表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】刻の檻刀シリーズ②偽りのsânge ー赤き薔薇が示すものー  作者: 慧依琉:えいる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/68

第21話:雷雨の悲劇!


今回、真ん中あたりから残虐なシーンがあります。気を付けて読み進めて下さい。



犠牲をこれ以上出さない為にも自分が囮になると決意した朝。


梅雨が近いせいか雨が降り出した。西の空を見てもぶ厚い雨雲がずっと先まで続いている。天気予報を見ても同じで今夜も雨のようだ。更に不運なことにここ数日雨が続く予報となっていた。


輝夜は躊躇している。


頭では今夜から決行すべきだと理解している!だが、心の奥底であの日の光景が焼き付いて恐怖で動けないでいる…。




「……………。」






そんな輝夜を見かねて、満流が輝夜に近付き、肩に手をポンと置いた。


「そんな焦んなって。雨が降ったらあいつらも嫌かも知んねぇし…。な?」


そう言って満流ははにかんだ。


輝夜は冷や汗をかいていた。何も知らない悠一は黙って二人のやり取りを見ていた。




「ほら、学校。そろそろ出ないとやばくないか?」


満流にそう言われて輝夜も悠一も慌てた。


雨が降って歩き辛いけど、駆け足で学校へと向かったので遅刻はせずに済んだ。




三人で登校するとみんながこっちを一斉に見ていたが、輝夜の心境はそれどころではなかった。今夜から決行するか気持ちが落ち着いてから決行するか…。


暫く悩んだ。




〝数日はこの天気だと予報でも言っていたということは、それだけ被害が拡大する可能性もある。満流は私のためにああ言ってくれたけど本当は今夜から決行すべきだと…私だって思ってる…。〟






────そう。輝夜のトラウマは実の母が亡くなった時の記憶だ。




ずっと封印されていたので忘れていたが、あの日初めて覚醒した時に母は病気で亡くなったわけじゃないということを思い出した。ハッキリ思い出したのは、その後、あの〝無〟の空間に行ったあとからだった。


誰にも心配をかけまいとそれを隠してきた。それでも流石に満流にはバレてしまった。それは満流もあの〝無〟の空間から帰ったあとに思い出していたのだ。だが輝夜の気持ちを尊重して黙っている。






輝夜は振り返る────


     あの日のことを……………。






あの日、

梅雨に入って暫くした雨の夜。


当時、私はまだ5歳だった。


夜中に目が覚めると母の姿がなかった。

怖くなって私は部屋を飛び出した。



いつも母がよく行く本殿へと続く道には屋根がついており、境内の奥へとふらふらと歩いて行った。


元々雷は得意ではなかった。だけどあの時は母の姿がないことに恐怖を覚えて必死で探していた。


「ママ…。どこ…。」


今から思えば、あれは最後の悪鬼を倒すための戦いの最中だったはずだ。だが、母はキングと出会えていなかった為にその力を存分に発揮出来ず、封印をするしか選択肢がなかった、母の命をかけた儀式だったはずだ。



〝あの日、…私が母を探して出て行かなければ…。もしかしたら母はまだ…。〟








あの日の母は黒の装束を着ていて、いつもよりも黒々とした長い髪がゆらゆらと空に揺らめいていて、周囲は炎が舞っていた。




そんな中、悪鬼に立ち向かう母は今までに見て来た母の中で一番綺麗だったことはとてもよく覚えている。


「悪鬼!そなたを封印する!覚悟っ!」






そうして母が空を指で切った時、何もしらなかった私は母を見つけた喜びで母に向かって「ママー」と手を伸ばして駆け寄ったのだ。




「──────────!?輝夜っ!」




その瞬間のことはゆっくりと、ひとコマずつ時間が流れるかのように今でも忘れる事が出来ない。






「来ちゃ駄目!────危ないっ!」








──────────ザシュッツ……………!!








母は儀式の途中だったのに。

悪鬼が私に鋭い爪を立てて狙って来たので咄嗟に私を抱き寄せて、自分の身で私を庇った。その瞬間、悪鬼のその鋭い爪は母に向かってその美しく細い背中を引っ掻いた!






ピシッ────ッ!ゴロゴロゴロ…!!背後には雷の轟き……………!








「──────────グハッツ……………!!」






攻撃を背に受けた母は悲痛な顔で呻き声をあげた────────!




「────────────ッ!!…ママ?!…ママッ!!」



私はその瞬間を目の当たりにし、何度も何度も「ママ、ママ!」と繰り返していた。




母の背中からポタポタと血が地面に落ちていく…。




「ママッ!ママッ!!」






必死に叫ぶ私…。そこにふとよく知った声がした。




「かぐや、ここにいたんだ……………。」






そう言って、その日に泊まりに来ていた満流がやって来た。共にこの現場を目撃してしまったのだ!




「────これは……………!!」


「満流くん……………輝夜をお願い。」






覚悟を決めた顔で母が満流に私を預けてから悪鬼の方へと戻って行った。私は傷ついた血だらけの母の背を見ながら何度も






「ママ!ママ!やだ、行っちゃ駄目!ママっ!」




そう叫んでいた。だが、母は振り向く事なく悪鬼に立ち向かって行った。




すぐに母は封印の儀式を再開する、が中断したことと、傷を負った分、更に力が必要となった。そのために母は自分の全ての力を出すために命を懸けることにしたのだ。




目の前で母が血を吐きながら悪鬼を封印する姿…。雨がザーザーと激しく降っていて雷もずっと鳴っていた。ただでさえ怖い夜。それなのに母が傷付き死にゆく姿を見てしまった5歳の少女。


目の前には悪鬼が物凄い形相で苦痛の悲鳴をあげながら封印されていくその姿…。たった5歳の少女には衝撃が大きすぎる夜だった。






それ故、そのおぞましい記憶を最後の力を振り絞って母は封印したのだ。愛する我が子の笑顔を守るために…。






それが全てだった。




母の死の真相。

そしてそれに自分が関わっていたこと、それでも自分のために記憶を封印した母の愛…。輝夜は全てを思い出したあの日。とても泣いた。一人でこっそりと…。




流石に最近ではあまり泣かなくはなったが、雨の降った雷の日は今も苦手だ。



囮作戦の最初の日。そんな状態で決行すれば失敗する確率が出てくる。それを恐れて満流も輝夜の気持ちが落ち着くのを待っていてくれてる。






〝私は自分に向き合うべき時なのかもしれない…。〟




輝夜は今日は授業どころではなかった。各教科担当もいつもと違う輝夜の様子に困惑しながらも普段はキチンと授業を受けているので黙認していた。








***




放課後、夜月神社へと帰宅した三人はダイニングに集まり




「今夜はやめよう!あと数日、待ってからでも全然遅くない!だから中止だ。」




満流がそう言った。


事情を知らない悠一は一瞬たじろぐが、満流の行動には必ず輝夜の気持ち優先だということを知っているので何も言わずに満流の意見に同調した。




「そうですね。こんなに雨が降ってると視界も悪くなりますし……………。」


「ああ。だから4日後に雨が止むのを待って作戦を決行しよう!」






満流の言葉に悠一が頷く。そして二人は輝夜の方を見た。




「………………あ…。」




輝夜はまだ自分の気持ちの整理が出来ていないことで二人が気を遣ったんだとすぐに理解した。




「ごめん……………。ふたりとも。朝はあんなに張り切って言ったのに……………。」




輝夜は顔を上げることが出来なかった。




「あ?何言ってんだ。そんな事、気にすんな!それに俺、雨ってなんつーか、うっとおしくてさ、やる気出ねぇんだよなぁー。」




満流があっけらかんとそう言った。




「あはは!実は僕も濡れるの、あんまり好きじゃないんですよね。だからよかった!」




満流の言葉に悠一ものってきた。




輝夜はふたりの優しさに胸の奥がじわっと暖かくなった。




「………………!ありがとう、ふたりとも!」






輝夜が二人にお礼を言うと二人は満面の笑みで輝夜を見た。






ご覧下さりありがとうございます。今回、輝夜の母が亡くなった時を中心にお届けしました。輝夜にとって雷雨はトラウマなんですよね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ