
それと同時に
目の前でさっきまで小さな男の子だった陛下が青年の姿に変化した!
「ハハハッ!これは良い!今までの餌とは格が違う!量が少なくてもこれだけのみなぎるパワーと満腹度!さすが我らの救世主だ!まだ呪いは解けていないが本来の姿を一時的にでも保てるとはな!」
輝夜の体内では自己治癒が開始される。その速度は以前よりも速くなっている。きっとそれだけ早く治さねばならない状態なのだろう。それとも聖痕の力が働いているのか。
輝夜は陛下の言うことに文句をつけたくて起き上がろうとするが〝くらっ〟と酷い眩暈だ。そんな輝夜にお構いなしに
「なるほどな。」
その青年はしゃがみ込み、冷酷な表情のまま輝夜の顔を指で持ち上げた。
グッと輝夜を食い入るように見てニッツと笑い
「確かに面白い。我の吸血にも耐え、怯えるどころか、泣きもしない、命乞いもしないだなんて、人間の女とは思えんな。」
輝夜に興味を持ってしまった。
そして青年は続ける。
「我の名は〝ロワール〟齢1026歳だ!お前もこれから年齢は重ねても身体はそのまま永遠の時を生きるだろう。我らの女神であり、我の餌であり我の伴侶だ。名は何という?」
輝夜に向かって言った。
「は?…伴侶?誰がそんなもの、なるもんですか!」
輝夜はそんな存在になるつもりは毛頭ないから答えなかった。するとザンテが
「確か〝輝夜〟と。あのおもちゃがそう申しておりました。」
────ザンテめ。いらないことを!輝夜はザンテを睨み、悔しさに再び拳を強く握った。ポタリと血が床に落ちた。
「ほぉ、輝夜と言うのか。綺麗なお前に似合う名前だ。お前の為の部屋を用意させよう。」
そう言うと陛下は直属眷属のラビットを呼んで部屋を用意させた。
そしてぐったりしている輝夜をひょいっと抱き上げた。
「は…離してっ!」
輝夜は抵抗しようと腕を動かすが力が入らない。その状態でも必死で抵抗を試みようとする顔を見てロワールはニヤリと笑っていた。
ご覧下さりありがとうございます。とうとう輝夜は自身に現れた薔薇の痣の意味を知ります。それも身を持って…。




