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【完結】刻の檻刀シリーズ②偽りのsânge ー赤き薔薇が示すものー  作者: 慧依琉:えいる


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第20話:これ以上犠牲を出さないために…!



翌朝の社務所のダイニング。


輝夜が料理をし、悠一がそれを四等分に分け、満流が3人分だけテーブルへと運ぶ。残り一つは輝夜の父用だ。

輝夜の父は朝の本殿の掃除、神様へのご挨拶とお祈りをしているから三人とは別で朝食を摂るのだ。三人は朝食後に境内の掃除をするのでちょうど入れ替わりになるのだ。


そんな時、テレビでは新たな被害者が出たといういニュースが流れた。






「──────────!!」






三人は途端にテレビに釘付けになった。








「チッツ。俺たちがいない間に…!」




「奴らの出没する場所をどうにか事前に手に入らないでしょうか…。」




「んなの、無理だろ…。」




満流と悠一がこのあと言い合いになったのはご想像にお任せするとしよう。








「ねぇ…。もしかしたら、これって被害者のエリアが固まってない?」




輝夜は地域の地図を広げてそう言った。






「ほら、こことここと、それにここと…。」




そう言って今までに被害に遭ったと報道されてきた場所を丸で囲んでみた。






「あ!」




悠一が気付いた。




そしてすぐに満流も気付いた。悠一が確認のために説明を始めた。






「学校から見て西に街中、つまり繁華街になるから被害が少ないです。だが、東側は山が近いから被害が多い。つまり、奴らは山の中に住んでいると推測されます。」




「私のところも満流のところも山というよりは丘といった感じだものね。奴らの隠れられそうなとこなんてないわね…。」




「ああ、だったら、これから毎日あの公園近くを監視していたらいいんじゃないか?あの場所は特に2回も遭遇してるしな。」




────そうだ。闇雲に捜索したって探し出せる確率は低い。だが、あの場所ならまた遭遇するかもしれない確率が高い。


少し目途がついて安心する三人。だが、輝夜はそれだけでは終わらなかった。








「私が囮になるわ!」




真剣な眼差しで静かにそう言った。



テレビではまだ他のニュースが流れている。だが、三人がいるこのダイニングはまるでテレビがないかのごとく静かに感じた。


たった一言、声を発するのがこんなにも難しいのか、と満流は思った。大事な輝夜が囮になるだなんてもってのほかだ。だが他に方法がないのもわかる……………。それでも……、だ!


満流が慌てて輝夜を静止する。






「駄目だ!奴らの本格的な狙いはお前なんだから!」




悠一も激しく頷いている。だが輝夜は引かない。




「だからじゃない。それが一番確実でしょ?!」




輝夜は本気だ。その瞳には一切の迷いはなかった。強く輝くその瞳を見るとたじろいながらも誰もが輝夜の言葉と志を否定する事が出来なかった。






「……………私だってわかってる。とても危険なことだって。────だけど!これ以上放っておくと奴らが野放しになって更に被害者が拡大してしまうんだもの!それを阻止出来る可能性があるんだから、見過ごすわけにはいかないわ!」




その決意を聞いて




〝輝夜だって怖いはずだ……………それをアイツは…。〟


満流はギュッツと拳を握った。






「はっ、仕方ないな。お前の思うようにやれ。俺は何があってもお前を守る!ただそれだけだ!」




「ええ、そうですね!僕たちはあなたについていきます。クイーン!」




満流の言葉に同調する悠一。彼も本当は止めたいはずなのに、輝夜は決して止まらないということを知っているから半ば諦めモードなのだろう。






悠一はあの〝無〟の空間で創造主への掛け合いに「黒」から「白」へと変更してもらっていた時、彼自身、今までのようにどこか無気力な自分ではなく、心の奥底から力がみなぎってくるのを実感していた。


〝主人がいるってこうも違うのか…。〟


悠一は強く実感していた。






「ふふっ。頼もしいわね、私の周りのメンズは!」




そう言って輝夜は笑った。




満流はドキッとしたが、それは悠一も同じだった。だけど決して報われない思い、悠一自身はそれを前よりも心の奥底から理解していた。「白」へと変わった途端、不思議と、満流や輝夜の傍にいると心の底から安心するのだ。




〝輝夜さん……………僕のお慕いするクイーン。あなたの為に僕は存在する…。全てはあなたの希望を叶えるため。〟




悠一も新たに決意をする。






「さて、それで?囮になるのはわかった。だが、どういう計画なんだ?まさか考えてないだなんて言わないよな?」




満流は輝夜のことだ。既に考えていると見込んでそう話を切り出た。






「流石満流ね。じゃあ、私の計画はこうよ!」






そう言って輝夜はさっきの地図を指さしながら説明をしていく。




「被害にあっているのは学校の近くで東側になる。だけどあの公園で2度遭遇しているわ。向こうもきっと私達はあの場所をよく通ると思っているはず。だからあの公園を戦いの場に使うわ。」




「あくまでも奴らの行動範囲をそれ以上広げないという前提ですね。」




悠一がフォローを入れた。




「ええ。この地へ呼び込む事も可能だけど、そうすれば奴らはココまでの範囲ですら人々を襲うために使う可能性が出てくるわ。でも、それも私達が行動を起こさなければ遅かれ早かれそうなるだろうけどね…。」




輝夜が補足をしたことで




「わかった。」




満流が一言発した。その時、ポツッと雨粒が当たる音がした。




「………………!?雨?」




皆が手を止めて外を眺める。ポツッ、ポツッ、という音が段々間隔が短くなってとうとう雨が降り出した。






「もう梅雨の時期ですしね…。」




悠一がそう言った。




「ねぇ、吸血族って〝雨〟に弱いとかないわよね?」




「さあ…。聞いたことないですね。普通に僕たちと同じなんじゃないですかね…。」




「奴らはコウモリに変身出来るみたいだし、関係ねぇんじゃねぇーの。」




満流はそう答えてから思い出した。輝夜は雨が苦手だ。特に雷の鳴る夜の雨は輝夜にとっては深いトラウマがあるのだ。つまり、今夜は作戦中止にした方がいいと思った。


満流の表情が曇った────


だが、それは誰も気付いていなかった。





ご覧下さりありがとうございます。これ以上被害を出さないためにも早く決着をつけたいと覆う輝夜。だが、それを決意した途端に梅雨のせいか雨。過去にトラウマを抱える輝夜にとって今夜はどうするのか…。

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